本日は西村歯科心斎橋診療所で勤務しております、日本口腔インプラント学会認定歯科衛生士の叶よりインプラントメンテナンスの重要性についてのお話を解説させていただきます。

1.インプラントは「入れて終わり」じゃない

「インプラントは入れたらもう安心」と思われている方が意外と多くいらっしゃいますが、実はインプラントは定期的なメンテナンスがとても大切です。

天然の歯とは違い、インプラントは骨に直接埋め込まれた人工の歯根です。もちろん虫歯にはなりませんが、歯ぐきや骨の健康状態によって寿命が左右されてしまいます。毎日のセルフケアだけではどうしても限界があり、気づかないうちにインプラント周囲炎というトラブルが進行してしまうこともあります。

だからこそ、歯科医師と歯科衛生士による専門的なクリーニングやチェックが欠かせません。インプラントを「一生モノ」にするためには、定期的なメンテナンスがカギとなります。

2.毎日のケアとプロによる定期的なメンテナンスの違い

毎日ご自宅でしっかり歯磨きをされていても、やはり磨き残しは出てきてしまいます。特にインプラントの周囲は、見た目は自然でも構造が少し複雑なため、どうしても汚れがたまりやすいところがあります。

ここで、私たち歯科衛生士は、専用の器具や知識を使って優しく丁寧にお掃除します。さらに、普段のケアのアドバイスも行いますので、「どこが磨けていないか」「どう改善したらいいか」もわかります。

そして、もうひとつ大事なのが「見えない部分のチェック」。パーツが緩んでいたり、摩耗していたりすることもあるので、それらを見逃さないように定期的な点検が必要になります。

3.なぜインプラントにメンテナンスが必要なの？

天然の歯とインプラントの違い

インプラントと天然の歯の最大の違いは、「歯根膜がないこと」。天然の歯は、歯と骨の間にある歯根膜というクッションのような組織で支えられています。これがあることで、細菌が入り込むのを防いだり、咬んだときの衝撃を吸収したりしています。

しかし、インプラントは直接骨と接しているので、この歯根膜がありません。つまり、ちょっとした炎症がダイレクトに骨へ影響してしまうのです。そのため、トラブルの予防がとても大切になります。

4.インプラント周囲炎ってなに？

「インプラント周囲炎」という言葉は、耳にしたことはありますか？これは、インプラントのまわりに炎症が起きて骨が溶けてしまう病気のことを言います。初期にはほとんど自覚症状がないため、「気づいたときにはインプラントがグラグラ…」なんてこともあります。

これは天然の歯でいう「歯周病」と似ていますが、進行が早く、一度進行すると元に戻すのが難しいのが特徴です。だからこそ、早めの発見と予防がとても大事です。私たち歯科衛生士が小さな変化を見逃さずにケアすることが、トラブルを防ぐ大きな力になります。

5.インプラントを長持ちさせる５つのポイント

① 長期症例が示す信頼性

当院では、インプラント治療後10〜20年以上メンテナンスし続けている患者様が多くいらっしゃいます。これは、「治療の技術が高い」だけでなく、「その後のメンテナンス体制がしっかりしている」からこそ実現できています。

このような長期症例を通して「どうしたら長く健康な状態を保てるか」を日々学び続けています。

実際に10年以上快適に使っている方の多くが、きちんと定期的にメンテナンスを受けているという共通点があります。それが、長持ちの秘訣になります。

② 豊富な知識と技術を持つプロの力

私たち歯科衛生士は、日々インプラントに関する研修や勉強会にも参加し、最新の知識や技術をアップデートしています。ただお掃除をするだけではなく、状態の変化にいち早く気づく観察力や、トラブルを予防する技術が求められるからです。

当院では、症例ごとにメンテナンス方法を工夫しており、患者様ひとりひとりに合わせたケアを行っています。その積み重ねが、長く快適にインプラントを使える理由のひとつです。

③ 痛みのない快適なクリーニングの魅力

「歯医者さんって、ちょっと怖い…」「インプラントの掃除って痛そう…」そんなイメージをお持ちの方もいらっしゃると思います。でも、当院のインプラントメンテナンスは「痛くない」を大切にしています。

患者さんのお口の状態や感受性に合わせて、繊細なタッチで専用の器具を使用し、できるだけ刺激を抑えたクリーニングを行っています。使用する器具も歯ぐきに優しい設計のものを取り入れており、「いつの間にか終わってた」「気持ちよかった」というお声をよくいただきます。

さらに、リラックスしていただけるように、声がけやお声のトーン、診療室の雰囲気にも配慮しています。まるでエステのように落ち着ける空間で、心地よくケアを受けていただけるよう努めています。

④ 定期的なパーツ点検と交換

インプラントは、見える「歯の部分（上部構造）」だけでなく、内部のネジやアバットメントといった細かいパーツで構成されています。これらのパーツは、使用していく中で緩んだり摩耗したりすることがあるため、定期的な点検と必要に応じた交換がとても大切です。

当院では、パーツの状態チェックもメンテナンスの一環として行っています。見た目ではわからない部分まで丁寧に確認し、「少しの緩み」や「摩耗」でも見逃さず、すぐに対応します。だからこそ、インプラントの不具合や大きなトラブルを防げるんです。

また、メーカーや素材に合わせた純正パーツを使用しているのも特徴のひとつ。長く安心して使っていただけるよう、品質にもこだわっています。

⑤ 認定歯科衛生士による安心のサポート

私たちのクリニックには、インプラント専門の知識と技術を身につけた“認定歯科衛生士”が在籍しています。これは、歯科衛生士の中でもさらに研修・試験をクリアした専門資格を持つスタッフのことを言います。

認定衛生士は、インプラントの構造やリスク管理に深い知識を持ち、状態変化の予測力や対応力も抜群です。だからこそ、「ちょっとした違和感が気になる」「以前と少し違うかも？」といった小さな変化にもすぐに気づき、最適な処置やアドバイスができます。

また、当院では担当歯科衛生士制を採用しており、「この人に任せれば大丈夫」と感じていただけるよう、一人ひとりに寄り添ったケアを心がけています。

6.実際のインプラントメンテナンスの流れ

カウンセリング〜お口の状態チェック

初めての方や久しぶりのメンテナンスの方には、まず丁寧なカウンセリングからスタートします。日々のケアの状況、気になること、以前と比べて変化を感じるかなど、何でも遠慮なくお話しいただける時間です。

その後、お口全体の状態を細かくチェックします。歯ぐきの炎症の有無や出血、インプラント周囲のポケットの深さ、歯垢や歯石のたまり具合など、専用の器具や画像診断で正確に診断します。もちろん、必要に応じてレントゲンも撮影して、骨の状態やパーツのゆるみ、破損なども確認させていただきます。

このチェックで得られた情報をもとに、その方に合ったメンテナンスプランを提案します。押し付けるのではなく、一緒に相談しながら進めていくスタイルですので、安心して受けていただけます。

お掃除（クリーニング）のステップ

診断の結果をもとに、クリーニングを行なっていきます。インプラントの周囲はもちろん、天然歯や歯ぐき全体もきれいにお掃除していきます。これによって、細菌のすみかとなるバイオフィルムや歯石を徹底的に除去します。

インプラント部位には、専用の器具を使用して、金属にキズをつけずにやさしく汚れを落とします。さらに、細かい部分には「エアフロー（ジェットクリーナー）」を使い、患者様の痛みや不快感を最小限に行います。

必要に応じた部品のチェック・交換

クリーニング後には、インプラントのパーツの状態を再度チェックします。上部構造のゆるみや摩耗、接合部分の不具合がないかを目視・触診・レントゲンなどで確認し、必要があればその場で調整・交換を行います。

必要に応じて交換を行うことで、長期的なトラブルを未然に防ぎ、快適な使用感をキープできます。患者様にとっては気づかないレベルの小さな変化でも、プロの目で見れば“予兆”としてキャッチできるものも多くあります。

7.まとめ｜インプラントをずっと快適に使うために

インプラントは、見た目も自然で、噛む力も強く、とても優れた治療法です。しかし、それを長く、快適に、健康に使い続けるためには「メンテナンス」が不可欠です。

今回ご紹介したように、当院のメンテナンスは、ただのお掃除ではありません。知識・技術・経験豊富な認定歯科衛生士が、患者様一人ひとりのお口に合わせた、やさしく丁寧なケアを行っています。そして、快適で痛みの少ないクリーニング、細やかなパーツチェックなど、細部にまでこだわり抜いたメンテナンスで、患者様の毎日を支えています。

インプラントを「入れて終わり」にしないために。10年、20年と安心して使っていただくために。今のお手入れが、未来の笑顔を守る第一歩になるのです。

ぜひ、あなたのインプラントも私たちと一緒に大切に育てていきませんか？

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