医療法人 西村歯科心斎橋診療所

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2025.11.05Newコラム

【医科歯科連携の時代へ】糖尿病と歯周病の深い関係 ~HbA1c改善の鍵は「お口のケア」にあり~

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はじめに:なぜ、歯医者さんが「糖尿病」のお話をするのか

皆さま、こんにちは。大阪市中央区心斎橋駅から徒歩1分の西村歯科心斎橋診療所、院長の秦です。

昨今とくにお口と体のその中で、一見関係が薄いように思える「お口の健康(歯周病)」と「全身の健康(糖尿病)」が、実は非常に密接な関係にあることが、近年の研究で明らかになっています。

特に、糖尿病を患っている方、またはその予備軍である方にとって、お口の中の状態を健康に保つことは、全身の病状をコントロールするために欠かせない要素となっています。

このコラムでは、歯周病と糖尿病がどのように影響し合っているのか、そして、歯科医院での治療がどのように糖尿病の改善に貢献できるのかを、最新の知見や研究を交えながら、分かりやすくお伝えします。

1.相互に悪影響を及ぼし合う「負のループ」:歯周病と糖尿病

歯周病と糖尿病の関係

歯周病と糖尿病は、どちらか一方が悪くなると、もう一方も悪くなるという「負のループ」の関係にあります。この関係性を理解することが、全身の健康を守る第一歩となります。

糖尿病が歯周病を悪化させるメカニズム

糖尿病とは、血糖値をコントロールするホルモンである「インスリン」がうまく働かず、慢性的に血糖値が高い状態が続く病気です。この高血糖の状態が、全身の組織に悪影響を与えます。

1.免疫力の低下と感染の進行: 血糖値が高い状態が続くと、細菌やウイルスなどから体を守る免疫細胞の機能が低下します。その結果、歯周病菌に対しても抵抗力が弱まり、歯ぐきが炎症を起こしやすくなります。

2.炎症の増悪と治癒力の低下: 糖尿病の方は、血管がもろくなり血流も悪くなりがちです。歯ぐきに炎症が起こると、それを修復するための栄養や酸素が十分に届かず、組織の回復が遅れます。そのため、一度歯周病が悪化すると、進行が早く、治りにくい状態となります。

    歯周病が糖尿病を悪化させるメカニズム

    逆に、歯周病も糖尿病のコントロールを難しくする要因となります。

    1.「炎症物質」によるインスリン機能の阻害: 重度の歯周病になると、炎症を起こしている歯ぐきから、TNF-α(ティーエヌエフ・アルファ)などの様々な炎症性物質が血液中に常に流れ出します。

    2.インスリン抵抗性の増大: これらの炎症性物質が血流に乗って全身を巡り、血糖値を下げる役割を持つ「インスリン」が効きにくい状態、すなわち**「インスリン抵抗性」を強めてしまう**ことが分かっています。インスリンが効きにくくなると、膵臓はより多くのインスリンを出そうとしますが、やがて力尽き、血糖値はさらに高くなってしまいます。

    3.歯周病は「第六の合併症」: 従来、糖尿病の三大合併症として網膜症・腎症・神経障害が知られていましたが、現在では歯周病は、心筋梗塞や脳梗塞などの血管病変に並び、**「糖尿病の第六の合併症」**として位置づけられるほど、重要な病態と認識されています。

      2.治療効果の客観的な指標:HbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)との関係

      糖尿病の治療効果を評価する上で、最も重要な指標の一つが**HbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)**です。これは、過去1~2ヶ月間の平均的な血糖コントロールの状態を示す数値であり、医科の先生方が治療方針を決定する際の鍵となります。

      近年の研究により、このHbA1cの数値と歯周病治療の効果との間に、明確な関連性が認められています。

      歯周治療がHbA1cを改善させるという科学的根拠

      複数の大規模な研究(システマティックレビューやメタアナリシス)が、歯周病治療、特に**「非外科的な基本治療」**がHbA1cの改善に寄与することを報告しています。

      【代表的な研究報告(文献)の知見】

      医学書のイメージ

      系統的レビューによる結論: 複数の研究結果を統合して分析した報告によると、中等度から重度の歯周病を持つ糖尿病患者さんが、歯石除去やルートプレーニング(歯の根の表面を滑らかにして細菌を除去する処置)といった標準的な歯周治療を受けることで、約3~6ヶ月後にHbA1cの値が平均で0.3%~0.4%程度改善することが示されています。

      「生活習慣病」としての歯周病: このHbA1cの改善効果は、糖尿病治療薬を一つ追加した場合の効果に匹敵することもあります。この事実は、歯周病が単なるお口の病気ではなく、**全身の代謝を左右する「生活習慣病」**の一つであることを強く示唆しています。

      炎症マーカーの低下: 歯周治療を行うことで、歯ぐきの炎症が治まり、前述した血中の炎症性物質(TNF-αなど)の濃度が低下します。この炎症マーカーの低下が、インスリン抵抗性を改善し、結果としてHbA1cの数値改善につながるというメカニズムが、多くの研究で裏付けられています。

      つまり、糖尿病患者さんにとって、歯科医院で歯周病の治療を受け、お口の中の炎症を取り除くことは、糖尿病治療の一環として非常に大きな意義があるということです。

      3.医科歯科連携の重要性と当院の取り組み

      歯周病と糖尿病がこれほど密接な関係にある以上、内科の先生方と歯科医院が連携を取り、情報を共有しながら治療を進める**「医科歯科連携」**の体制が、患者さんにとって最も理想的な治療環境であると言えます。

      求められる「医科歯科連携」の具体的な流れ

      1.歯科からの情報提供(血糖値の把握): 歯科医師は、糖尿病患者さんの歯周治療を行う上で、内科の主治医から現在のHbA1cの値、血糖コントロールの状態、服用している薬剤などの情報を把握する必要があります。これにより、患者さんの全身状態を考慮した、安全で最適な歯周治療計画を立てることができます。

      2.内科への情報提供(歯周病の治療効果): 歯周治療が完了した後、歯科医師は内科の主治医へ**「歯周病の炎症が改善したこと」**を報告します。この情報は、内科側での今後の血糖コントロールの目標設定や、薬剤の調整を行う上で重要な資料となります。

      3.相互啓発とモチベーション向上: 医科と歯科の連携により、患者さんは「歯周病治療が糖尿病治療にも役立っている」ということを明確に理解でき、治療へのモチベーションを高く維持することができます。

        当院での取り組み

        歯科医院で説明を受ける様子

        当院では、糖尿病と歯周病の深い関係性を熟知しており、患者さんの全身の健康を最優先にした治療を心がけています。

        問診の徹底: 初診時には、糖尿病の有無や血糖コントロールの状態を詳しくお伺いし、リスクが高いと判断される方には、歯周病の精密検査を強く推奨しています。

        主治医への情報提供のサポート: ご希望に応じて、当院での歯周治療の経過と改善状況をまとめた書類を作成し、内科の主治医の先生へお渡しいただくことをお勧めしています。

        徹底した炎症コントロール: 歯周病の基本治療に加え、重度の炎症がある方には、適切な薬剤の選択や、精密なメインテナンスプログラムを組むことで、お口の中の炎症を最小限に抑えることに注力しています。

        4.患者さんへのお願い:今、あなたができること

        歯周病と糖尿病の「負のループ」を断ち切り、「正のサイクル」に変える鍵は、患者さんご自身のセルフケアと歯科医院でのプロフェッショナルケアの両立にあります。

        血糖値改善のためのセルフケア

        1.日々の歯磨きの徹底: 細菌の温床であるプラーク(歯垢)を取り除くことが、炎症性物質の産生を抑える最も基本的かつ重要な手段です。歯科衛生士の指導のもと、歯間ブラシやデンタルフロスも活用して、完璧なプラークコントロールを目指しましょう。

        2.規則正しい生活と食習慣: 糖尿病治療の基本である、バランスの取れた食事や適度な運動は、全身の炎症を抑えることにも繋がります。

        3.禁煙: 喫煙は、歯周病を悪化させる最大の危険因子の一つであり、同時に糖尿病のコントロールも困難にします。禁煙は、全身の健康改善に直結します。

          歯科医院での定期的なメインテナンス

          歯周病は再発しやすい病気です。一度お口の炎症を抑えても、メインテナンスを怠ると再び細菌が増殖し、炎症が再燃します。

          糖尿病の患者さんにとって、3ヶ月~4ヶ月に一度の定期的な検診とプロフェッショナルケアは、単に歯を守るだけでなく、**HbA1cの安定を保つための「必須の治療」**であると認識してください。

          最後に

          歯周病治療は、糖尿病治療の一部です。

          「治療したのに、なかなかHbA1cが下がらない…」とお悩みの方は、一度お口の中の炎症(歯周病)に目を向けてみてください。当院では、お口の専門家として、皆さまの全身の健康をサポートできるよう、全力で治療にあたらせていただきます。

          何かご不明な点、ご不安な点がございましたら、どうぞお気軽にご相談ください。

          webでのご予約はこちらから▶️https://planetdentale.com/reserve/about.php?web_code=4bafff33a131c05847acb798fd98e09513b212d598a35dd7880cf9d930dd0b62

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