医療法人 西村歯科心斎橋診療所

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2025.07.16Newコラム

【保存版】夏のスポーツドリンクが歯と体に与える影響とは?予防歯科の視点で徹底解説!

スポーツドリンクを飲む男の子

1. 夏に人気のスポーツドリンクの正体とは?

夏が近づくと、スポーツドリンクを手に取る人がぐっと増えてきますよね。部活帰りの学生さんや、外回りの社会人、熱中症対策にと水分補給を意識する人たちの必需品となっています。

確かに、スポーツドリンクには汗で失われた電解質(ナトリウムやカリウム)や水分を効率よく補えるというメリットがあります。特に熱中症予防には欠かせない存在と言えるでしょう。飲みやすい味付けと、爽やかなイメージで、夏の定番ドリンクになっているのも納得です。

しかし、この飲みやすさの秘密が実は「歯にとって大きなリスク」になることをご存知ですか?

実はスポーツドリンクには驚くほどの糖分と酸が含まれているのです。

今回は熱中症予防のイメージの強いスポーツドリンクについてトリートメントコーディネーターの高垣がお話させていただきます。

2. スポーツドリンクと虫歯の深い関係性

スポーツドリンク

私たちが日頃恐れている「虫歯」。実はその原因はただ甘いものを食べることだけではありません。キーポイントは「糖+酸の組み合わせ」なんです。

スポーツドリンクはその代表例。糖が虫歯菌のエサになり、酸を発生させると同時に、もともと酸性の飲み物なので、口の中のpHが一気に低下します。これによって、歯のエナメル質は「脱灰(歯のミネラルが溶け出す現象)」を起こし、虫歯へとつながっていくのです。

そしてこの状態が慢性的に続けば、唾液の持つ「再石灰化(歯の自己修復機能)」が間に合わなくなり、歯はどんどん弱っていきます。

さらに悪いことに、スポーツドリンクをこまめに「ちびちび」飲んでいると、口内が長時間にわたって酸性に保たれてしまうため、虫歯のリスクが跳ね上がります。例えば、学校の部活中に1時間おきにスポーツドリンクを一口ずつ飲んでいると、実質的に1日中歯が酸にさらされている状態なのです。

市販のスポーツドリンク(500ml)には、角砂糖に換算して約7~12個分の糖が含まれています。さらにpH(酸性度)を測ると、pH3~4程度の強い酸性。これはレモン果汁とほぼ同等レベルです。熱中症予防とこまめにスポーツドリンクを飲んでいると、歯は常に溶かされている状態かもしれないのです。

3. 見逃されやすい「酸蝕症」―あなたの歯が静かに溶けている?―

酸のイメージ

虫歯の影に隠れて見落とされがちなのが「酸蝕症(さんしょくしょう)」という症状です。これは、酸によって歯のエナメル質がじわじわと溶けていき、やがて象牙質が露出してしまう病態のこと。スポーツドリンク、炭酸飲料、酢の強い食べ物など、現代人の食生活では決して他人事ではありません。

酸蝕症は初期段階では目立った症状がなく、痛みも感じないため、かなり進行してから「なんだか前歯が透けて見える…」「冷たい水がしみるようになった」と気づくケースが多いです。

特に注意したいのが、歯ぎしりや強いブラッシングの癖がある人。こうした人は、エナメル質の摩耗が進んでいるため、酸蝕症の進行スピードが速くなる傾向にあります。つまり、「見た目も綺麗で痛みもない」状態から、いきなり深刻なトラブルが訪れるということ。

当院でも、スポーツドリンクを頻繁に摂取している患者さんの中に、酸蝕症が原因で歯の治療を余儀なくされた方が少なくありません。自覚症状が出る前に、定期的な検診で早期発見することがカギとなります。

4. 子どもに急増中!夏場の虫歯と酸蝕リスク

虫歯になった歯

実は今、子どもの酸蝕症や虫歯が夏場に急増していることをご存知ですか?

特に部活や外遊びをする小学生・中学生は、脱水対策として親御さんがスポーツドリンクを持たせることが多いのですが、これが虫歯リスクを大きく高めてしまっています。

子どもの歯はまだ成長途中で、エナメル質も薄く非常にデリケート。

さらにお子さんの場合、大人のように毎回きちんと歯みがきができるわけではありません。

スポーツドリンクを飲んだ後にうがいを忘れてしまったり、寝る前にそのまま飲んでしまったりすることもありますよね。こうした習慣が重なると、気づかないうちに歯が酸にさらされる時間が長くなってしまい、虫歯や酸蝕症のリスクが高まってしまうのです。

保護者ができる対策としては:

・スポーツドリンクは熱中症対策時のみの限定使用に
・普段の水分補給は「水」または「無糖のお茶」で
・飲んだ後は必ず口をすすぐように指導
・夜は甘い飲み物を与えない
・歯科医院での定期フッ素塗布とクリーニング

5. 知覚過敏・歯周病にも注意!酸のもうひとつの影響

知覚過敏になった女性

スポーツドリンクによるダメージは、虫歯や酸蝕症だけではありません。酸の刺激は、知覚過敏や歯周病のリスクにもつながります。

冷たい飲み物や風に反応して歯が「キーン」としみるあの症状。これは象牙質が露出していることによって起こる知覚過敏です。スポーツドリンクの酸はエナメル質を削り取り、知らぬ間に象牙質までむき出しにしてしまいます。

また、糖の摂取が増えることで口腔内の細菌バランスが乱れ、歯茎に炎症を起こしやすくなります。結果的に、歯周病菌が活発化し、歯肉が腫れる・出血する・口臭が強くなるといった症状につながっていきます。

特に、元々歯周病のある人がスポーツドリンクを常飲すると、症状が急速に悪化する可能性があるため要注意。定期的な歯科検診と、プロによるクリーニング・ブラッシング指導が欠かせません。

6. 歯を守る「唾液パワー」も夏はダウンしやすい!?

歯を守るイメージ

夏になると、暑さと汗の影響で体がどんどん水分を失っていきます。脱水症状の予防にスポーツドリンクが勧められるのもこのためですが、ここで見落とされがちなのが「唾液の分泌量が減る」ことによる口腔環境の悪化です。

唾液は単なる水分ではありません。実はとても高性能な「天然のうがい薬」であり、歯を虫歯から守るバリアでもあります。唾液の主な役割は次の通り:

・酸性になった口腔内のpHを中和する
・歯の表面に再びミネラルを供給することで再石灰化を促進する
・食べかすや細菌を洗い流して自浄作用を発揮する
・抗菌酵素によって虫歯菌や歯周病菌を抑制する

つまり、唾液がしっかり分泌されていれば、スポーツドリンクによるダメージもある程度はカバーできます。

ところが、夏は汗をかいて脱水になりやすく、体内の水分が減ることで唾液の分泌も落ちてしまいます。口の中が乾燥している状態で酸性飲料を飲めば、唾液のバリア機能が働きづらくなります。

さらに、マスク生活の影響で口呼吸がクセになっている人も増え、口腔乾燥が慢性化しているケースも目立っています。これがスポーツドリンクの酸や糖と組み合わさると、虫歯・酸蝕症・歯周病のリスクが一気に高まるのです。

7.飲みすぎ注意!スポーツドリンクで起こる体の不調とは

スポーツドリンクと体調の関係

夏に汗をかいたとき、体内では水分だけでなくマグネシウム・カルシウム・カリウム・亜鉛といった大切なミネラルも失われていきます。

スポーツドリンクに含まれる大量の砂糖(主にブドウ糖や果糖)は、摂取後すぐに血糖値を急激に上昇させます。これに対し、体はインスリンを大量に分泌し、血糖値を下げようと反応しますが、このプロセスには多くのビタミンB群(特にB1、B6)やビタミンCが使われます。

つまり、糖を処理するために必要な栄養素が体内で一気に消耗されてしまうのです。これにより起こる影響は以下の通りです:

・疲れがとれにくくなる(B群の不足)
・イライラしやすくなる(神経伝達物質が作られにくくなる)
・免疫力の低下(ビタミンC不足による抗酸化力の低下)
・粘膜が荒れやすくなる(口腔内・喉・胃腸のトラブル)

スポーツドリンクを頻繁に飲む習慣がある方ほど、体は目に見えない“栄養の赤字”状態になっている可能性があります。日頃からバランスの良い食事を心がけ、必要であればサプリメントなどで栄養補助を行うのも一つの方法です。

【まとめ】スポーツドリンクとの付き合い方と予防歯科の大切さ

歯科医院のスタッフ

スポーツドリンクは、一見すると夏の暑さや熱中症対策に便利な飲み物と思われがちですが、実際には糖分や酸が多く含まれており、体にとって負担となる面も少なくありません。

虫歯や酸蝕症、知覚過敏などお口の中への影響や、栄養バランスの乱れにもつながる可能性があります。

スポーツドリンクを毎日のように飲んでいる方や、お子さんが習慣的に口にしているご家庭では、一度その飲み方を見直してみることをおすすめします。

普段の水分補給には、お水や無糖のお茶といった歯にやさしい飲み物を選んでいただけると安心です。どうしてもスポーツドリンクが必要な時は、「飲んだあとにお水でうがいする」「だらだら飲まない」といった、ちょっとした工夫でも歯への負担を減らすことができます。

当院では、虫歯や歯周病の治療だけでなく、お一人おひとりのライフスタイルやご家庭のリズムに合わせて、ムリのないケアの方法を一緒に考えさせていただいています。小さなお悩みもどうぞ遠慮なくご相談くださいね。

暑い夏を気持ちよく過ごすためにも、からだの外だけでなく、お口の中からの健康にも目を向けていきましょう。歯を大切にすることは、未来の自分を大切にすることでもあります。


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