2025.06.04Newコラム
【歯科衛生士が発信】フッ化物は本当に安全?気になる気になる疑問を徹底解説!

西村歯科心斎橋診療所で勤務しております。歯科衛生士の叶より“フッ化物”についてわかりやすくお話ししていきたいと思います。
「フッ素って聞いたことあるけど、なんとなく怖い…」「子どもに使っていいのか心配…」そんな声をよく耳にします。でも、実はフッ化物は、私たちの歯を虫歯から守ってくれる、強くて優しい味方です。
私自身も、毎日のケアとして取り入れていますし、患者さんにも必要に応じておすすめしています。もちろん、どんなものにも「使い方」があり、それを間違えなければ、フッ化物はとても頼れる存在です。
このコラムでは、まず「フッ化物の有用性」そして「フッ化物の安全性」を中心に、実際のケアへの取り入れ方、そして不安になりがちな情報との向き合い方など、丁寧にお話ししていきます。
目次
自然界にもあるミネラル「フッ素」

まずは、“フッ化物”とは何なのか、基本から確認していきましょう。
フッ化物は、自然界にもともと存在しているミネラル「フッ素(F)」を含む化合物です。フッ素自体は地中の岩や水、海、そして食べ物の中にも含まれています。つまり、私たちは知らず知らずのうちに、毎日少しずつフッ化物を口にしています。
ただし、自然のままのフッ素は非常に反応性が高く、単体では存在できません。そのため、虫歯予防などに使われるのは「フッ化ナトリウム」や「モノフルオロリン酸ナトリウム」などの安定した形の“フッ化物”なのです。
フッ化物とフッ素の違いって?

ここでちょっと混乱しがちなのが「フッ素」と「フッ化物」の違いです。歯みがき粉などの成分表に「フッ素配合」と書かれていても、正確には「フッ化物」が含まれていることを意味します。
フッ素=単体の元素(反応が強すぎて実用不可)
フッ化物=フッ素が他の物質と結びついて安定した形になったもの(実用可能)
たとえば、「ナトリウム」が単体では激しく反応するのに、塩(塩化ナトリウム)になると私たちが毎日摂っているように安全な形になるのと同じ様なイメージになります。
なぜ歯にいいの?フッ化物の働き

それでは、なぜフッ化物が虫歯予防に良いのでしょうか?その理由は、3つの大切な働きにあります。
1.歯を強くする
フッ化物は歯の表面のエナメル質に取り込まれて、「フルオロアパタイト」という非常に硬くて酸に強い構造を作ります。これにより、虫歯菌の出す酸に負けにくい強い歯になります。
2.再石灰化を助ける
日々の飲食で失われがちなミネラル分(カルシウムやリン)を、歯に戻す“再石灰化”の手助けをしてくれます。
3.虫歯菌の働きを弱める
フッ化物は、虫歯菌が酸を作る働きを邪魔してくれるので、菌の活性を弱めてくれます。
乳歯にも永久歯にも頼れる存在

「子どもの乳歯には使っても大丈夫?」と不安に思うママさんも多いですが、むしろ乳歯こそ、フッ化物の力を借りたい時期です。
乳歯は永久歯よりもエナメル質が薄く、虫歯菌の出す酸に対しても弱いため、虫歯になりやすい傾向がありますが、フッ化物を適量使うことで虫歯予防の強い味方になってくれます。
永久歯が生え始める6歳前後からは、歯の形も複雑になり、磨き残しが出やすくなるので、ここでもフッ化物のサポートが活躍します。
適量を守ればとっても安全

フッ化物の安全性について、心配される方も多いかもしれません。でも、安心してください。フッ化物は、適切な量を守って使用すれば、非常に安全です。
日本の厚生労働省や歯科医師会でも、フッ化物の適正な使用についてガイドラインを設けており、これらを守ることで、健康への影響はほとんどありません。
例えば、フッ化物洗口剤や歯磨き粉に含まれるフッ素の濃度は、子どもや大人の使用に適した範囲で設定されています。特に子ども用の製品は、誤って飲み込んでしまっても問題がないように、濃度が低めに調整されています。
また、歯科医院で行われるフッ素塗布も、専門の知識を持った歯科衛生士や歯科医師が適切な量を使用するため、安心して受けることができます。
日常生活でフッ化物を取り入れる際には、製品の使用方法を守り、過剰に使用しないように注意することが大切です。特に小さなお子さんがいるご家庭では、保護者の方が使用量や使用方法をしっかりと管理してあげることが大切です。
フッ素中毒って?心配しすぎないで

「フッ素中毒」という言葉を聞くと、不安になる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、実際には、日常的な使用でフッ素中毒になることはほとんどないため安心して使用していただけます。
フッ素中毒は、非常に大量のフッ化物を短時間に摂取した場合に起こる可能性があります。例えば、体重20kgの子どもが高濃度フッ化物配合(1450ppm)の歯磨き粉を半分以上、飲み込んだ場合などが該当しますが、これは現実的には起こりにくい状況です。
それでも心配な場合は、子どもが使用する際には保護者が見守り、また、フッ化物製品は子どもの手の届かない場所に保管するようにしましょう。
正しい知識と使い方を身につけることで、フッ化物を安心して活用できますので、不安な点があれば、かかりつけの歯科医院に相談してみてください。
世界でも認められている安全基準

フッ化物の安全性は、世界中の多くの研究機関や保健機関によって確認されています。例えば、世界保健機関(WHO)やアメリカの疾病予防管理センター(CDC)なども、フッ化物の適切な使用が虫歯予防に効果的であり、安全であるとしています。
日本でも、厚生労働省や日本歯科医師会がフッ化物の使用に関するガイドラインを策定しており、これらに基づいて製品の濃度や使用方法が定められています。
また、学校や地域の保健活動として、フッ化物洗口が取り入れられているところもあり、これらの取り組みは、子どもたちの虫歯予防に大きな効果を上げています。
フッ化物の使用に関する情報や研究は日々更新されており、正しい知識と使い方を身につけることで、安心してフッ化物を活用することができます。
フッ化物のメリットとデメリット

フッ化物の使用には、多くのメリットがあります。主なメリットをご紹介します。
メリット
・虫歯予防効果:フッ化物は、歯の再石灰化を促進し、エナメル質を強化することで、虫歯の発生を防ぎます。
・歯の修復効果:初期の虫歯であれば、フッ化物の作用によって自然に修復されることがあります。
・手軽な予防法:フッ化物入りの歯磨き粉や洗口剤は、日常生活に簡単に取り入れることができ、継続しやすいです。
・経済的なメリット:虫歯の治療にかかる費用や時間を減らすことができ、長期的には経済的な負担を軽減できます。
・全年齢に対応:子どもから高齢者まで、年齢を問わず使用できるため、家族全員での虫歯予防が可能です。
これらのメリットを活かすためには、正しい使い方を守ることが大切です。特に、子どもや高齢者など、虫歯リスクが高い世代には、フッ化物の活用が効果的です。
一方で、フッ化物の使用には注意すべき点もあります。以下に主なデメリットと注意点を挙げます。
デメリット
・過剰摂取のリスク:フッ化物を過剰に摂取すると、フッ素中毒や斑状歯(歯の表面に白い斑点ができる状態)などのリスクがあります。ただし、適切な使用量を守れば、これらのリスクは極めて低いです
・味への抵抗感:一部の人は、フッ化物洗口剤の味に抵抗を感じることがあります。しかし、最近ではシトラス風味など、飲み込みにくい味付けがされている製品も多くあります。
・誤飲のリスク:小さな子どもがフッ化物製品を誤って飲み込んでしまう可能性があります。そのため、使用時には保護者がしっかりと見守り、製品は子どもの手の届かない場所に保管するようにしましょう。
これらの注意点を踏まえ、フッ化物を安全に使用するためには、製品の使用方法を正しく理解し、適切な量と頻度を守ることが重要です。また、定期的に歯科医院での検診を受けることで、より安心してフッ化物を活用できます。
まとめ

フッ化物は、適切な使用方法を守れば、非常に安全で効果的な虫歯予防の手段です。世界的にもその有効性と安全性が認められており、日本でも多くのガイドラインや研究により、その使用が推奨されています。
日常生活に正しくフッ化物を取り入れ、定期的な歯科検診を行なっていることで家族全員のお口の健康を守ることができる可能性が高くなるため、正しい知識と使い方を身につけ、安心してフッ化物を活用しましょう。