2024.09.04コラム
歯科衛生士さんとは?
西村歯科心斎橋診療所院長の秦です。
みなさまは”歯科衛生士”と言う職業をご存知でしょうか?
”歯医者の女の人?”
”歯医者のお姉さん?”
”歯医者の助手さん?”
”口のクリーニングする人?”
など思い浮かべる方も多くいらっしゃるのではないでしょうか?
今回のコラムでは現在引っ張りだこの職業である”歯科衛生士”について50代歯科医師である私がどう考えているのかを書きたいと思います。
目次
そもそも歯科衛生士の仕事とは?
公益社団法人歯科衛生士会では
”お口の健康づくりと口腔ケアで、笑顔のある健康な生活をサポートする!歯科衛生士は生涯にわたって人の役に立つことができる仕事です”
とあります。
そうなのです!歯科衛生士は人の健康に生涯にわたって役に立てる素晴らしい職種なのです。
特に歯科衛生士の業務の一つとして保健指導や予防処置があげられますが、どちらも虫歯にならないように、歯周病にならないようにすること、”予防をすることができる”のが素晴らしいことなのです。
歯科医院の診療スタイルにもよりますが、私が歯科医師になった頃(25年前)の歯科衛生士さんは診療補助をメインでしていることが多かったと思います。
その頃はいかに診療をスムーズにできるように補助するかの技術を求められていたのかも知れません。
そんな診療所で働いている頃は、現在当院で取り入れているような予防メンテナンス、MTM(Medical Treatment Model)を提供できるようになるとは思ってもいませんでした。
当時のメンテナンスはいわゆる定期検診で”早期発見、早期治療”をすることが目的で、虫歯、歯周病を予防する概念からはかなり距離がありました。
重複しますが、歯科衛生士は虫歯、歯周病の予防ができます。お口の健康を維持することはからの健康を守ることにつながります。
私は歯科衛生士さんが健康を守る最前線にいる医療従事者だと考えております。そんな歯科衛生士だからこそ求められる技術、スキルがあります。
コミュニケーション能力
伝える力
歯科衛生士の大切な業務として口腔衛生指導、つまりブラッシング指導があります。
ブラッシング指導は歯周病や虫歯に関係するプラークを効果的に取り除けるように指導することではあるのですが、ブラッシングを丁寧にしていなかった患者さんに綺麗に歯磨きをするような習慣をつけていただくことなので、実は非常にハードルが高いことなのです。
例えば、全く運動していなかった人に毎朝のジョギングをする習慣をつけることは難しくないですか?”伝える”ことができなければ患者さんの行動変容は起きません。
聞き出す力
人同士のコミュニケーションでは一方的に話しても伝わりません。医療面接でもよく言われるのが”傾聴=聞くこと”です。聞き出す力がある人は患者さんの問診が上手です。
たわいも無い会話に思える言葉から様々な大事なことをお聞きできることがあります。ご両親が入れ歯を使っているようであれば、歯周病のリスクが高いのか?など。
予防において必要な情報を得ることができます。
診療補助ができること、治療を理解する
今の歯科医院では診療補助についているのは歯科助手さんが多いと思います。
当院は歯科衛生士が治療部、口腔衛生部に分かれてますので診療補助も歯科衛生士が担当することが多いです。
患者さんのお口の健康を守るためには、治療を理解していないとできないと考えています。
治療を終えてメンテナンスになった患者さんのお口を見たときにどうしてそうなったのか?が理解できなければ質の高いメンテナンスはできません。
時には担当歯科医師とディスカッションも必要になりますので、治療内容、方法に知識がないと歯科医師との”コミュニケーション”もうまくいきません。
患者さんの健康を守るためには診療補助も理解していると、良い結果を生み出すことができます。
丁寧な施術
歯科医療で使用する器具のほとんどが適切に使用しないと”痛み”を伴います。施術の時に歯科用ミラーで頬を引っ張る場所、方向で痛かったり、痛くなかったりします。
歯石を取る器具も使い方によっては痛みも少なくできます。”歯石が取れた!”という結果が同じだとしても、痛くてつらければ患者さんは次の来院を躊躇すると思います。
来院しなくなることが患者さんの健康にとって最も不利益なことなので、注意が必要です。
でも痛いから歯石を取らないことは健康のために通っている患者さんの信用を失うことにもなりますので、”痛くなく質の高い処置する”ことが重要です。
虫歯、歯周病のメカニズムを理解する
カリオロジー(虫歯学)に精通した伊藤先生がこうおっしゃいました。
”う窩は技術で治す。う蝕は知識で治す。”
う窩とは虫歯になって穴があいている状態なので、治療するためには歯科医師の技術が必要です。う蝕とは虫歯になるプロセス、過程のことを指します。
虫歯予防をするためには治療技術と診断機器だけ向上してもできません。虫歯になるプロセスの知識がないと予防することができません。
歯周病の治療もやみくもに歯石をとって歯ぐきを傷つけいては良い結果は期待できません。歯周病のメカニズムを理解し、適切な処置をしないといけません。
施術だけの技術だけを磨くのではなく、知識も習得、アップデートすることが大事です。
食事指導
虫歯治療で重要なのは歯ブラシだけでしょうか?
もちろん細菌の塊のプラークを取り除くことは重要なことですが、虫歯予防で考えるとお口の中を酸性になる環境をコントロールすることが最も重要です。
詳しくはコラムの”虫歯の削らない治療”を参考にしてください。
なので虫歯予防では食事指導が重要な項目になります。歯周病予防でも食事指導、栄養指導が必要になってくる?
これは近未来のことかも知れませんが、歯周病も糖尿病や高脂血症などの身体に起こる慢性炎症であります。
身体の慢性炎症をコントロールするのは薬であるべきではなく、本来は運動療法や栄養療法だと考えています。
歯周病治療においての栄養療法の効果は科学的根拠に乏しいと思いますが、先日スウェーデン イエテボリ大学の歯周病の権威であるJan Derks先生の講演でも栄養指導をすることに触れていましたので、歯科医院で栄養指導することは近い将来必要になることかも知れません。
口腔機能を理解する
”メンテナンス中に長く担当している患者さんがむせやすくなった。”という場面に遭遇したら何を考えますか?
”こまめに唾液と水を吸うようにしよう!”
”できるだけ処置を短くしよう!”
などどちらも素晴らしい対応です。
でも、もう一歩踏み込んで”なぜ”を考えると”口腔機能が低下していないか?”に気づきます。食事を摂っている時にも同じようにむせやすくなってるとなると、口腔機能の訓練が必要になります。
また別のケースです。お子さんメンテナンスを担当した時に歯並びが悪い、姿勢が悪い。
何が起きていのでしょうか?
詳しくはコラムの”お子さんの歯並びは何を表しているのでしょうか?”を参考にしてください。
何かに気づくことができれば担当する患者さんの人生は豊かになるかも知れません。
まとめ
いかがでしょう。歯科衛生士さんの仕事は素晴らしい仕事ですよね。
あなたの担当している”歯医者のお姉さん”、”お口のクリーニングする人”はこのような素晴らしい技術と知識を持ちながら施術しています。
もし歯科衛生になろうと思って読んできいる方がいらっしゃれば、私は自信を持って歯科衛生士になろうと考えている”あなた”を応援します。
もし歯科衛生士になって間もない方が読むと、こんなたくさんのことを求められるんだと心配するかも知れません。
それは逆です。
診療補助が上手いかどうかの狭い世界で評価せれていたことを考えると、業務が多岐にわたることでどこかで活躍できればいいのです。実際、当医院でもそれぞれの才能に合わせて活躍していただいています。
予防を中心とした診療体制である西村歯科では歯科衛生士を募集しております。
どうぞ気兼ねなく見学にいらしてください。