2024.04.10コラム
インプラント治療をしたいけど骨がない場合
インプラント治療は適切に治療すれば長期に使用でき、自分の歯のように咬むことができるので患者さんにとって非常にメリットのある治療であると言えます。
しかし、インプラント体を維持する骨がないとインプラント治療はできません。
今回は”インプラント治療をするのに骨がない場合どうするのか”を記したいと思います。
目次
骨がないとはどういう状態なのか?
インプラントは骨内に入ると、チタンで出来ているインプラント体と骨が結合(osseointegraction)することによって機能する人工歯根のことを指します。
そのため、インプラント体を囲むように骨が必要になります。
つまりインプラント体を入れるための骨の長さと幅が必要になります。
インプラントの長さについて
インプラントの長さは各メーカーによって違いますが、今の日本で最も使用されている straumann インプラントは基本的に6mm、8mm、10mm、12mmの長さのインプラントが提供されています。
インプラント自体に必要な長さは、今でも色々と論じれられていますのでここでは触れないでおきます。
例えば8mmのインプラントを使用する場合は8mmの骨の長さ(深さ)が必要です。
下顎の場合は下顎骨の中に下歯槽神経と言う太い神経が走ってますので、インプラントが神経に近づかないように注意が必要です。
神経まで最低1mmの距離が必要なため、骨の長さは使用するインプラントの長さ+1mmは必要となります。
インプラントに必要な骨の幅について
先ほど書きましたが、インプラントの長さが各メーカーが違うように、インプラントの幅、直径も各メーカー、インプラントの種類によって異なります。
osseointegrationを発見されたブローネ・マルク先生が考案されたインプラントは直径3.75mmと言われていますが、現在では幅の広いワイドタイプ、標準的なレギュラータイプ、細い径のナロータイプがそれぞれのメーカーから提供されています。
標準的なレギュラータイプのインプラントの直径は4mm前後が多いです。
直径が4mmだとすれば、周りに1mm幅の骨が必要と言われていますので、合計すると6mmの骨の幅が必要になります。
6mmの幅がなければ、ナローサイズを選択したり、骨造成が必要になります。
骨を作る方法、骨造成について
ソケットリフト
上の奥歯にインプラント治療をする時に、長さが少し足らない場合に用いられる骨造成です。
当院ではハッチリーマーを使用しています。
ソケットリフトはインプラントを埋入するために形成した窩(ソケット)から上顎洞を挙上します。
挙上される量(長さ)は限定的な範囲になります。
画像(株)モリタ DNTAL PLAZA デンタルマガジン133号より引用 改変
注意事項
骨造成法の中でも比較的安全な方法です。
インプラント手術ができる歯科医師であれば、ほとんどの方が習得されていると思います。
注意することはインプラント手術や抜歯と同じで、手術前から手術後もお口の中を清潔に保つことが大切です。
抜糸するまでは手術部位は強く触らないようにしてください。
歯ブラシは隣の歯までは汚れをとるようにしてください。
手術の当日は激しい運動をしたり、お風呂に長く浸かるような血液循環の良くなることは出来るだけさけましょう。
抜糸はおおよそ一週間ですることが多いです。
サイナスリフト(上顎洞挙上術)
上顎洞内に骨造成をする方法で、ソケットリフトでは対応できない広範囲の骨造成が必要な場合に処置が必要となります。
インプラント手術と同時にできることもありますが、骨が1~2mm以下であればインプラント手術は数ヶ月後に行います。
上記のケースは骨造成とインプラント手術を同日にしております。
注意事項
サイナスリフト(上顎洞挙上術)は確立された手術法ですが、高い技術が必要になります。
切開から縫合まで全てにおいて慎重に行います。
ほとんどのケースが適応になるのですが、上顎洞内に強い炎症がある場合や、鼻腔とつながっている”自然孔”が閉鎖、狭窄している場合は耳鼻科医との連携が必要です。
手術後はインプラント手術後の注意事項を同じですが、特に鼻を強くかむことは避けるようにしてください。
上顎洞の内圧が高まり補填した人工骨が押し出されることがあります。担当医から処方されたお薬は必ず服用してください。
GBR(骨誘導再生法)
骨の長さや幅、その両方が少ない場合に用いられる方法です。不足した骨の部位に自家骨または人工骨を補填し、メンブレンと呼ばれる人工膜で覆い骨を再生させます。
メンブレンには吸収性と非吸収性の材料があります。
用途に合わせて材料を選択いたします。
骨の長さ、幅ともに不足しているため、非吸収性メンブレンを使用してGBRを行った一例
注意事項
骨造成の量にもよりますが、非常に高い技術が必要になります。
全てのケースに適応されることではないので、適応を見極めることが重要です。
手術後はインプラント手術後と同じです。
ただ、腫れが強く出ることが多く、女性でしたら内出血が広範囲に出ることがあります。
当院での骨造成のポイント
診断に時間をかけます。
全ての骨造成処置は適応症を見極めることが重要です。適応でないケースに処置をしても失敗をしてしまいます。レントゲンや歯周組織検査、CT画像、口腔内写真、歯列模型などから診断します。経験値だけでなく、科学的根拠も重視いたします。
手術をするまでの初期治療をしっかりいたします
卓越した技術があり、最新の器具機材があってもお口の中にプラーク(歯垢)が多く付着していたり、手術をする部位に感染と炎症がある歯があると上手くいきません。
当院では、担当の歯科衛生士がお口の中の炎症を軽減するお手伝いをいたします。
お口の中が清潔になると感染のリスクを軽減することができます。
手術当日、時間をかけてお口の中をクリーニングします
初期治療の間、担当衛生士とお口の中を清潔にするように頑張っていただきますが、当日は手術補助担当衛生士が時間をかけてプラークを除去します。
手術部位周辺だけではなく、全体を綺麗にすることで清潔な状態で手術をすることができます。
器具は全て滅菌し、清潔なインプラント手術室で処置をします
手術室で処置をしても清潔な診療室内で処置をしても成功率に変わりはありません。
しかし、当院では手術は出来るだけ清潔な環境で感染のリスクを避けるため、一般的な診療室ではなく専用の手術室で処置をいたします。
少し大袈裟な用意をしますが、全ては患者さんのため用意は怠りません。
多くの症例を経験しています
近年は、手術の術式は確立され成功率は高くなっています。
しかし医療ですので全てが成功するわけではありません。
失敗の理由を知っているからこそ、失敗のリスクを下げることができます。
抜糸する時も細心の注意をはらいます
拡大鏡を装着して抜糸をします。
そうすることで縫合糸についたプラークを歯肉内に迷入することを避けることができます。
もしプラークが入ってしまいますと、手術部位が感染し、骨造成が失敗してしまう可能性がございます。
費用(税抜)
ソケットリフト:5万円
※ソケットリフトはインプラント手術と同時に行いますので、別途インプラント手術費用30万円が必要です。
サイナスリフト:25万円~30万円
※範囲により費用が異なります。
GBR: 10万円~30万円
※骨造成量で費用が異なります。
インプラントができないと言われた方は当院にご相談ください。
当院はセカンドオピニオンも承っております。治療相談は歯科医師とトリートメントコーディネーターが担当いたします。
治療相談は必ずご予約をお願いします。
全ての人が健康な歯で過ごせますように。