2024.05.15コラム
インプラントのメンテナンスについて
私がインプラント治療をするようになって20年が経ちました。20年前当時はインプラントはまだまだ一般的な治療ではなく、一部の施設、歯科医院で施術されていました。
医療法人 西村歯科もその一部の医院で、理事長の西村先生は約34年osseointegration (骨結合)implantの臨床歴があります。
当時はブローネマルクタイプインプラントを主に使用しておりました。インプラント体表面の性状も機械仕上げインプラント(マシーンサーフェイスインプラントやターンドインプラントとも呼ばれます)が主流でした。
機械仕上げインプラントはosseointegration (骨結合)を発見されましたブローネマルク先生が考案されましたインプラントで非常に優れたインプラントですが、骨結合しないことも度々ありました。その後、多くのメーカーからインプラント体表面が粗面のインプラントが開発され、インプラントは飛躍的に骨結合しやすくなりました。
その頃の世界の風潮としては、天然歯よりインプラントの方が優れているかのような雰囲気があったような気がします。
しかしその数年後、インプラント周囲炎という新たなる問題が出てくるようになりました。インプラント周囲炎はインプラントを失う最も多い原因です。
このコラムではインプラントを長持ちさせるためのメンテナンス、インプラント周囲炎の予防について書かせていただきます。
目次
1、インプラントの”歯周病”、インプラント周囲炎について
インプラント周囲炎とは骨と結合したインプラントの周りの組織に炎症が起きることを言います。
インプラント周囲の歯肉にのみ炎症が起きている状態をインプラント粘膜炎、インプラントを支えている骨まで炎症が及んで骨が吸収されている(少なくなる)状態をインプラント周囲炎と言います。
2、歯周病とインプラント周囲炎の違い
インプラント周囲炎の進行スピード
歯周病もインプラント周囲炎も骨の吸収が起きることでは共通しますが、進行速度が全く異なり、インプラント周囲炎の方が歯周病よりも病状の進行スピードは早いです。
理由としてはさまざま挙げられるのですが、一つは感染が及ぶ範囲の違いがあります。
歯周病は感染が上皮で止まるのに対して、インプラントはさらに深く結合組織にまで及ぶため骨へのダメージが大きく、進行も早いと言われています。
インプラント周囲炎は炎症が表面化しにくい=視診だけではわからない。
歯周病は慢性的に進む病気と言われ、自覚症状が出にくいとも言われます。急性化した時にはもちろん腫れたり、痛みも出ます。
インプラント周囲炎は歯周病よりも自覚症状が出にくいのが特徴です。
炎症の進行や活動性はプロービング時の出血(Bleeding On Probing )で確認します。
3、なぜインプラント周囲炎が増えたのか?
機械加工インプラントから粗面インプラントに変化
理由の一つとしてインプラント表面性状が機械加工から粗面が主流になったことが挙げられます。
粗面インプラントは骨と結合しやすくなりましたが、汚れ=バイオフィルムが付着しやすくもなりました。その影響により、インプラント歯周炎は機械加工インプラントの時代より多く見られるようになりました。
また、バイオフィルムの付着しやすさはインプラント各メーカーにより異なりますので、どのメーカーでも結果は同じとはいかないようです。
症例の複雑化
インプラント治療が始まった当初は、下顎の無歯顎(歯が一本もない状態)が対象でした。下顎前方のオトガイ孔間の骨が硬い部位から始まり、部分的な欠損、上顎の欠損、1本欠損、審美的なインプラントなどインプラントの形態の変化や、前述にしました表面性状の進化、骨造成技術の向上により適応は拡大して行きました。
適応が増えると選択肢が増え、様々な要因を考えた診断が必要になります。
手術前の診断が大きく結果を変えてしまう可能性があります。
4、インプラント周囲炎のリスクについて
歯周病
”Effectiveness of Implant Therapy Analyzed in a Swedish Population:Prevalence of Peri-implantitis”
Jan Derks et al.
Jouenal of Dental Research-2016,Vol95によると歯周組織が健康な人と歯周病がある人ではインプラント周囲炎が6.54倍多かったと報告があります。
歯周病はインプラント周囲炎の最大のリスクであり、インプラント治療をする前にしっかりと治療することが重要です。
また、現在、歯周病が安定している方もインラント周囲炎のリスクは高くなるので、質の高いメンテナンスが必須となります。
喫煙
喫煙は歯周病においても高いリスクとなります。
前述のようにインプラント周囲炎で歯周病は最大のリスクになりますので、喫煙はインプラント周囲炎においてもリスクとなります。
喫煙は初期におけるインプラント体と骨との結合にも影響を与えることは古くから報告があります。
私の臨床経験では全ての喫煙者ではなく、いわゆるヘビースモーカー(喫煙本数21本以上/日)の患者さんの治療結果はあまり良くないイメージがあります。
清掃性が悪い
インプラント上部冠の清掃性のことで、プラーク(バイオフィルム)を取り除けるかどうかがインプラント周囲炎を予防しインプラントを健康に長く維持させることに深く関係します。
当院ではインプラント補綴において、臼歯部(奥歯)の場合は審美性より機能性と清掃性を優先した形態の補綴冠を装着することがあります。
メンテナンスを受診しない
当ホームぺージのコラム”予防メンテナンスがもたらすメリット”でも述べていますが、メンテナンスを受診している人とそうではない人では生涯で失う歯の本数は全く異なります。
インプラントも同じことが言えます。インプラント周囲炎は炎症が表面化しにくく、自覚症状がなく進行します。
歯科医院での視診でも発見することは難しく、自覚症状が出た時には、インプラント周りの骨の多くは失われていることが多々あります。
そのため、専門的なメンテナンスを受診することがインプラントを長持ちさせるのに欠かすとこは出来ず、からなずメンテナンスを受診することを強くお勧めいたします。
5、当院でのインプラントメンテナンスについて
① 専門衛生士が担当いたします。
② 歯周組織検査、インプラント周囲組織の検査をいたします。
③ 定期的にレントゲン撮影を行い、インプラント周囲の骨の状態を確認します。
④ 問題があればインプラント上部構造を外して確認することもあります。
インプラント上部冠を外した状態
インプラント上部冠
バイオフィルムと歯石がついています。
炎症が骨に影響を及ぼしている場合は、麻酔をして専用の器具で処置をします。(非外科的インプラントデブライドメント)
インプラント周囲の骨がなくなっています。
<処置後>
インプラント周囲の骨が回復してきています。
インプラント周囲組織の炎症があります。
<処置後>
インプラント周囲組織の炎症もなくなっています。
⑤ 問題がなければ、専門の衛生士がクリーニングをいたします。
6、他の医院でインプラント治療を受けた方のメンテナンスも承ります。
当院では開業当初から他院でインプラント治療をされた患者さんの再治療などを多く手がけてきました。
その経験などから他院でのインプラント治療後のメンテナンスも承っております。”治療した医院が閉院してどこに通えばいいか分からない”、”引越しをしてインプラントメンテナンスが受けることが出来なくなった”、”治療した患者さんが大阪に転居することになり、紹介先を探している歯科医師の先生”などいらっしゃいましたら当院でメンテナンスをご用命ください。
スタッフ一同、全力でサポートいたします。
まとめ
インプラント体の進化により、骨との結合(osseointegration)を得ることは難しくなくなりました。
手術の術式も確立され失敗も少なくなっています。技工士の技術の向上により、審美的なインプラント上部冠も作成するこtができるようになりました。
しかし、対象となる人は過去と現在では変わらず、やはり口腔内を長く健康に安定させるためにはメンテナンスが最も大事です。
治療が終了して歯科医院に通うのが終わるのではなく、健康のために質の高いメンテナンスを受けるために歯科医院に訪れていただけますと幸いです。
インプラントのメンテナンスは当院にお任せください!
https://licca-implant-center.com/