2024.06.28コラム
健康を始めましょうの想い
当院のホームページに”さあ、健康を始めましょう”という文言があります。
ホームページを作成するのに私がどうしても使いたかった言葉です。
それは歯科医院は国民の健康を守るのに最も適した医療機関であると思っているからです。
このコラムではそう思うようになったきっかけや理由を記したいと思います。
目次
1、歯科医院の特徴
①歯科医院は最も受診しやすい医療機関である。
②歯科医院は再受診率の高い医療機関である。
③歯科医院には家族で来院される機会が多い。
<ちょっと寄り道な話>
歯周治療が糖尿病の改善に有効である。
2、歯科医療は古くから予防医療が定着している。
①糖のコントロールが虫歯と身体の糖化を防ぐ。
②歯科医院は子どもの発育にお役に立てる。
3、歯科衛生士が健康を守る。
①歯科医院は最も受診しやすい医療機関である。
歯科医院のほとんどが個人医院ですので、医科の医院に比べると受診しやすい立地であることが多いのが一つの理由となります。
一般的な医療機関はその医療機関が扱う疾患を持った患者さんが来院するのに対し、歯科医院は様々な疾患を持った患者さんが来院されます。
なので年齢も様々で歯が生えてすぐの0歳児から老年期の方まで来院されます。
②歯科医院は再受診率の高い医療機関である。
一般的には医療機関は病気を治すところです。
病気が治ればもうその医療機関に通院する理由はありません。
歯科治療は残念ながら完治する(虫歯や歯周病が元に戻る)ことはなく、定期的なメンテナンスを怠ると再発したり、新たなトラブルがおきます。
そんな時、新たな歯科医院を探すより以前に通っていた歯医者に行くことの方が多いと思います。
また定期的なメンテナンスを受診している方は問題がなくても年に数回歯科医院に訪れるでしょう。その習慣が何年にもある方も多くいらっしゃいます。
③歯科医院には家族で来院される機会が多い。
歯科医師として最も嬉しいことの一つですが、最初に来院された方から繋がりご家族が来院いただけることです。
実はご家族で来院されることは医療機関ではよくあることではありません。
年齢層によってなりやすい病気が違いますので、1人の医療従事者がご家族皆さんを担当することはあまりありません。
しかし歯科医院は虫歯、歯周病、インプラント、矯正、入れ歯など問題はことなりますが、全て歯に関する問題なので全ての年齢にそれぞれ起きます。
なのでご家族で来院していただけると、信頼していただけたのだなと嬉しくなります。
ではこの①、②、③の3つの理由が歯科医院が健康を守れる理由になるのでしょうか?
・ご家族が来院されていると病気の傾向がわかる。
古くから歯科医院では両親に入れ歯を使っている人がいれば、歯を失うリスクが高いと言われていました。
私が思うに歯周病のリスクが高い傾向があると考えられてたのではないか、と思います。
歯周病が発症するのは細菌叢の構成異常(dysbiosis仮説)やp,g菌によるkey stone 仮説など唱えられていますが、少なからず患者さん個人個人に歯周病に対する感受性もあると言われています。
簡単に言いますと、歯周病になりやすい人たちがいるということです。
多くの歯を失い入れ歯を使用している方は歯周病で歯を失った可能性があります。
そう考えるとその家系の方たちは歯周病になるリスクが高い可能性があります。
家族歴を把握することで今現在歯周病を発症していないご家族に個別の指導ができます。
同様に考えられるのが2型糖尿病です。
2型糖尿病は食事や運動など環境因子が強く関与しますが、歯周病と同じようになりやすい遺伝性がある程度あることが報告されています。(両親が2型糖尿病であると約40%ほどが2型糖尿病になると言われています。)
歯周病と2型糖尿病は相関関係があると様々な研究で証明されています。
もし祖父母は糖尿病で歯周病を発症していていたとしたら、ご家族には口腔ケアだけではなく栄養指導や運動指導も必要とより高いレベルの予防ができます。
・レントゲンだけでなく、口腔内写真も何年にもわたって保存しています。
患者さんの治療経過だけ保存してるのではなく、その時の現状を口腔内写真として保存しています。
それが患者さんの生きてきた経過にもなりますし、ご家族の予防への個別な対応にもなります。
後述しますが、子どもさんとご両親、祖父母様の歯列の形が違ったら、この子に何が起きているのか?を想像できます。
<ちょっと寄り道な話>
2型糖尿病と歯周治療
Lancet Diabetes Endocrinol:2018 Dec;6(12):954-965: Francesdo D`Aiuti et al
によると中等度から重度の歯周病に罹患した2型糖尿病の患者に歯周治療と行なったグループとそうでないグループに分けました。
結果は歯周治療を行なったグループが、そうでないグループと比べてHbA1cが0.6%改善されました。
また2022年4月にSimpson TCらによって発表された文献では、歯周治療はHbA1cを有意に低下させることが示されました。
HbA1cが歯周治療後3~4ヶ月で約0.43%、6ヶ月で約0.30%、12ヶ月で約0.50%低下することが確認されました。
以上のことなどから、歯周治療は糖尿病の改善に有効である言われています。
2型糖尿病で歯医者に通っていない方はぜひ歯医者で適切な歯周治療とメンテナンスを受けましょう。
3、歯科医療は古くから予防医療が定着している。
①糖のコントロールが虫歯と身体の糖化を防ぐ。
人は人類史上で過去にない糖化ストレスに侵されていると言われています。
糖質が過剰な状態で2型糖尿病を代表する慢性炎症疾患が多く発症しています。
人類は生存競争のために飢餓との戦いでしたが、糖質過剰な状態に対して抵抗するすべは多く備わっていません。
虫歯も砂糖が入手困難な時代には稀な病気でしたが(江戸時代まで?)、産業革命が起き砂糖が容易に摂取できるようになり、”虫歯の大洪水”時代が到来しました。
虫歯を予防するには糖の頻繁な摂取をコントロールする必要があります。
(詳しくはコラム”虫歯の削らない治療”を参考にしてください。
https://licca-implant-center.com/cavity-treatment-without-grinding/)
そうすることが、結果血糖値コントロールにも繋がり全身の健康にも繋がります。
②歯科医院は子どもの発育にお役に立てる。
”虫歯の大洪水時代”では子どもたちは歯科医院に虫歯の治療をするために通っていました。
学校の歯科検診でチェックを受け、歯医者に来ると麻酔したりドリルで削られ、嫌な思いをした方も多くいらっしゃると思います。
虫歯予防の考えが定着して、子どもの虫歯の数は減りました。(虫歯を保有している子どもは減りましたが、虫歯の本数はあまり減っていません。)
今は歯科医院に予防で来院されるお子さんも多いですが、虫歯はありませんが多くの子どもたちが歯並びが悪い状態です。
それを一部の歯科医の中で”歯列不正の大洪水時代”とも言われています。
歯並びは見た目が悪いだけではなくて、全身の成長を表しています。
(コラム”お子さんの歯並びは何を表しているのでしょうか?”をご参考ください。)
歯並びが悪いお子さんに多いのが食べ物に好き嫌いが多いことです。
好き嫌いは味が嫌なわけではなく、噛めないから食べない子もいます。
咀嚼回数が少ない子は噛めないから少ない。
よく噛まないと”早食い”になってしまいますので、血糖値が急激に上がり満腹中枢も刺激されないので太りやすくなります。
歯並び悪い子どもたちは成長期の間であれば、歯科医院で口腔機能訓練や運動指導をすることにより改善可能性があります。
大人になって将来起こりうることを子どものうちに予防できることは大変有意義なことだと思います。
4、歯科衛生士が健康を守る。
歯科医院には歯科医師だけではなくて、予防の最前線で働いてる歯科衛生士が在籍しております。
歯科衛生士は歯科医師の診療をアシストする業務についてることもありますが、当院では来院されるすべての方にそれぞれ歯科衛生士が担当します。
歯科衛生士と患者さんとのアポイント時間は基本60分を取らせていただいております。
その時間で歯科衛生士はお口の状態、歯や歯周組織、粘膜に病変が無いかなどを把握し、ご指導やプロフェッショナルクリーニングをいたします。
それだけではなく、患者さんとの会話や施術中の反応で患者さんの健康状態を把握します。
(コラム”予防メンテナンスがもたらすメリット”を参考にしてください。)
当院は患者さんの健康を守っていきます。
”さあ、健康を始めませんか?”