2024.10.16コラム
治療技術の革新から歯を保存できるようになった症例
心斎橋の歯医者「医療法人西村歯科心斎橋診療所」院長の秦です。
今回のコラムは私が歯科医師になって25年ほどが経ちました。
医療技術は様々な革新により過去には治せなかった病気も治せるようになってきました。
歯科治療も同様に診断機器や治療器具、材料の革新により過去には治せなかった歯を保存することができるようにもなり、噛めなくて困っていた人も再び噛める喜びを提供できるようになりました。
今回のコラムでは25年前には一般的ではなかった治療技術で現在治せるようになった症例をご紹介させていただこうと思います。
1、根管治療の革新
2、歯周治療の革新
3、欠損補綴の革新(今回は割愛いたします)
それぞれの技術の革新において共通することが、診断機器の向上です。
まず第一に歯科用CTの導入です。
西村歯科心斎橋診療所ではインプラント治療の先駆け的な立場から、大阪でもかなり速い段階で歯科用CTを導入しました。
それまでは2次元のレントゲンを読影し、診断し、頭の中で3次元に置き換えていたことが、CT画像によって3次元の診断がパソコンモニター上でできるようになりました。
CTの導入によってインプラント手術はより安全に処置できるようになっただけではなく、術前の診断が正確になることによって、手術中に起こりうることに対して用意をしっかりできるようになりました。
目次
根管治療の革新
根管治療とはいわゆる歯の神経の治療、歯の根っこの治療、再治療を言います。
根管治療は歯科治療の中でも難易度の高い治療で、歯科医師によって成功率は大きく違います。
成功率の違いは歯科医師の診断力、技術力の違いもありますが、患者さんの歯根の形が個人個人違いますし、前歯、奥歯でも違い、さらに歯根の中に入っている神経の曲がり具合も年齢によって違うため難易度が全く違います。
そのためどんな歯でも良い結果を出すことは歯科医師の高い技術が必要になります。
①ニッケルチタンファイルの登場
歯根は程度はありますが、100%曲がっています。
ニッケルチタンファイルは形状記憶合金で、くねくねと曲がった根管(歯根の中の神経が入ってい
る管を言います)にも対応できるようになりました。
ニッケルチタンファイルが登場する前は、一部の超絶的なテクニックを持った先生にしかできなかったことが多くの先生が習得できるようになり、ニッケルチタンファイルの進化により湾曲が強すぎて治療が困難だったケースにも対応できるようになりました。
②歯科用CTによる診断
根管治療において最も大事なことがレントゲンの読影でした。
2次元のレントゲンからどこまで推察できるのかがレントゲンの読影です。
根管が曲がっている方向、根管がどこに何本あるのかなどを2次元のレントゲンから推察することは熟練が必要で、歯科医師のスキルに差が出ますが、CTで3次元的にあらゆる方向からも見る
ことができるようになり、診断力は飛躍的に向上しました。
診断が上がると治療成績も上がり、成功率も上がり、以前までは治すことができなかった歯も保存することができるようになりました。
③マイクロスコープ(手術用顕微鏡)の登場
根管治療は非常に小さな穴から根管をきれいにしますので、ほとんど見えずに手の感覚で行われてきました。(今でも変わらないところもありますが)
マイクロスコープを使用するまでは、きれいにしたつもりの根管の内側が汚れていることを確認することはできませんでした。
5倍~約32倍まで拡大して見えることで、根管の入り口も確認し根管の中の汚れもきれいに取り除けるようになりました。
根管治療は根管内をきれいに出来て細菌が増えないようにできるかが成功の基準となりますので、肉眼で処置をしていた頃より飛躍的に成功率は上がりました。
④MTAセメントの登場
MTAセメントはきれいに消毒された根管内を密閉するための材料の一つです。
生体親和性も非常に高く、根管内の密閉だけではなく、神経を保存するために使用したりいたします。
その特性から治癒が困難なケースも保存ができるようになりました。
治療例 A
非常に大きな病変が歯の根っこの先にできています。
MTAセメントで封鎖後11年経過
病変は完全に消失し、骨ができています。
治療例 B
歯の裏側が腫れて痛みがある。
歯に穴が開いていている。
※レントゲンに傷がついてますが、、、
マイクロスコープ使用MTAセメントで封鎖後4年
腫れること、痛みも出ることがなく経過している。
歯の周りの組織や骨も回復している。
10数年前なら抜歯だったかも知れない。
治療例C
他院で歯周病のため治せないと言われた症例
精査の結果、原因は歯周病ではなく、根管であったため適切に治療すると治癒します。
ニッケルチタンファイルを使用することで曲がった根管も大きく削る
ことなく治療ができます。
治療後10年が経過
歯周治療の革新
①超音波スケーラーの登場
スケーラーは歯周病の原因を引き起こす歯石を除去する器具のことを言います。
手用スケーラーの一部
もちろん現在でもメインに使用されてます。
20数年前は基本的に手用スケーラーで歯石を取るのが主流でしたが、超音波スケーラーが登場し、各社チップ(超音波スケーラーに装着する刃先)を小さなものから大きく曲がったものなどを開発し、手用スケーラーでは届きにくかった部位まで歯石を取ることができるようになりました。
超音波スケーラーチップの一部
また器具を適切に使用することで、歯を傷つけることなく歯石を取ることで歯周病の治療が効率的に良い結果がでるようになりました。
②歯周組織再生療法
歯周組織再生誘導材料のエムドゲイン®、リグロス®の登場により歯周病によって失われた骨を再生することができるようになりました。
歯周再生療法は古くから自家骨移植やGTR法などがありましたが、歯周再生誘導材料の登場により骨再生の成功率は飛躍的に上がりました。
歯周再生療法は非常に高い技術が必要な治療法で、歯科医師の技術差によって再生できる量に差が生じるとも言われております。
歯周再生療法は歯科治療の中でも特に繊細な外科治療で、切開を一つにしても高い技術が要求されます。
③拡大視野、マイクロスコープの登場
高品質、高倍率のルーペが日本でも容易に入手できるようになりました。
LEDライトが同軸に装着できる製品もあり、より正確な治療が可能になりました。
治療例 A 歯周再生療法
左上の3本の歯が歯周病で骨がなくなりぐらぐらしている状態。
一番奥(レントゲンで一番右)の歯は残すことはできないですが、できればその他の歯は良い状態で保存したいと考えました。
歯の負担を減らすためにインプラント治療と、両隣の歯に歯周再生療法を行いました。
治療後5年経過していますが、歯はしっかりしていて問題なく経過しています。
治療例 B
歯周病で骨が少なくなっています。
再生治療をした訳ではありませんが、適切に歯科衛生士が歯を傷つけずに歯石を取ることによって、骨が吸収していたところに骨が再生されました。
患者さんの協力度も非常に高く、禁煙していただけたのも良い結果につながったと思います。
まとめ
歯科医療技術の革新により治すのが難しかった歯も治すことができるようになりました。
私が歯科医師になった当初を考えると、すごく進化したと思います。
その治療自体は非常に価値のあることではあるのですが、それでも患者さんにとって最も価値があるのは予防だと考えます。
いくら歯科医療技術が向上しても何にも治療されていない天然歯に勝るものはありません。
医療法人西村歯科心斎橋診療所では予防をベースとした歯科医療を提供しております。
予防にご興味がある方は
https://licca-implant-center.com/treatment/preventive-dentistry/
https://licca-implant-center.com/preventive-maintenance/
をご参考になさってください。