2024.11.27コラム
知らないと危険!虫歯の進行度と治療をわかりやすく解説
西村歯科心斎橋診療所で勤務しております歯科衛生士の井上です。
今回は「虫歯の進行段階と治療法」についてお話しさせていただきます。
痛みが出たり、歯が黒くなったら歯医者にいくという人、多いのではないでしょうか
それ…危険です!
実は痛みのない虫歯や見た目の変わらない虫歯もあるんです。
虫歯は少しずつ進行するため気づいた時には中で広がって大きな虫歯になっていることも…
痛くないから大丈夫だと安心していると危険です。
今回は虫歯の進行段階について説明していきます。
目次
1 歯の構造
歯はエナメル質、象牙質、歯髄の主に三つの組織で構成されており、一番表面がエナメル質、その内側が象牙質、更にその内側が歯髄です。
虫歯がどこまで進行しているかによって治療方法は変わってきます。
①エナメル質
歯の一番表面にある部分を「エナメル質」といいます。
このエナメル質は人間の組織の中で最も硬い組織です。
ですが、酸に弱く溶けやすいという弱点もあります。
②象牙質
エナメル質の内側にあるのが「象牙質」です。
象牙質はエナメル質よりも柔らかく酸に溶けやすい組織です。
③歯髄
一般的には神経と呼ばれる組織で神経繊維や血管が通っています。
象牙質への栄養補給、炎症や刺激に対する防御の役割もあります。
虫歯の進行が歯髄(=歯の神経)に近くなるほど痛みが増します。
2 治療方法について
虫歯の大きさや進行具合によって治療の方法は異なります。
2−1 コンポジットレジン修復
小さな虫歯であればコンポジットレジンというプラスチックの材料を詰める処置が可能です。
これは1日で終わる治療なので虫歯を削り取って詰めるところまで、その日のうちに全ての処置が完結します。
ただ、詰めているものはプラスチックなので金属やセラミックに比べると強度は少し劣ります。
また治療してから年数が経つと、徐々に劣化してプラスチックが変色がしてしまいます。
変色が気にならなければもちろんそのままで大丈夫ですが、劣化して不適合になってしまったり変色が気になる場合は再度詰め直すことも可能です。
2−2 インレー修復
インレーとは歯科技工所で作ってもらう部分的な詰め物です。
虫歯を削り取って形をととえる→詰め物の型取り→詰め物をセット
と、数回の通院が必要になります。
このインレーには金属で作られているものもあれば、セラミックなど材質に種類があります。
材質によって精度や費用が異なるため、メリット・デメリットをしっかりと歯科医院で相談して自分に合った材質を選ぶことをオススメします。
2ー3 クラウン修復
クラウンとは歯科技工所で作ってもらう被せ物です。
インレーと同様、クラウンの作製には型を取る必要があるため数回の来院が必要になります。
クラウンも材質によって精度や費用、材質、メリット・デメリットは異なります。
なので、しっかりと相談した上で決めることをオススメします。
3 虫歯の段階
虫歯の進行段階はCO、C1、C2、C3、C4の4段階で、数字が大きくなるにつれ虫歯の進行が進んでいることを表します。
CO〜C4までの進行スピードは人それぞれバラバラです。
初めは初期段階だった虫歯もいつの間にか大きく進行してしまい、手遅れになることもあります。
①CO(初期虫歯)
一番初期の段階で歯の表面のエナメル質が溶け出した状態です。
虫歯のなりかけの状態なのでこの段階ではまだ穴は開いてておらず痛みもありません。
見た目は斑点上や帯状に白く濁ったような模様が現れたり(脱灰で歯のミネラルが溶け出すことにより濁ったような模様になる)、
茶色くなることもあります。
この段階では無症状のため自分で気づくのはかなり難しいです。
そのため定期的な検診がとても重要になります。
<治療方法>
この初期の段階では適切なブラッシングやフッ素の使用で虫歯の進行を抑制(再石灰化)できる可能性があるため、
経過観察を行うことがほとんどで「要観察歯」となります。
②C1
初期段階の虫歯で歯の表面のエナメル質が少し溶け出した状態です。
見た目は穴が空いてしまったり黒くなっている場合もありますが、痛みや症状がないことがほとんどです。
このC1の状態は治療をする場合もあればそのまま経過観察の場合もあります。
虫歯のできている場所や患者さんの生活習慣、口腔内の環境などを踏まえた上で治療の有無を診断します。
<治療方法>
治療の場合はまず虫歯の部分を削りコンポジットレジンというプラスチックの材料を詰めます。
→コンポジットレジン修復
③C2
虫歯が象牙質まで進行している状態です。
エナメル質より柔らかい象牙質に到達してるので虫歯の進行は一気に加速します。
神経に近くなるため、熱いものや冷たいものでしみたり、甘いもので痛みが出たり何かしらの症状が現れる場合があります。
この段階であれば虫歯は歯髄(神経)まで到達していないため神経を残した状態で治療をすることができます。
神経を残せるか残せないかで歯の寿命は大きく変わってくるため、できるだけ神経を残した状態で治療を進めれるようにします。
<治療方法>
まず虫歯を削ります。
ここからの処置内容は虫歯の大きさ、進行度合いによって異なります。
- プラスチックを詰める→コンポジットレジン修復
- 型取りをして作製した詰め物で修復する→インレー修復
- 型取りをして作成した被せ物で修復する→クラウン修復
C2は象牙質まで進行した虫歯で、歯髄(神経)には到達していないので神経を残した状態で治療することが可能です。
インレーやクラウンには材質があるためかかりつけの歯科医院で相談して決めることをオススメします。
材質によってメリット・デメリットがあるためそれも踏まえた上で選択する必要があります。
④C3
虫歯が歯髄(神経)まで到達した状態です。
大きく穴が開き、激しい痛みも伴うためここまで進行してしまうとほとんどの方が虫歯ができたことに気づきます。この段階まで進んでしまうと、神経は残せないため神経を取る治療(抜髄)と神経の治療(根管治療)が必要になります。
歯の神経には細かい血管がたくさん通っており、噛む感覚や痛みを伝えたり血管を通して栄養や水分を供給しています。
なので神経を取ってしまうと、歯に栄養が供給されないため枯れ木のように脆くなってしまい神経のある歯に比べて割れやすい歯になってしまうと言われています。
そのため、神経をできるだけ残して治療できるように、虫歯が大きくなりすぎないうちに治療をするのが理想です。
<治療方法>
- 神経を取って神経の治療+クラウン修復
まず虫歯を削ります。
歯の神経を取り(抜髄)、根っこの治療と消毒(根管治療)を数回行います。
しっかりと根っこの治療が終わったら、最終的な薬を詰めて封鎖します。(根管充填)
土台となる部分(コア)を立てて、型取りをして作製した被せ物をセットします。
⑤C4
虫歯の最終段階で歯の歯冠部はほとんどなくなり根っこだけが残った状態です。
この状態になると神経は炎症により壊死してしまっていることがほとんどです。
一度強い痛みが生じ、炎症により神経が壊死してしまいます。神経が壊死すると、その痛みは一時的に落ち着きますが歯の状態が良くなったわけではなく、壊死したことにより痛みが消えているだけです。
そのためそのまま放置すると今度は根っこに病巣(根尖病巣)ができてしまうため必ず歯科医院で治療する必要があります。
〈治療方法〉
C4まで進んでしまうと、抜歯になる可能性が高くなります。
根っこが残せそうな場合は、C3の虫歯の治療と同様、根っこの治療を行い土台を立てて被せ物を入れることができます。
ですが抜歯の場合は歯が完全に根っこごとなくなってしまうということなので、
抜歯後の治療方法はインプラント治療、隣の歯を利用したブリッジ、入れ歯、もしくはそのまま抜けた状態になります。
どれを選択するかによって費用や治療期間が異なるため歯科医院でしっかりとそれぞれの説明を聞いた上で治療の選択をすることをオススメします。
虫歯の進行が軽度であれば治療方法もたくさんありますが、進行が進むにつれ、治療方法も限られてしまいます。
また虫歯が進行するほど治療回数、時間、費用もかかってしまいます。
初期の段階で虫歯を見つけることができたら削らずに済むかもしれません。
早期発見できるように定期的なメンテナンスに行きましょう!
4 まとめ
歯医者=痛くなったり症状があれば行くところ
というイメージがあるかもしれませんが、痛くなってからでは手遅れになってしまうかもしれません。
虫歯は放置すればするほど状態が悪化するので治療の難易度が上がったり、治療の選択肢も減ってしまいます。
なのでそうらないためにも定期検診に行くことが大切です。
定期的に歯医者へ検診に行っていると、早期発見・早期治療にも繋がります。
一度失ってしまった歯は元に戻りません。
一度削ってしまった歯も元には戻りません。
しっかりと予防をし、虫歯にならないお口の中を一緒に目指しましょう!