2026.01.28Newコラム
医科と歯科がつながるということ

目次
はじめに:歯科衛生士として日々感じる「つながり」の大切さ
歯科衛生士として診療に携わっていると、毎日たくさんの患者さんとお話をします。お口の中の状態だけでなく、「最近血糖値が高くて」「実は心臓の薬を飲み始めて」など、何気ない会話の中に全身の健康に関わる情報がたくさん詰まっています。
そんな瞬間に、「歯科と医科がもっと自然につながっていたら、この方はもっと安心できるのでは」と感じることが増えてきました。医科歯科連携は難しい専門的な話ではなく、患者さんの人生に寄り添うための、とてもあたたかい考え方だと私は思っています。
医科歯科連携とは何かを理解する
医科歯科連携とは、簡単に言うと「お医者さんと歯科医師、そして私たち歯科衛生士が情報を共有しながら患者さんを支えること」です。
体を診る医科と、お口を診る歯科は別々の存在のように見えますが、実は同じ一人の人を診ています。高齢化が進み、持病を抱えながら生活する方が増えている今、どちらか一方だけの視点では足りない場面が増えてきました。だからこそ、今あらためて連携の重要性が注目されているのです。
お口は全身の入り口という視点

お口は「食べる」「話す」「呼吸する」など、生きるために欠かせない役割を担っています。そして近年、お口の状態が全身疾患と深く関係していることが多くの研究で明らかになってきました。
歯周病と糖尿病、誤嚥性肺炎、心疾患との関連などはその代表例です。歯科衛生士として口腔ケアに関わることは、実は全身の健康を支えることにつながっている。そう考えると、医科歯科連携は特別な取り組みではなく、自然な流れだと感じます。
歯科医院から発信する意味
では、なぜ歯科医院から医科歯科連携を発信することが大切なのでしょうか。
歯科医院は、患者さんが「定期的に通う医療機関」であることが多い場所です。体調が悪くなってから受診する医科に比べ、歯科は元気なときから関わり続ける存在です。だからこそ、変化に気づきやすく、早めに声をかけることができます。その気づきを医科につなげることが、地域全体の医療の質を高める第一歩になるのです。
歯科衛生士だからこそ見える患者さんの背景
歯科衛生士は、患者さんと長い時間向き合います。メインテナンス中の会話や、何気ない表情の変化から、その人の生活や不安を感じ取ることができます。
「最近食欲がなくて」「病院が多くて大変でね」そんな一言が、実は重要なサインであることも少なくありません。歯科衛生士は、専門職でありながら生活に一番近い医療者。だからこそ、医科歯科連携の中で果たせる役割はとても大きいのです。
具体的な医科歯科連携の例

たとえば糖尿病の患者さん。歯周病治療を行うことで血糖コントロールが改善するケースもあります。逆に、内科での治療状況を知ることで、歯科でのケアの質も高まります。
また、誤嚥性肺炎の予防には、医科・歯科・訪問看護が連携した口腔ケアが欠かせません。こうした連携は、患者さんの命を守ることにも直結しています。
当院に大阪糖尿病療養指導士が在籍しているという強み

当院では、歯科医師や歯科衛生士としての専門性に加え、「大阪糖尿病療養指導士」の資格を持つスタッフが在籍しています。これは、医科歯科連携を実践するうえで、とても大きな強みだと感じています。
糖尿病は、歯周病と深い関係があることが広く知られるようになりましたが、患者さんご自身がそのつながりを十分に理解されていないケースも少なくありません。「歯の病気と血糖値が関係あるなんて知らなかった」と驚かれることもよくあります。
大阪糖尿病療養指導士は、糖尿病に関する正しい知識をもとに、生活習慣やセルフケアを患者さんと一緒に考えていく専門職です。その視点を歯科医院の中に持ち込めることで、私たちは「お口だけを見る歯科」から、「全身を意識した歯科医療」へと一歩踏み込むことができます。
歯周病治療と血糖コントロールをつなぐ架け橋として
歯科衛生士として歯周病治療やメインテナンスに関わる中で、「なかなか炎症が落ち着かない」「セルフケアを頑張っているのに改善しにくい」と感じる患者さんに出会うことがあります。そうした背景に、血糖コントロールの問題が隠れている場合も少なくありません。
大阪糖尿病療養指導士の視点が加わることで、生活リズムや食習慣、服薬状況などをふまえた、より立体的なサポートが可能になります。
医科での治療を尊重しながら、歯科としてできることを考える。必要に応じて内科受診を勧めたり、主治医との情報共有を意識したりする。その一つひとつが、患者さんの体全体を守る医療につながっていきます。
患者さんにとっての「相談しやすさ」を大切に

糖尿病という言葉に、少し距離や不安を感じる患者さんは少なくありません。「怒られそう」「ちゃんとできていないと思われそう」そんな気持ちを抱えている方もいらっしゃいます。
歯科医院という、比較的身近で定期的に通う場所に、大阪糖尿病療養指導士がいることは、患者さんにとって大きな安心材料になります。治療ではなく「相談」として、気軽に話せる場があること。その積み重ねが、結果的に治療継続や生活改善につながっていくのだと思います。
医科歯科連携を「言葉」ではなく「形」で示すために
医科歯科連携は、掲げるだけではなかなか伝わりません。しかし、糖尿病療養指導士が在籍し、実際に歯科診療の中でその視点が生かされていることは、患者さんにとって非常にわかりやすい「形」になります。
「この歯科医院は、ちゃんと全身のことを考えてくれている」そう感じてもらえることは、信頼関係の構築にもつながります。
歯科衛生士として、こうした環境の中で働けることは、とても心強く、誇らしいことでもあります。これからも、歯科と医科の架け橋として、そして患者さんの一番近くにいる存在として、医科歯科連携の大切さをやさしく伝えていきたいと感じています。
連携が患者さんにもたらす安心感
医科歯科連携がうまく機能していると、患者さんは「ちゃんと全身を見てもらえている」という安心感を持てます。
「歯医者さんが主治医と話してくれている」「情報が共有されている」その事実だけで、不安は大きく減ります。医療は技術だけでなく、安心を提供することも大切。その意味でも連携は欠かせません。
歯科衛生士として連携にどう関わるか
私たち歯科衛生士にできることは、決して難しいことではありません。患者さんの情報を丁寧に聞き取り、歯科医師に共有すること。必要に応じて医科受診を勧めること。
その一つひとつが、医科歯科連携の土台になります。橋渡し役としての歯科衛生士の存在は、これからますます重要になるでしょう。
歯科医院内でできる小さな発信
院内掲示やコラム、日常会話の中で「お口と全身はつながっていますよ」と伝えるだけでも、患者さんの意識は変わります。
歯科医院からのやさしい発信は、医科歯科連携を特別なものではなく、身近なものにしてくれます。
連携は特別なことではなく、思いやりの延長
医科歯科連携は制度や仕組みの話だけではありません。その根底にあるのは、「この人に元気でいてほしい」という思いです。
歯科衛生士として、その思いを形にすることが、連携の第一歩だと感じています。
まとめ:歯科から広がる、全身を見守る医療のカタチ

医科歯科連携は、特別な取り組みや難しい制度の話ではなく、目の前の患者さんを大切に思う気持ちから自然に生まれるものだと、日々の診療の中で感じています。お口の状態を整えることは、食べる力や話す力を守るだけでなく、糖尿病をはじめとした全身の健康にも深く関わっています。
当院では、大阪糖尿病療養指導士が在籍していることで、歯周病治療や口腔ケアを「お口だけの問題」として終わらせず、生活習慣や全身状態にも目を向けたサポートが可能となっています。歯科衛生士として患者さんのお話を伺い、小さな変化や不安に気づき、それを歯科医師や医科につなげていく。その積み重ねが、患者さんにとっての安心につながっていると感じています。
歯科医院は、痛くなってから行く場所ではなく、健康を守るために通い続ける場所です。だからこそ、歯科から医科へ、そして地域全体へと視点を広げた医療が求められているのではないでしょうか。これからも当院では、歯科衛生士の立場からやさしく丁寧に医科歯科連携の大切さを発信し、患者さん一人ひとりの「その人らしい生活」を支える歯科医療を目指していきたいと思います。
