2025.12.26コラム
歯周病は20代から進む?検診で見逃さないポイントについてのコラム【歯科衛生士が徹底解説】

目次
歯周病は20代から進むって本当?若年層で増えている背景
歯周病と聞くと、「40代以上の大人がなるもの」と思われがちですが、実際は20代からすでに進行が始まっているケースが数多くあります。歯科衛生士として現場に立っていると、20代前半なのに歯ぐきが腫れていたり、歯肉ポケットがすでに4mm以上になっている患者さんは決して珍しくありません。
近年の調査でも、20代の約7割に歯肉炎、約2割以上に初期の歯周病が見られるとされています。では、なぜ若い人にも歯周病が増えているのでしょうか?
まず大きいのは 生活スタイルの急激な変化。以前よりもスマホ時間が圧倒的に増え、ながら食べ・ながら歯磨きなど「口の中をきちんと管理する時間」が減っています。また、食生活の変化も無視できません。やわらかい食べ物が多く、咀嚼が減ることで唾液量が低下し、プラークが停滞しやすくなっています。
さらに、ストレス社会であることから免疫力が低下し、歯ぐきの炎症が長引きやすいのも若年層ならではの特徴です。歯周病は「気づかないうちに進行する病気」だからこそ、20代のうちから正しい知識を持つことが大切なんです。
20代が抱えやすい生活習慣と歯周病の関係

20代の患者さんを診ていて強く感じるのが、「生活習慣の変化」が歯ぐきに直結しているということです。まず、仕事や学校が忙しく、夜遅くに食事をしたり、そのまま寝落ちしてしまったりすることが増えます。歯磨きをせずに寝てしまうと、口の中は一晩中細菌の温床になり、歯ぐきの炎症が一気に進みます。
また、コンビニ食や糖質の多い飲料、エナジードリンクを習慣的に飲む人も増えていますよね。糖はプラークのエサになるため、虫歯菌や歯周病菌が増えやすくなり、気づかないうちに歯周組織がダメージを受けてしまいます。さらに、ストレスによる食いしばり・噛みしめは、歯周組織に負担を与え炎症を悪化させます。
そして、20代は見た目を気にして「やわらかい食べ物」を選びやすく、噛む回数が減っていることも多いです。噛む回数が少ないと唾液量が減り、細菌を洗い流す力が弱まります。結果としてプラークが溜まりやすくなり、歯周病のリスクはさらに上昇してしまいます。
歯周病は、生活習慣の積み重ねで静かに進行する病気。だからこそ、20代という早い段階で気づくことができれば、予防できる可能性は高くなるのです。
歯科衛生士から見た「20代に多い初期サイン」

歯周病は初期段階では自覚症状がほとんどありません。だからこそ、検診で見逃されがちな微細な変化を私たち歯科衛生士は常にチェックしています。
まず多いのが 「歯ぐきの腫れ」や「赤み」。20代の患者さんは「疲れているだけ」「たまたま腫れただけ」と軽く見がちですが、実はこれが歯周病の入口です。特に前歯の歯間部分がぷっくりしている場合は、毎日のブラッシングでプラークが落としきれていないサイン。
次に 出血。これは歯周病の最もわかりやすい症状です。歯磨きの時やフロスを通した時に血が出るのは、歯肉が炎症を起こしている証拠。「いつものことだから大丈夫」と思っている患者さんが多いですが、実は“いつものこと”ではなく、体が出しているSOSなんです。
さらに見逃されがちなのが 口臭の変化。本人は気づきにくいですが、初期の歯周病でも口臭は確実に強くなります。特に朝起きたときに気になる場合は、寝ている間に歯周病菌が増殖している可能性があります。
こうした小さなサインを見逃さず、早めに対処することで、歯周病の進行は確実に防げます。
検診で見逃しやすいポイント

検診に来ても、ただ歯を見ただけでは歯周病を見落としてしまうことがあります。歯科衛生士として必ずチェックしているのが、歯肉ポケットの深さです。見た目がきれいでも、ポケットが4mm以上ある場合は要注意。特に20代は骨の量がしっかりしているため、見た目では炎症がわかりにくいのです。
また、歯石の付着位置も見逃されがちです。若い人ほど見える部分はきれいでも、下の前歯の裏や奥歯の内側など、「自分では見えない場所」に歯石がこびりついています。この歯石が炎症の原因となり、気づかないうちに歯周病が進行します。
さらに、ブラッシングの癖からも歯周病の兆候が見えることがあります。力を入れすぎて磨く癖がある人は、歯肉が下がりやすく、プラークが溜まりやすい溝ができてしまいます。逆に磨けていない場所がある人は、その部分だけ炎症が起きていることが多いです。
検診では、「目で見える部分」よりも「見えない部分」を丁寧に確認することが、歯周病を防ぐために最も大切なのです。
20代で歯周病が進行するとどうなる?
20代の歯周病は“まだ大丈夫”と軽く考えられがちですが、進行はとても速いです。初期の歯肉炎が放置されると、中度歯周炎へ進み、歯周ポケットが6mm以上になることも珍しくありません。こうなると、日常のケアでは改善が難しくなります。
さらに、歯周病が進行すると 歯がぐらつくようになります。若い人は歯ぐきが引き締まっているため気づくのが遅れがちですが、骨の吸収は確実に進んでいます。また、歯ぐきが下がり、歯が長く見える“歯肉退縮”が起こることも。これは見た目にも影響し、コンプレックスにつながることがあります。
20代で失った骨は、自然に元には戻りません。だからこそ、この年代のうちに予防しておくことが未来の歯を守る最大のポイントになります。
歯科衛生士が絶対に伝えたい予防の基本

歯周病を防ぐうえで、最も大切なのは「毎日のセルフケア」です。これは何度も繰り返し伝えていますが、やはりどれだけ歯科医院でプロのケアをしても、毎日のケアが不十分だと必ず再発します。とくに20代は炎症が出ても自覚が少ないため、正しいケアが習慣化していないことが多いのです。
まず大切なのは 歯磨きの“質”を上げること。時間をかければいい、力を入れればいい、というものではありません。むしろ力を入れすぎると歯ぐきを傷つけ、歯肉退縮の原因になります。歯ブラシは軽い力で小刻みに動かし、歯と歯ぐきの境目をていねいに磨くことが何より重要です。
次に、デンタルフロスや歯間ブラシを習慣化すること。歯ブラシだけでは6割程度しか汚れが落ちません。特に20代は歯並びがきれいな人も多く、一見汚れが溜まりにくそうですが、実際には歯と歯の間にプラークがびっしり残っていることがかなり多いです。フロスを通すだけでも歯ぐきの出血や口臭が劇的に改善するケースは珍しくありません。
また、仕上げは 鏡で自分の歯ぐきの色と形をチェックする習慣 をつけること。腫れていないか、赤くなっていないか、下がっていないか。これらに早く気づける人ほど、歯周病の進行を未然に防げています。
20代の歯ぐきは、炎症があっても回復力が高いため、正しくケアすればすぐに改善します。「若いから大丈夫」ではなく、「若い今だからこそ予防できる」が正解です。
20代におすすめのセルフケアアイテム
歯周病の予防には、アイテム選びも大きく関わります。現場で「これを使ったら改善した」と実感しているものを紹介します。
まず歯ブラシは、毛がやわらかめ~ふつう程度 のものを選ぶこと。硬いブラシはプラーク除去力が高いと思われがちですが、実際には歯ぐきを傷つけるリスクが高く、若い人の歯肉退縮の大きな原因です。ヘッドが小さめのものだと細かい部分まで届き、磨き残しが減ります。
次に歯磨き粉。歯周病予防を意識するなら、IPMP(イソプロピルメチルフェノール)、トラネキサム酸、CPC が配合されたものが効果的です。特にIPMPは歯周ポケットの中に浸透するため、炎症が起きやすい20代にはとても相性が良い成分です。
20代のうちに、自分に合ったケア用品を見つけておくことは、今後の口腔環境を大きく左右します。
検診で“必ずチェックしてほしい”項目リスト

20代の方が定期検診に来たとき、私が必ずチェックするポイントがあります。特に重要な検査項目は以下の3つです。
- 歯周ポケットの測定、出血率 見た目が健康でも、ポケットが4mm以上の人は少なくありません。「痛くないから大丈夫」という思い込みが最も危険です。歯ぐきが炎症を起こすと出血し、この出血を放置することで歯周病へ進行してしまいます。
- プラーク付着率 染め出しをすると、歯が白く見えても実はプラークがたっぷり残っているケースがほとんどです。可視化することでセルフケアの質が一気に上がります。
- 噛み合わせの状態 ストレスによる食いしばりや、スマホ姿勢による噛み合わせの変化が若い人でも進んでいます。歯ぐきの炎症だけでなく、歯の揺れや歯肉退縮にもつながります。
これらを定期的にチェックしておくと、歯周病の早期発見・早期治療につながり、20代のうちに“治せる口”に整えられます。
歯科衛生士が行うプロのケアとは?
歯科医院で行うケアは、セルフケアでは絶対にできないレベルのクリーニングと評価です。代表的なのが スケーリング。見えない歯石や、ポケット内に入り込んだ歯石を専用器具で除去します。とくに20代は自覚が薄いので、歯石がついたまま放置されているケースも多く、炎症改善のために欠かせない処置です。
次に PMTC(プロフェッショナルクリーニング)。専用のペーストやブラシで歯面を磨き、バイオフィルムを除去します。これにより、歯面がツルツルになり、プラークが付着しにくい状態になります。
さらに、歯科衛生士は歯ぐきの状態を細かく観察し、炎症の原因を特定します。「どこが磨けていないのか」「どのケアが合っているか」を見極めることで、一人ひとりに最適なケア方法を提案できるのです。
プロのケアは“贅沢”ではなく、“健康維持のために必要なメンテナンス”です。
まとめ:20代の歯周病は予防がすべて。早めの気づきが一生の歯を守る

歯周病は、痛みもなく静かに進行する病気です。だからこそ、20代のうちに習慣を整え、正しくケアを始めることが何よりも重要です。今始める予防は、30代40代になったときの口腔環境を大きく左右します。
小さな違和感を見逃さず、定期検診とセルフケアを習慣化すること。これこそが、一生自分の歯を守る一番の近道です。
