2024.11.20コラム
女性特有の栄養不足とお口への影響を防ぐ方法
目次
【女性のライフステージにおける体の変化と栄養の関係】
西村歯科心斎橋診療所で勤務しております、歯科衛生士兼オーソモレキュラー栄養医学認定ONPを取得しております叶より、女性のライフステージとともに変化する身体と栄養の関係についてお話させていただきます。
1、女性のライフステージ
女性は、ライフステージによって思春期から成熟期、更年期といった女性ホルモン(エストロゲン)の変動が大きく身体に影響します。そのために必要な栄養素も日頃の偏った食生活やホルモンバランスの影響によって、いつの間にか新型栄養失調や隠れ栄養失調を引き起こしている場合があります。
1−1 思春期に起こる身体の変化
思春期は、筋肉や脂肪がつくことで女性らしい丸みを帯びた体になります。成長、発育のために必要なエネルギー量が最も多くなり、月経も始まることから体の中の鉄分が不足しやすくなってしまう傾向にあります。
しかし、無理なダイエットや精神的な影響により食欲不振を引き起こしてしまったり、栄養の偏りや不足によって発育に悪影響を及ぼしてしまいます。思春期の栄養不足は貧血や体力低下、月経異常を引き起こす場合もあり、将来の女性の健康のために偏った食生活には注意が必要です。
1−2 成熟期に起こる身体の変化
成熟期は、女性ホルモンの分泌がライフステージの中で最も増える時期です。この時期に偏った食生活や無理なダイエットをしてしまうと、女性ホルモンの低下により老化を促進してしまう要因になってしまいます。
そして、妊娠・出産時には母体のエネルギー量に加えて、子どもの発育のためのエネルギー量が必要になります。妊娠中は一時的に女性ホルモンが増加しますが、出産後に急激に減少することでホルモンバランスの急激な変動による産後うつ病が関連していると考えられています。
1−3 更年期に起こる身体の変化
更年期は、閉経に伴い卵巣の働きが衰えることによって女性ホルモン(エストロゲン)が減少し、身体と心にさまざまな不調が起こります。
身体には骨密度の減少や体重増加、脂質異常症、更年期障害など様々な症状が現れ、働く女性も多い現代では、職場でのストレスや私生活でのストレスなどによって心も不安定になりやすい時期にもなります。
2、増えている女性の「新型栄養失調・隠れ栄養失調」
先日、掲載しましたコラムにも記述しましたが成長期の女性や働く女性の栄養失調は深刻で、無理なダイエットによるエネルギー不足もそうですが、偏った食生活によるたんぱく質やビタミン、ミネラルなどの必要な栄養素が不足している「新型栄養失調・隠れ栄養失調」が問題になっています。
2−1 女性に起こりやすい体の不調
- 疲れやすい
- イライラしやすい
- 便秘や下痢
- アザがよくできる
- 月経が来ない、不規則
などがあります。
健康診断などでは問題の出ない不定愁訴は、新型栄養失調・隠れ栄養失調が原因の一つになっている場合があります。
2−2 栄養不足からくるお口の中の症状
- 歯ぐきから出血する
- 歯ぐきがムズムズする
- 口内炎がよくできる
- 口が乾燥する
などがあります。
女性ホルモンとお口の中の健康は深く関係しており、特に歯周病には女性ホルモンを好む歯周病菌も存在するため、女性ホルモンの分泌が活発な時期には歯肉炎や歯周病を発症しやすくなります。
そして、お口の中が乾燥することで虫歯、歯周病のリスクも高くなってしまうことから、このような症状がある場合はかかりつけ歯科医院で相談することをおすすめします。
3、女性に不足しやすい栄養素
偏った食生活や無理なダイエットによってエネルギー量が足りていない場合もしばしばありますが、その中でも特に意識して摂取したい栄養素を3つご紹介します。
3−1たんぱく質
3大栄養素の一つでもあるたんぱく質は、歯ぐきや筋肉、血管など体をつくる大切な栄養素になります。不足してしまうと、疲れやすくなったり、肌荒れ、抜け毛、貧血など様々なトラブルに繋がるため、不足しないように摂取するためには、「体重×1.5g」を1日の目安摂取量として摂取することをおすすめします。
特に、朝ご飯はパンやご飯だけなど主に糖質(炭水化物)に偏ってしまう場合が多いため、積極的に肉類、卵、乳製品などのたんぱく質を摂取しましょう。
3−2 ビタミンD
ビタミンDは、カルシウムの吸収を促すことで骨を強くしてくれたり、筋肉のたんぱく質合成を促進してくれる効果もあります。不足してしまうと、骨粗鬆症や風邪をひきやすくなったり、うつ病、不妊にも関係していると言われています。
通常、食品から摂取するか、日光が皮膚に当たることで体内で生成されるのですが、近年は過剰な紫外線対策により子どもや女性のビタミンD不足が問題になっています。
鮭や青魚に多く含まれているビタミンDですが、食品からの摂取が難しい場合は7月なら手足が出た服装で2分ほど、12月なら手足が隠れる服装で20分ほどの日光浴がおすすめです。
3−3鉄分
鉄分は赤血球の中のへモグロビンとなり、酸素を全身へ運ぶ役割を持っています。不足してしまうと疲れやすくなったり、貧血、アザがよくできる、月経異常などのトラブルに繋がります。特に月経のある女性は鉄欠乏性貧血だけではなく、肝臓に蓄えられた「貯蔵鉄」が不足してしまう「隠れ貧血」を引き起こしやすいため注意が必要です。
隠れ貧血は、20〜40代の女性の約半分以上に起きていると言われており、鉄分は体内で生成することができないため、食事の際に積極的に摂取することをおすすめします。
4、女性に嬉しい栄養素が入った食品
前述にある、女性に不足しやすい3つの栄養素を多く含む食品をご紹介させていただきます。
今回ご紹介させていただく食品は、手軽に食事の中に取り入れることができるものばかりなので、毎食の食事にプラスするとバランス良く栄養を摂取できます。
4−1たんぱく質を多く含んだ食品
たんぱく質は朝・昼・夜の3食に15-20gを目安に摂取すると女性の目安摂取量に近くなります。どれもお手軽に摂取しやすい食べ物ばかりなので、不足しやすいたんぱく質を毎食の食事にプラスしましょう。
- ゆで卵1個(60g)・・・たんぱく質量7.4g
- サバ缶1缶(100g)・・・たんぱく質量23.0g
- ツナ缶1缶・・・たんぱく質量13g
- 納豆1パック・・・たんぱく質量8.3g
- 絹豆腐(150g)・・・たんぱく質量7.4g
4−2ビタミンDを多く含んだ食品
たんぱく質と合わせて摂ることで免疫力もアップします。
特に干したキノコ類などは生のキノコと比べるとビタミンDの含有量が上がるため、おすすめの食品です。
- 紅鮭1切(100g)・・・32.0μg
- サバ缶(170g)・・・11.0μg
- シラス大さじ2杯(10g)・・・6.1μg
- キクラゲ2枚(2g)・・・1.7μg
4−3鉄分を多く含んだ食品
鉄分には肉や魚、卵などの動物性食品に多く含まれる「ヘム鉄」と海藻や野菜、豆類に多く含まれる「非ヘム鉄」があります。ヘム鉄の方が吸収率が高いため効率良く摂取したい方はおすすめです。
1回の摂取量は少なくても、食事の中に「ちょい足し」することで鉄分を効率良く摂取することができます。
- ほうれん草2/3束・・・4.0mg
- 焼き鳥鶏レバー1串・・・2.7mg
- 青のり大さじ2杯(4g)・・・3.1mg
- ごま大さじ2杯(20g)・・・1.98mg
5、女性の健康のために
女性の体はライフステージの中で、月経や妊娠、出産、閉経などホルモンの影響を大きく受けます。そのため、このようなホルモンの変動やお仕事、生活環境の変化(育児等)などのストレスに対応できる身体づくりが必要になってきます。
バランスの良い食事を心がけることはもちろんですが、食事の中に含まれる栄養を適切に消化、吸収、代謝が行えるようにまずは第一の消化器官であるお口の環境を整えることが大切です。
特に歯周病はほとんど症状がなく、進行してから気づく場合も多いため、定期的な歯科検診を受け、歯科の2大疾患と呼ばれている虫歯、歯周病を未然に予防することがお口の健康を保つポイントです。
西村歯科心斎橋診療所では、お口の健康と栄養についてのご相談も随時承っておりますのでお気軽にご相談くださいませ。