2025.01.15コラム
仮の歯(仮歯)が取れた!
西村歯科心斎橋診療所、院長の秦です。
前歯の治療を受けたことがある方は短期間でも仮の歯を入れたことがあるのではないでしょうか?
仮歯が取れて不便さを経験した方もいらっしゃるのではないでしょうか?
そんな時そのままにしていてもいいのか、仮歯をつけてもらいに歯科医院に行くべきなのか?悩むことがありますよね。
私も治療歯がありますので同じような経験をしたことがあります。
このコラムではそんな時どうするのか?
そもそも仮歯は必要でどんな役割があるのかを記したいと思います。
目次
仮歯とは?
英語でTemporary Crownと言われ、わかりやくす訳すと”暫間的な被せ物”となります。
最終的な被せ物ができるまでしばらくの間だけ使用する仮の被せ物です。
ではどんな時に仮歯は必要になるのでしょうか?
①審美的に歯がないと目立つ
前歯を治療して被せ物を入れる場合、最終的な被せ物ができるまで”歯が抜けたまま”でいいですと思われる人はいないのではないでしょうか。
恥ずかしくて人前に出れないと思われる人の方が多いと思います。
そんな時は仮歯を装着します。
ではどの範囲の歯まで?と疑問に思われると思いますが、患者さんにとって仮歯が無ければ不都合であれば治療中に仮歯を作成し装着いたします。
①の仮歯が外れた場合
治療の過程において、外れたままでいいのか、再度着けた方がいいのか、必ず歯医者さんに連絡をしましょう。
場合よっては、見た目に問題がなければ次の予約までそのままでも大丈夫なこともあります。
気になる場合は歯科医院に連絡して付けてもらいましょう。
市販の接着剤などでつけてしまいますと、装着予定の被せ物が入らない場合がありますのでどうしても急ぎで歯科医院にいけない場合は担当の歯科医師と相談してください。
②神経がある歯を被せ物を装着するまでの期間
神経がある歯は仮歯を入れずに過ごすと、歯がしみて食事もしても痛みがあってできません。
被せ物ができるまでの間、仮歯を装着しておくことで歯を保護して痛みが出ることを防いでくれます。
②の仮歯が外れた場合
生活に支障がなければそのままでも問題がないこともありますが、注意が必要です。
注意しないといけないのが、仮歯が外れている期間が長いと、次回に装着予定の被せ物が入らないことがあります。
原因は歯の位置が動いてしまうことです。
隣り合う歯や治療中の歯の位置が変わることで製作した被せ物が入らなくなります。
調整しても入らなければ、再度型を取り被せ物を作らないといけなくなるので、治療期間が長くなります。
できれば歯科医院に連絡して仮歯を装着してもらうことをお勧めします。
③ブリッジで治療する場合は仮歯が必要になります。
上述しましたが、仮歯が装着されていないと隣接する歯の位置が変わります。
ブリッジは2本以上の歯を連結し失った歯を補う治療法です。
その部位に仮歯を装着していないと最終的に装着するブリッジが入らなくなります。
できるだけ位置が変わらないように仮歯を装着します。
③の仮歯が取れた場合
できるだけ歯科医院で仮歯をつけ直してもらいましょう。
以上は簡単な仮歯の必要性を記しましたが、実はその他にも仮歯には重要な役割があります。
プロビジョナルクラウンとは
もう一段階重要な役割をする仮歯を歯科ではプロビジョナルレストレーション:Provisional restorationやプロビジョナルクラウン:provisional crawnと言います。
プロビジョナルクラウンは最終的な被せ物と材料は違いますが、形は最終的な被せ物をイメージした形態になります。
プロビジョナルクラウンには従来の仮歯と違った一段階も二段階も重要な役割があります。
①歯肉と整える。
最終の被せ物を作成する前に必ず型取りが必要になります。
”型取りを鮮明に、正確な状態ですることが精度の高い被せ物ができる!”これは歯科医師や歯科技工士の誰もが認める事実であり、良い歯科治療を提供することにおいて最も基本的で重要なことです。
歯の形を整える(支台歯形成)て、型を取り、歯科技工士さんにプロビジョナルクラウンを作成していただきます。
プロビジョナルクラウンは最終的な被せ物とほぼ同じ形で作成していただきますので、歯肉に触れる部分の細部まで炎症が起きないように、歯ブラシや歯間ブラシで清掃できる状態であるのかなど、経過を見て歯肉の整え、最終的な型取りをします。
②審美的な形態の確認する。
審美的なエリア、特に前歯には客観的に綺麗に見える基準があるものの、患者さん個人個人に好みがございますのでプロビジョナルクラウンで好みの形やお顔に合っているのかなどを確認します。
審美歯科についてはコラムの”白くてキレイな歯は清潔な印象、若さの印象もつける審美歯科治療”をご参考になさってください。
③噛み合わせを確認する。
1本や2本の歯など部分的な治療の場合は仮歯→最終の被せ物の順で治療が進みますが、広範囲に至る治療や全顎的な治療をする場合、インプラント治療をする場合は必ずプロビジョナルクラウンが必要となります。
特にインプラント治療は歯がなかったところに急に歯が存在することになります。
歯が欠損していると舌は頬側(外側)に寄り、頬は舌側(内側)に寄ります。
(理由は天然歯は頬と舌の力が拮抗しているところに並びますので、歯がないとそのスペースに舌と頬が寄るため)
そのためインプラント上部冠を装着すると頬を噛んだり、舌を噛んでしまったりします。
ほとんどの場合は1~2週間で改善しますが、中には一向に改善しない方もいらっしゃいます。
最終的な上部冠であると削ることはできますが、簡単に盛り足すことができません。
プロビジョナルクラウンはそれが可能なので、西村歯科心斎橋診療所ではインプラント治療をする場合は必ずプロビジョナルクラウンを使用していただく期間を設けます。
前後、左右にズレてしまった噛み合わせを治療するのに、プロビジョナルクラウンを装着し変化を確認する期間が必要となります。
全顎治療が必要な場合のプロビジョナルクラウンは大きな意味を持ち、噛み合わせや歯並び、歯の形態が脳に対して刺激を”入力”しその”出力”を変化として診断することで、最終的な被せ物を作成していきます。
④被せ物の厚みを確認する。
被せ物を作るためには被せ物を作成できるだけの”厚み”が必要です。
被せ物の種類によって最低限必要な厚みも違います。
奥歯でしたら壊れないように必要な強度を発揮するための厚み、奥歯で噛みやすいように形をすくるための厚みが必要です。
前歯であれば、強度、形態だけでなく複雑な色を再現するためのセラミックを築成する厚みなどを考慮しないといけません。
その条件が満たされているのかを歯科技工士によって作成されたプロビジョナルクラウンの厚みを計ることで歯科医師も歯科技工士も確認することができます。(※プロビジョナルクラウンの厚みを確認することで最終的な被せ物の種類も決めることができます。)
⑤清掃性を確認する。
どれだけ精密に型を取り、歯科技工士が精度の高い被せ物を作成できたとしても、プラーク(歯垢)が取り除けなければ虫歯になったり、歯周病になります。
とくにインプラントは清掃性はいいことが長く口の中で使用するためには必須です。
インプラントは虫歯になりませんがインプラント周囲炎をと言う”インプラントの歯周病”になります。
インプラントを失う原因で最も高い原因であるため、インプラント周囲炎に予防するためにはインプラント周囲の清掃性を考慮して手術から上部冠の作成までの計画を練らないといけません。
西村歯科心斎橋診療所ではインプラントにプロビジョナルクラウンを作成時に歯科技工士に歯間ブラシサイズなどを伝えて清掃性を考慮して製作していただきます。
また装着後に、担当歯科衛生士が歯間ブラシが入るのか、サイズも他の歯と同じようなサイズで大丈夫なのかを確認します。
もちろん最終上部冠を装着した際も同じように作成し、チェックをいたします。
仮歯には様々な重要な役割がございます。
全顎治療をする際にはケースによってはプロビジョナルクラウンを2回、3回と作成する必要があります。
治療を早く済ますには、最終の被せ物を早く装着することが先決ですが、仮歯やプロビジョナルクラウンで経過を見ることは被せ物を長期に使用していただくために必要な工程であります。
西村歯科心斎橋診療所では審美治療、インプラント治療、噛み合わせ治療においても細部まで考えた治療を歯科医師、歯科衛生士、歯科技工士がチームとなり良い歯科医療を提供いたしております。
補足、、、
重要なこと
仮歯はしばらくの間だけ、使用する被せ物です。
仮歯を装着したら来院されなくなる患者さんもいらっしゃいます。
仮歯があくまでも仮歯なので、外れていないからと言って大丈夫なわけではありません。
仮歯の中で虫歯が進行したり、素材が劣化し汚れやすくなり歯周病が悪化する場合もございます。