医療法人 西村歯科心斎橋診療所

06-6253-2900

9:30〜18:00(日・祝は除く)

menu close

2025.08.20Newコラム

【電子タバコなら歯に優しい」は本当?歯ぐきが教えてくれる真実とは。】

電子タバコとオーラルケアの新常識?

タバコを吸う女性

最近、患者さんとの会話でよく聞かれるのが「電子タバコに変えたから、歯に優しいですよね?」という質問です。たしかに、従来の紙巻きタバコに比べて有害物質が少ないとされる電子タバコは、健康意識の高まりとともに注目されています。特に歯や歯ぐきに関して、「黄ばみがつかない」「口臭が減った気がする」といったポジティブな意見も少なくありません。

ですが、歯科衛生士として長年、口腔内のケアに携わってきた立場から見ると、その“やさしさ”の実態には疑問が残ります。見た目がきれいでも、歯ぐきは本音を隠していないかもしれません。今回は、そんな“歯ぐきの声”に耳を傾けながら、電子タバコが本当に歯に優しいのかどうかを、徹底的に掘り下げていきます。

歯科衛生士が気になる、患者さんの“電子タバコ移行”

タバコから電子タバコへ移行するイメージ

「紙巻きタバコから電子タバコに変えたんですけど、これって口の中にはいいんですよね?」これは、実際に私がクリーニング中に患者さんから言われた言葉です。一見すると歯の表面はきれいに見えるかもしれません。ヤニ汚れが減り、歯石の付着量も少ないように感じることもあります。

しかし、口腔内全体を見るとそう単純ではありません。歯ぐきの腫れ、歯周ポケットの深さ、プラークの質など、電子タバコでも確実に影響が出ていると感じるケースは多いです。見えにくい部分にこそ、電子タバコの“影”が潜んでいるのです。

また、若い世代を中心に電子タバコユーザーが増えていることも、歯科衛生士として危惧している点です。彼らは「タバコじゃないから安心」と思ってしまい、歯科検診の頻度も下がる傾向にあります。

なぜ今、電子タバコが注目されているのか?

電子タバコ

そもそも電子タバコは、「加熱式」「リキッド式」など複数のタイプがあり、いずれも“燃やさない”という特徴を持っています。これにより、タールなどの有害成分の排出が抑えられるとされ、「煙が出ないから周囲に迷惑をかけない」「ニオイが少ない」など、利用者にとっての利点が多くPRされています。

しかし、「煙が出ない=無害」ではありません。加熱することで生成される化学物質、たとえばホルムアルデヒドやアセトアルデヒドなどの刺激物質が含まれていることが研究でも明らかになっています。

そのうえ、リキッドにはニコチンが含まれるものもあり、血流に与える影響や歯ぐきの免疫低下を引き起こす可能性があるのです。つまり、「健康的に見える」電子タバコも、歯と歯ぐきに対しては決して“無害”とは言い切れないというのが現実なのです。

紙巻きタバコ vs 電子タバコ:お口への影響の違い

電子タバコを吸う人の口元

電子タバコが広まる一因として、「紙巻きよりも健康被害が少ない」といった認識があります。たしかに、ヤニによる着色がほとんどなく、使用後の口腔内のニオイも軽減されているように感じるでしょう。しかし、歯ぐきの状態はどうでしょうか?

実際のところ、電子タバコでも歯ぐきの腫れや出血を訴える患者さんは少なくありません。特に、長期間吸っている方は、歯周ポケットが深くなる傾向があり、歯周病リスクが確実に高まっています。

また、歯科衛生士として歯石を除去する際、電子タバコユーザー特有の“取りにくいプラーク”があることにも気づきます。これは、電子タバコの化学成分が歯垢と結合して性質を変えている可能性もあると考えられます。つまり、紙巻きから電子に変えたことで「害がなくなった」と思っていたら、実は別の形でリスクが存在しているのです。

電子タバコが歯に優しいと言われる理由とは?

黄ばんだ歯と綺麗な白い歯

電子タバコを吸っている方の中には、「紙巻きタバコのように歯が黄ばまないから安心」と考えている人が多くいます。確かに、ヤニ(タール)による着色がないため、表面的には歯が白く見えることも多いです。また、煙が少ないため、喫煙後の口臭も軽減されると感じる人が多いのも事実です。

しかし、歯科衛生士として強く伝えたいのは、「見た目だけでは判断できない」ということ。歯や歯ぐきは、見えない部分で多くの影響を受けています。電子タバコに含まれるニコチンや化学物質は、歯肉の血流を悪化させ、結果的に歯周病のリスクを高めるのです。

つまり、「汚れない=優しい」というのはあくまで表面的な話であり、実際には歯ぐきの健康が徐々に蝕まれている可能性もあります。これはまさに“見た目にだまされる”典型例。電子タバコが歯に優しいとされる理由には、誤解や先入観が多く含まれているのです。

タールがない=汚れがつかない?その落とし穴

タールで汚れた歯

よくある誤解のひとつが、「電子タバコにはタールがないから、歯が汚れない」という考え方です。たしかにタールは、歯の着色の最大の原因のひとつ。紙巻きタバコのようにタールを発生させない電子タバコでは、黄ばみが抑えられる傾向にあります。

しかし、タールがないからといって「完全に無害」というわけではありません。電子タバコにもリキッドの成分による微細な粒子や油分が含まれており、これがプラークと結びついて歯の表面に粘着する可能性があります。実際、清掃の際に「なんとなくベタつく」ような感触を感じることもあります。

また、汚れが見えにくいことで、歯磨きを怠ってしまうケースも少なくありません。結果として歯周病が進行してしまい、歯ぐきが後退するリスクも高まるのです。「汚れがつかないから安心」と思って油断していると、いつの間にか取り返しのつかない状態になっている…そんな事例も多く見られます。

歯科医院で定期的にクリーニングを受けていると、紙巻きタバコ利用者と電子タバコ利用者の違いがよく見えてきます。確かに表面的なヤニ汚れの量には大きな差があります。紙巻きタバコを吸う方の歯には明らかな着色があり、取り除くのにも時間がかかります。

一方、電子タバコを使用している患者さんは、見た目の汚れが少ないため一見キレイに見えます。しかし、歯と歯ぐきの境目をよく見ると、プラークの質が違うことに気づきます。粘り気があり、取りにくい。また、歯ぐきが妙に赤く腫れていることもあり、出血しやすい傾向が見られます。

つまり、汚れが少ないからといって健康であるとは限らないのです。むしろ、「キレイに見えるけど危険な状態」が電子タバコ利用者の特徴かもしれません。私たち歯科衛生士は、そんな“見た目だけではわからない危険信号”に、日々、注意を払っています。

歯ぐきが語る「本当のダメージ」

綺麗な歯茎とダメージを受けた歯茎

電子タバコの使用によって、見た目では気づきにくいダメージが進行しているのが「歯ぐき」です。歯ぐきは血流の状態や免疫力に非常に敏感で、ニコチンの摂取によって栄養供給が滞ると、炎症が進行しやすくなります。

とくに問題なのが、初期段階では自覚症状が出にくいことです。歯ぐきの腫れや出血は、ある程度進行してから現れることが多く、気づいたときには歯周ポケットが深くなっていた…というケースも少なくありません。

また、歯ぐきの退縮(下がること)も見逃せません。歯が長く見える、歯と歯の間にすき間ができた、食べ物が挟まりやすくなった…そんな症状が出てきたら要注意です。電子タバコによって歯ぐきの健康が損なわれている可能性があるのです。

歯ぐきは、あなたのお口の健康状態を知らせるセンサーのようなもの。電子タバコだからといって安心せず、定期的に歯科検診を受け、自分の歯ぐきの“声”に耳を傾けてあげてください。

歯周ポケットとは、歯と歯ぐきの間にできるすき間のこと。健康な状態では1〜2mm程度ですが、歯周病が進行すると、このポケットがどんどん深くなっていきます。電子タバコを使用している方の中にも、この歯周ポケットの深さが増しているケースが目立ちます。

特に、ニコチンによって歯ぐきの毛細血管が収縮し、免疫力が低下することで、細菌が繁殖しやすくなるのが問題です。結果として、歯周ポケット内にプラークや歯石がたまりやすくなり、炎症が慢性化してしまうのです。

さらに厄介なのが、歯周病は「痛みを感じにくい」こと。歯周病が進行していても自覚症状がほとんど出ません。まさに“サイレントキラー”のような存在です。

だからこそ、電子タバコを吸っている人ほど、歯周ポケットの定期的なチェックが重要になります。気づいたときには手遅れ、なんてことにならないよう、予防意識を高く持つことが大切です。

歯科衛生士が実感するメンテナンス頻度の変化

体のメンテナンスのイメージ

電子タバコに移行した患者さんの中には、「紙巻きタバコをやめたから、もう頻繁に歯医者に来なくても大丈夫」と思い込んでしまう方が増えています。しかし、実際の現場では、電子タバコ利用者の方が“よりこまめなケア”を必要としていることも少なくありません。

特に、歯ぐきの炎症を放置すると歯周病が悪化するリスクまであります。見た目の汚れが少ないことで油断しがちですが、歯石の中には見えにくい“軟らかく、しぶとい”汚れが潜んでおり、それを取り除くにはプロによるメンテナンスが不可欠です。

さらに、電子タバコの成分が歯肉に微細な影響を与えている場合もあるため、定期的なクリーニングに加えて、歯周ポケットの測定やレントゲン検査を受けることをおすすめします。口の中は「自分では見えにくいけれど、確実にダメージが蓄積していく場所」です。

だからこそ、電子タバコを吸っている人ほど、“口の中に無頓着”にならないよう、自分の健康状態を歯科でチェックする習慣を大切にしてほしいのです。

まとめ:歯に優しいは本当か?“選ぶ前に知っておきたいこと”

選択をする女性

ここまでの話をまとめると、「電子タバコ=歯に優しい」という認識は、表面的には正しいように見えても、実際には多くの誤解を含んでいます。確かにタールによる着色は少ないかもしれません。しかし、歯ぐきや歯周組織に与える影響は決して無視できないものがあるのです。

電子タバコを選ぶことで紙巻きよりも健康的になると考える方も多いですが、それはあくまで「比較論」でしかありません。根本的にニコチンや化学成分を含む以上、口の中への悪影響をゼロにすることは難しいのです。

歯科衛生士としての立場からは、「電子タバコだから大丈夫」と油断せず、むしろ自分の口の中としっかり向き合う姿勢を持ってほしいと願っています。歯ぐきはあなたの健康を静かに教えてくれる“語り手”です。見た目だけに惑わされず、歯ぐきの本音に耳を傾けること。それが本当に“歯に優しい選択”につながる第一歩なのではないでしょうか。

ご予約はこちらから
予約ボタン


WEB予約
LINE友達追加 24WEB予約 06-6253-2900