2026.02.04Newコラム
歯科から考える花粉症・アレルギー対策

目次
はじめに:歯科と花粉症、関係があるの?

春先になると、くしゃみや鼻水、目のかゆみなど、花粉症の症状に悩まされる方が多くなります。「毎年のことだから仕方がない」「薬で抑えるしかない」と感じている方も少なくないのではないでしょうか。
そんな花粉症やアレルギーの話題を、なぜ歯科医院のコラムで取り上げるのか。不思議に思われるかもしれません。しかし、歯科医療に携わる中で、そして分子栄養学を学ぶ歯科衛生士として感じるのは、お口の中の状態や日々の生活習慣が、全身の健康と深く関係しているという事実です。
歯科は「歯だけを見る場所」ではありません。口は、食べ物や空気が体に入る入り口であり、免疫とも深く関わっています。このコラムでは、歯科の視点から、花粉症やアレルギーと上手に付き合うための考え方を、できるだけわかりやすくお伝えします。
花粉症・アレルギーは体のどんな反応?

花粉症は、体の免疫システムが花粉に対して過剰に反応することで起こります。免疫とは、細菌やウイルスなど体に害を与えるものから守る仕組みです。しかし花粉症の場合、本来は命に関わる危険のない花粉に対しても、「敵だ」と勘違いして強く反応してしまいます。
その結果、鼻水やくしゃみ、目のかゆみといった症状が出ます。つまり花粉症は、「免疫が弱い」のではなく、免疫のバランスが崩れている状態と考えられています。
近年の医学では、免疫の働きは生活習慣や体の状態の影響を強く受けることが分かってきました。その中で注目されているのが、「慢性的な炎症」や「粘膜の状態」です。
口の中の炎症が全身に影響する理由

歯周病は、歯ぐきに炎症が起こる病気です。自覚症状が少ないまま進行することも多く、日本人の多くが何らかの歯周病を抱えていると言われています。
歯周病の炎症は、実はお口の中だけの問題ではありません。歯ぐきの炎症部分からは、炎症に関わる物質や細菌が血液中に入り込み、全身に影響を与える可能性があることが分かっています。
このような状態が続くと、体は常に「軽い炎症状態」にさらされます。すると免疫は休む暇がなくなり、花粉などの刺激に対しても、必要以上に反応しやすくなると考えられています。
歯科衛生士として日々患者さんのお口の中を見ていると、歯ぐきが腫れやすい方、出血しやすい方ほど、アレルギー症状を訴えるケースが多い印象を受けることがあります。これは決して「歯周病が花粉症を引き起こす」という単純な話ではありませんが、お口の炎症を減らすことが、体の負担を減らす一つの要素になることは確かです。
口呼吸が花粉症をつらくすることも
花粉症の時期は鼻づまりが起こりやすく、無意識のうちに口呼吸になってしまう方が多くなります。口呼吸は、口の中を乾燥させ、細菌が増えやすい環境を作ります。
また、鼻は本来、空気中の異物をある程度取り除くフィルターの役割をしています。口呼吸ではその機能が働かず、花粉やほこりが直接体内に入りやすくなります。これが、症状の悪化につながることもあります。
歯科では、口呼吸による
・むし歯
・歯周病
・口臭
といった問題をよく目にしますが、花粉症の時期こそ、鼻呼吸を意識することとお口の乾燥を防ぐケアが大切です。
分子栄養学の視点で見る「体の土台」

分子栄養学とは、「人の体は、食事から摂った栄養素によって作られ、支えられている」という考え方をもとに、体の不調を見ていく学問です。難しく聞こえるかもしれませんが、考え方自体はとてもシンプルです。
私たちの体は、骨や筋肉だけでなく、血液、皮ふ、粘膜、そして免疫に関わる細胞まで、すべて日々の食事から摂った栄養素を材料にして作られています。花粉症やアレルギーに関わる免疫の働きも例外ではありません。
花粉症の症状が出る場所を思い浮かべてみてください。鼻や目、喉など、いずれも「粘膜」と呼ばれる、外からの刺激を防ぐための薄い組織です。この粘膜は、体の中と外を分ける大切なバリアの役割をしています。
分子栄養学の視点では、この粘膜の状態が弱っていると、外からの刺激を受けやすくなると考えます。粘膜が健康に保たれていれば、花粉などの異物が体内に入り込みにくくなりますが、栄養不足や生活リズムの乱れが続くと、そのバリア機能が低下しやすくなることが知られています。
特に、体を作る基本となる「たんぱく質」は、粘膜や免疫細胞の材料になります。食事量が少なかったり、偏った食生活が続いたりすると、体は必要な部分を優先して使うため、粘膜の修復が後回しになることもあります。
また、ビタミンやミネラルは、体の中でさまざまな調整役として働いています。これらが不足すると、免疫の働きがスムーズにいかなくなることが報告されています。ただし、特定の栄養素を大量に摂れば良いというものではなく、全体のバランスが大切です。
ここで誤解していただきたくないのは、「栄養を整えれば花粉症が治る」という考え方ではありません。分子栄養学が目指しているのは、症状を直接治すことではなく、体が本来持っている調整力を発揮しやすい状態を作ることです。
歯科の立場から見ると、栄養状態はお口の中にも表れます。歯ぐきが腫れやすい、出血しやすい、傷が治りにくいといったサインは、口腔ケアだけでなく、体全体の状態を見直すきっかけになることもあります。
花粉症の時期は、つらい症状に目が向きがちですが、「最近、食事はきちんと摂れているだろうか」「生活リズムは乱れていないだろうか」と、体の土台に目を向けてみることも大切です。分子栄養学の視点は、そのための一つのヒントになると考えています。
歯科衛生士が患者さんにお伝えしたい生活習慣のポイント

花粉症シーズンに意識していただきたい、歯科の視点からのポイントは次のようなものです。
・歯ぐきの腫れや出血を放置しない
・定期的な歯科検診とクリーニングを受ける
・口の中を清潔に保ち、乾燥を防ぐ
・鼻呼吸を意識する
・食事を抜かず、極端に偏らせない
どれも特別なことではありませんが、これらを続けることで、体の負担を減らすことが期待できます。
薬との付き合い方について
花粉症の薬は、つらい症状を和らげる大切な治療の一つです。このコラムは、薬を否定するものではありません。ただ、薬だけに頼るのではなく、体の状態を整える視点も持つことが、長い目で見た健康管理につながると考えています。
症状が強い場合や不安がある場合は、必ず医師に相談してください。そのうえで、歯科としてできるサポートを取り入れていただければと思います。
まとめ:歯科からできる花粉症・アレルギー対策とは

花粉症やアレルギーは、毎年多くの方が悩まされる身近な症状です。「体質だから仕方がない」「薬を飲むしかない」と思われがちですが、体の状態や生活習慣を見直すことで、つらさを和らげるヒントが見つかることもあります。
歯科医院は、花粉症そのものを治療する場所ではありません。しかし、お口の中は食事や呼吸の入り口であり、免疫とも深く関わる大切な場所です。歯ぐきの炎症や口腔内の環境が乱れていると、体は常に余分な負担を抱えることになります。その状態が続けば、花粉などの刺激に対して、過敏に反応しやすくなる可能性も考えられます。
歯周病の予防や治療、正しい歯みがき、口の乾燥を防ぐケア、鼻呼吸を意識すること。これらは一見、花粉症とは直接関係がないように思えるかもしれません。しかし、こうした基本的な口腔ケアは、体全体の健康を支える土台の一部です。
また、分子栄養学の視点では、体は日々の食事から摂る栄養によって支えられていると考えます。特定の食品や方法に頼るのではなく、無理のない食生活を続けることが、結果的に体調を整えることにつながります。
花粉症の時期は、体からのサインに目を向ける良い機会でもあります。症状があるときこそ、「お口の状態はどうだろう」「生活リズムは乱れていないだろうか」と、少し立ち止まって考えてみてください。
歯科医院として、私たちは患者さんのお口の健康を守ることで、全身の健康を支えるお手伝いをしたいと考えています。花粉症やアレルギーと上手に付き合うための一歩として、ぜひ定期的な歯科受診と日々の口腔ケアを大切にしていただければ幸いです。
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