2024.12.18Newコラム
その身体のダルさは血糖値の乱高下が原因?
今回は、西村歯科心斎橋診療所で勤務しております、糖尿病療養指導士兼歯科衛生士の叶より、比較的、健康な方にでも起こってしまう「血糖調節異常」からくる体の不調についてのお話をさせていただきます。
目次
1、血糖値とは
血糖値とは血液中のグルコース濃度を表したものです。
私たちが普段食事の中で摂取している、主にご飯やパン、麺などの炭水化物の中には「糖分」が多く含まれており、この糖分が身体の中に消化、吸収されるとブドウ糖(グルコース)に変わり、血液を通って、身体全体のエネルギーとして働きます。
その血液中のグルコースの濃度を測ったものが血糖値といいます。
この血糖値は、通常は空腹時と食後で変動し健康な人は一定の幅で変動しますが、糖尿病の人は変動が大きく、高血糖状態や低血糖を引き起こしてしまいます。
2、血糖値の変動
通常、健康な人は食事をすると血糖値が上昇し、すい臓から「インスリン」という唯一血糖値を下げることができるホルモンが分泌されることで、血糖値が過剰に上がらないようコントロールされています。そのため、通常は食後約2時間ほど経てば血糖値は空腹時の値まで戻ります。
しかし、糖尿病の方はこのインスリンの分泌量が少なくなってしまったり、インスリンの反応が悪くなってしまうことで、食後2時間以上経過しても、なかなか血糖値が下がらない状況が起きてしまいます。
この血糖値が下がらない状況を「高血糖」と言います。
高血糖状態が続いてしまうと、血管の動脈硬化や、血管の壁が脆くなってしまったりすることでさまざまな合併症が起こるため、糖尿病に伴う合併症の予防が大きな課題となっています。
そして、高血糖だけでなく現在は偏った食生活やさまざまなストレスによって血糖値が下がりすぎてしまう「低血糖」も大きな問題となっています。
特に低血糖では、意識が朦朧としたり、頭痛やめまいなどを引き起こすため注意が必要です。
3、低血糖症とは
通常、人の体は血糖値が正常範囲よりも下がってしまうと血糖値を上げようとするのですが、健康な方では無理なダイエットや偏った食生活、激しい運動などによって低血糖を引き起こしてしまいます。糖尿病治療中の方はインスリン注射や飲み薬の量が多くなってしまうことで起こる場合がありますが、この低血糖が続くと脳などの中枢神経がエネルギー不足の状態になることで冷や汗や動悸、意識障害、手足の震えなどの「低血糖症状」が出てきます。そして、この低血糖症状は血糖値が急激に大きく下がることでも起こる場合があります。そのため、健康診断などで血糖値が正常の範囲内であっても血糖値の変動が大きくなれば低血糖症状が出たり、逆に正常値よりも低くなっていても明らかな症状が出ない方もいますので注意が必要です。
4、機能性低血糖について
機能性低血糖とは、主に炭水化物などの糖質の過剰摂取や、偏った食生活、ストレスなどによって腸内環境が悪くなってしまうことが原因で起きてしまうと考えられています。
特に、精製された白米やパン、麺類、お菓子類などの糖質は体への吸収が速く急速に血糖値が上がり、この上がった血糖値を下げるためにすい臓からインスリンが大量に分泌されます。そうすると上昇した血糖値は急激に下がり、この時に眠気や集中力の低下、疲労感、頭痛、手の震えなどの症状が出ます。
そして、この下がった血糖値を上げるために血糖値を上げるアドレナリンやノルアドレナリンなどのホルモンの影響でイライラや恐怖感、不安感、抑うつなどの症状が起こり、身体はストレスを感じることから、次にストレス解消のために甘いものを身体は欲します。しかし、甘いものを摂取することで再び血糖値の乱高下が起こり、機能性低血糖の症状が繰り返されます。
5、低血糖チェック
- ご飯、パン、麺類などをよく食べる
- 食後や数時間後に強い眠気がある
- 頭痛や動悸、手の震えなどがしばしば起きる
- 甘いものをよく食べる
- 睡眠の質が悪い、慢性的な疲労感がある
そのほかにも、集中力の低下や記憶力の低下も多く見られる症状の一つです。
機能性低血糖は、健康診断や普段受けている血液検査ではほとんど発見することはできません。
当院では、日常的な機能性低血糖症を知るために24時間グルコースモニタリング検査をおすすめしております。
この検査では、「リブレプロ」というセンサーを上腕の皮膚表面に貼り付け、グルコースの日内変動を2週間連続で記録します。
同時に食事内容の記録を行なっていただき、食事によるグルコース値の変動や体調の変化を観察することで不定愁訴の解決に繋げることができます。食事の環境や食べる順番などによって人それぞれ同じ食べ物でも血糖値の変動の仕方が違います。食事をする際に身体で起きている変化を知ることで、糖尿病や慢性的な不調を抱えている方、健康な方にも未然に身体の健康を考えることができるためおすすめの検査です。
6、血糖調節異常を防ぐポイント
前述しました、主に炭水化物などの糖質の過剰摂取や、偏った食生活、ストレスなどによる「高血糖」や「機能性低血糖」などの血糖調節異常を防ぐポイントがあります。
6−1高たんぱく低糖質
特に現代社会では手軽に食べられるファストフードや炭水化物などの糖質に偏ってしまう傾向にあるため、積極的にたんぱく質を摂取しましょう。たんぱく質の主な1日の目安摂取量は、「体重1kg×1.5〜2g」です。
毎食の食事に2種類以上のたんぱく質を摂取しましょう
6−2よい油を選ぶ
3大栄養素にも含まれている脂質は、魚脂やエゴマ油などのオメガ3脂肪酸やMCT(中鎖脂肪酸)オイルをうまく食事に取り入れることで、糖質に変わるエネルギー源にもなります。しかし、市販の揚げ物やインスタント食品には多くのトランス脂肪酸が含まれており、心疾患を高めるリスクがあることがわかっており、アメリカなどでは使用が禁止されています。
そのため、よい油と摂取を減らしたい悪い油をしっかり見極めることが大切です。
6−3しっかり消化
食事から得られる栄養は消化、吸収、代謝の流れを経て身体の必要な場所へ供給されています。そのため、食事内容をどれだけ改善していてもこのサイクルが回らなければ身体の不調は改善されることはありません。
6−3−1消化を促進する大切な3つのポイント
①ゆっくりよく噛むこと
よく噛むことで食べ物が細かく噛み砕かれ胃の中で消化されやすくなるのと、脳の満腹中枢が刺激されることで食べ過ぎを防止してくれます。
②明るい気分で食べる
考え事や作業をしながら食べる「ながら食べ」は交換神経が優位な状態になってしまい、唾液や胃酸の分泌を阻害してしまいます。一方、明るい気分でゆっくり食事を摂ることができるとい副交感神経が優位になり唾液や胃酸などの消化液が分泌されます。
③食事途中の水分は控える
食事途中に水分を摂取してしまうと胃酸が薄まってしまったり、食べ物をそのまま胃の中に流し込んでしまう可能性があるため、お味噌汁などの食事に含まれる水分以外の水分は極力減らすことをおすすめします。
6−4不調の原因になりそうな食材を控えてみましょう
毎日摂るお食事の中で極力控えたい食材をご紹介します。
知らずに取り続けていると、さまざまな不調を引き起こしてしまう食材も少しの期間食べたり飲んだりするのをやめてみると体調がそれだけで良くなる方もいらっしゃいます。
6−4−1毎日の食事で控えたい食材
①糖質の多い食材
お菓子や清涼飲料水など糖類を多く含んだ食材は糖質過多の原因になってしまい、ダラダラ食べてしまうことで虫歯のリスクが高くなったり、機能性低血糖を引き起こしやすい食材でもあります。このような食材はたまにのご褒美に摂るようにしましょう。
②グルテン・カゼイン
小麦に含まれるグルテンや牛乳などの乳製品に多く含まれるカゼインは、腸内環境や消化器系に影響を及ぼすと言われています。グルテンやカゼインは中毒性があり簡単に止めることが難しい食品になりますが、特にアレルギー体質の方や便秘や下痢などの症状がすでにある方はグルテン・カゼインフリーの食事をおすすめします。
③カフェイン・アルコール
コーヒーや栄養ドリンクなどに含まれているカフェインは交感神経を優位にしてしまうため、身体が過緊張を起こしてしまう原因となってしまう食材です。アルコールも同じく交感神経を優位にし、腸内環境を悪化させてしまったりビタミン、ミネラル不足の原因となってしまうため注意が必要です。
④よくない油や食品添加物
パンやケーキなどに多く含まれているマーガリンやショートニングは、トランス脂肪酸が含まれており心疾患のリスクを高めることがわかっています。その他にもハムやインスタント食品に多く含まれるリン酸塩や保存料はミネラル不足や腸内環境に影響を与えてしまう食材になるため、極力少ないものを選択しましょう。
7、まとめ
血糖調節異常は糖尿病の方だけでなく、健康な方にも起こりうる症状です。
疲れがなかなか取れなかったり、急激な眠気などの不定愁訴は健康診断ではなかなか発見しづらい症状です。普段のお食事の内容はもちろんですが、お食事をとる環境を少し工夫するだけで症状が改善する場合もあるため、一度お食事の状況を確認してみましょう。
また、食事についてのご相談やお口の中で気になる症状がある場合は一度に西村歯科心斎橋診療所へご相談ください。