医療法人 西村歯科心斎橋診療所

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2025.07.30Newコラム

インプラントのトラブル

インプラントの模型

インプラント治療を受けた多くの患者さんが、「これで安心」と思ってしまうのは無理もありません。失った歯を取り戻し、見た目も機能も回復するというインプラント治療は、現代歯科の技術の結晶とも言えます。

しかし、その“快適さ”が思わぬ落とし穴を招くのです。なぜなら、インプラントは「痛みを感じない」「むし歯にならない」という安心感の裏で、静かに、確実に進行するトラブルが存在するからです。

今回は、西村歯科心斎橋診療所で勤務しております。歯科衛生士の叶より口腔インプラント学会認定歯科衛生士の視点から「インプラントメンテナンスを怠ったときの重大なリスク」について、5つに絞って解説していきます。インプラントを長く快適に使い続けたい方に、必ず知っておいてほしい内容です。

1.インプラント周囲炎の発症リスク|見えないところで進む“静かなトラブル”に気づいていますか?

インプラント周囲炎になった歯茎

インプラント治療が終わって、「もう大丈夫」と安心される方はとても多いです。確かに、噛める喜びや、美しい口元が戻ってくると、日々の生活がぐっと楽しくなりますよね。けれど、私たち歯科衛生士が何よりも心配しているのが、その「安心」の影で、静かに進行するトラブルの存在です。

その代表が、「インプラント周囲炎(しゅういえん)」という病気です。

これは簡単に言うと、インプラント周りの歯ぐきが細菌に感染して、炎症を起こしてしまう状態です。最初は出血やちょっとした腫れなど、ほんの小さな変化しかないかもしれません。しかし、そのまま気づかずに放っておくと、だんだんと炎症が深く広がっていき、最終的にはインプラントを支える骨まで溶かしてしまうことがあります。

そしてこの病気でやっかいなのは、「痛みがないことが多い」という点です。インプラントには神経が通っていないため、痛みや違和感を感じることなく病気が進んでしまうことがあります。ある日ふとした時に、腫れや膿、ぐらつきなどの症状が出て、「こんなに悪くなっていたの?」と驚かれる患者さんも少なくありません。

こうしたトラブルも、定期的なメンテナンスを受けていれば、早い段階で見つけることができます。歯科医院では、歯ぐきの状態を細かくチェックしたり、必要に応じてレントゲンを撮ったりして、目に見えない変化も出来るだけ見逃しません。

インプラント周囲炎は、進行してからの治療よりも、「未然に防ぐ」ことがとても大切な病気です。
あなたの大切なインプラントを守るために、ぜひ「ちょっとの異変でも相談する」「定期的にチェックしてもらう」という習慣を取り入れてみてください。

2.骨吸収とインプラント脱落|一度失った土台は元に戻らない

インプラントを装着した歯茎

先ほども少しご紹介させていただきましたが、インプラント周囲炎が進行すると、インプラントを支えている顎の骨(歯槽骨)が徐々に溶けていきます。これを「骨吸収」と呼びます。

この骨吸収が一定以上進んでしまうと、インプラントはグラつき始め、やがて固定力を失い、抜け落ちるという最悪の結末に至ります。

一度吸収された骨は、自然には再生しません。再度インプラントを入れるには、骨造成やサイナスリフトといった外科手術を伴う処置が必要になり、費用も高額、患者への身体的負担も大きくなってしまう可能性があります。

さらに、骨が減少すると顔の輪郭にも影響が出て、老けた印象を与えることにもつながります。せっかく美しさと健康を手に入れるために行った治療が、放置によって逆効果になるのは本当にもったいないことです。

3.口臭や見た目の悪化|美しい口元が台無しに

口腔内の細菌のイメージ

インプラント周囲に歯垢や歯石が溜まると、細菌の繁殖が進み、独特の強烈な口臭が発生します。本人は気づかなくても、周囲には確実に伝わっています。

また、炎症が進むと歯ぐきが赤黒く腫れ、インプラントの金属部分が露出するなど、審美性にも大きな悪影響を与えます。特に前歯にインプラントを入れている方は、見た目の問題が顕著になります。

「キレイな歯を取り戻すための治療」が、「清潔感のない見た目」へと逆戻りしてしまうのは、なんとしても避けたいですよね。これも、日々のケアと定期的なプロフェッショナルチェックで未然に防げる問題です。

4.再治療による高額な費用負担|“治す”より“守る”方が圧倒的に安い

費用負担のイメージ

インプラント治療を受ける際、多くの方が「高額だけど、自分の歯のように噛めるなら…」と決断されたはずです。その選択は間違いではありません。インプラントは、失った歯の機能と美しさを取り戻すための、非常に優れた選択肢です。

しかし、せっかく手に入れたそのインプラントも、きちんと手入れしなければ長く持たせることはできません。

メンテナンスを怠ってしまった結果、インプラント周囲に炎症が起きたり、骨が溶けてしまったりすると、再治療が必要になることがあります。そしてその再治療には、新たな費用がかかるだけでなく、時間や体への負担も大きくなるのです。

例えば、軽度の炎症なら薬や簡単な処置で済むこともありますが、炎症が進行してしまうと、外科的な手術(骨造成や再埋入)が必要になることもあります。

そうなると、数十万円の追加費用が発生するケースも珍しくありません。「もう一度インプラントをやり直す」となると、最初の治療と同じくらい、あるいはそれ以上の費用や治療期間がかかることさえあります。

さらに、「何度も治療を繰り返すのは怖い」「身体に負担がかかる」「仕事や家事の合間を縫って通うのが大変」という精神的ストレスも、少なからず生まれてしまいます。

ですが、ここで知っておいてほしいのは、「こうした負担は、ほんの少しの予防で防ぐことができる」という事実です。

定期的なメンテナンスにかかる費用は、1回あたり数千円〜1万円ほど。年間でも数万円の範囲で済むことがほとんどです。時間も1回30分〜1時間程度で通うペースも3ヶ月〜リスクの低い方であれば半年に一度程度ですみます。

それだけで、数十万円の再治療を防ぎ、健康で美しい口元を保てるのですから、これは最も賢い自己投資だと言えるのではないでしょうか?

「インプラントが壊れてから治す」のではなく、
「壊れないように守る」という選択が、あなたの未来を穏やかで安心なものにしてくれるはずです。

5.他の歯や全身への悪影響|口の中の問題は体全体に波及する

インプラントの炎症で起こる全身への影響

インプラントの炎症は、その部分だけの問題にとどまりません。隣接する天然歯にも炎症が波及し、歯周病が連鎖的に広がることがあります。

また、口腔内の細菌は血流や唾液を通じて全身へと巡り、以下のような全身疾患との関連が明らかになっています。

・糖尿病の悪化
・心疾患(動脈硬化、心筋梗塞など)
・脳卒中
・誤嚥性肺炎
・妊娠中の早産・低体重児出産

特に高齢者にとっては、「噛む力の低下」や「感染症リスクの増加」が、健康寿命を大きく縮める要因になります。

インプラントメンテナンスは、「口の中の問題を超えた“全身の健康管理”」でもあるということを、ぜひ意識してほしいと思います。

6.まとめ:インプラントを“資産”にするか“損失”にするかはあなた次第

インプラントの模型を持つ歯科医師

インプラント治療は、「歯を失ったことによる悩み」から解放され、噛むこと・話すこと・笑うことの喜びを取り戻す素晴らしい医療技術です。治療後、多くの患者さんが自信を取り戻し、日常生活を快適に送れるようになったのを今まで非常にたくさん拝見してきました。

しかし、この喜びを持続させるためには、「治療して終わり」ではなく、「治療後のメンテナンス」が不可欠です。インプラントは一見、虫歯にもならず、違和感も少なく、まるで天然歯のように機能しますが、実は非常に繊細で、継続的なケアがないと簡単にダメージを受けてしまう存在でもあります。

メンテナンスを怠ったことで起こるトラブルは、決して他人事ではありません。静かに進行するインプラント周囲炎、骨吸収による脱落、見た目や口臭の悪化、そして高額な再治療費…。それらすべては、「ちょっとくらい大丈夫だろう」と放置した結果、いつかあなた自身にも降りかかるかもしれません。

一方、しっかりメンテナンスを続けている患者さんたちは、10年、20年と安定した状態でインプラントを使い続けています。プロの手で状態をチェックし、自宅でのケアを見直し、定期的に歯科衛生士の指導を受ける。それだけで、大切なインプラントを「一生のパートナー」にできるのです。

高価な買い物や資産に保険をかけるように、インプラントにも「ケアという保険」をかけてあげましょう。あなたの健康と美しい笑顔を守る最善の方法、それが“メンテナンス”なのです。

それでは、予防・メンテナンスでお待ちしております。
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