医療法人 西村歯科心斎橋診療所

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2024.08.15コラム

歯周病と糖尿病の関係について

糖尿病イメージ

今回は、西村歯科心斎橋診療所で勤務しております、歯科衛生士兼大阪糖尿病療養指導士の叶より糖尿病と歯周病の深い関係について少しお話しさせていただきます。
糖尿病の第6の合併症と言われている歯周病ですが、糖尿病を患われている方は歯周病になりやすいとともに、歯周病になってしまうと血糖コントロールが悪くなってしまうとも言われています。
特にこの歯周病は、自覚症状がほとんどないことが特徴です。
そのため、定期的なメインテナンスと毎日のセルフケアがとても大切です。

糖尿病ってどんな病気?

現在、日本は約1000万人の方が糖尿病を患われており、この糖尿病に伴う様々な合併症の克服が重要な課題となっています。
その合併症の一つに、歯周病も含まれおり医科歯科連携の必要性がとても重要視されてきました。

この糖尿病には、1型糖尿病と2型糖尿病の2種類に分けられ、どちらも「インスリン」が関与している病気なのですが、1型糖尿病は膵臓のインスリンを分泌する細胞が壊されてしまい血糖値を下げる役割のあるインスリンがほとんど出なくなってしまう病気です。
一方、2型糖尿病は遺伝的要因に加え、不規則な食生活や運動不足、肥満などの生活環境が大きく関わっており、それらの影響でインスリンが出にくくなったり、効きにくくなったりすることで血糖値が高くなってしまいます。

糖尿病の症状には

糖尿病の症状

・喉の渇き、口が乾燥する
・尿の回数が増える
・体重減少
・身体が疲れやすくなる

などが、あげられます。
特に症状がなく、健康診断などで判明する方もいらっしゃれば急に症状が出て判明する方もいらっしゃいます。

特に、この2型糖尿病と歯周病は深く関係していると言われており
医科歯科、双方からのアプローチを行う必要性があります。

歯周病ってどんな病気?

歯を失う原因

歯周病は、日本人の歯を失ってしまう原因の中で最も多い病気です。
40歳以上の約半数以上に認められ、歯周病に患われている方の割合は年齢とともに増加します。
この歯周病とは、歯に穴が開いてしまう「虫歯」とは全く異なった病気で、歯と歯ぐき(歯肉)の間の歯周ポケットから侵入した細菌が、歯ぐき(歯肉)に炎症を引き起こし、病状が進行することで、歯の周りを支えている骨(歯槽骨)が溶けてしまいます。そうすると歯がグラグラし、しまいには歯が抜けてしまう病気です。

歯周病の進行にも段階があり、初期の段階であれば適切なセルフケアやプロフェッショナルケアを施すことで、元の健康な状態に戻ることができます。
しかし、歯の周りを支えている骨(歯槽骨)が一度溶けてしまうと元の健康な状態には戻りません。

歯周病の症状には、

歯周病の症状・口臭が気になる
・歯みがきの時に血が出る
・歯ぐき(歯肉)が赤く腫れている
・歯がグラグラする

などが、あげられます。
このように痛みが発現しずらい病気のため、ほとんど症状がなく歯がグラグラして食べ物が食べずらくなってから歯科医院へ受診すると歯を抜かなければならなくなってしまっている場合もあります。
そのため、かかりつけ歯科医への定期的なメインテナンスや適切なセルフケアが歯周病を予防するためにはとても重要です。

歯周病の原因

歯周病の原因歯周病の原因には、様々な原因があげられますが、主に歯の表面に付着するプラーク(細菌の塊)によって歯ぐき(歯肉)に炎症を引き起こし、その炎症を放置することで歯を支えている骨がどんどん溶けてしまう病気です。
お口の中には400〜700種類の細菌が住んでおり、これらの菌は主にお口の粘膜や歯の表面に付着しています。
この細菌は、食事の中に含まれているお砂糖などの糖質をエサにネバネバした物質を作り出すため、歯の表面に付着します。これをプラークと呼びます。
このプラークは一度付着すると粘着力が強く、うがいしただけは取ることができません。
そのため、歯ブラシなどの清掃道具を使用して取ることができなけば、プラークは硬くなり、歯石に変化し歯の表面や歯茎の中で強固に付着します。
この歯石を放置していると、この歯石の中や周りで細菌が増殖し、歯周病を進行させる毒素を出します。この毒素が出続けることで、身体の免疫が反応し免疫細胞が自ら歯の周りを支えている骨(歯槽骨)を溶かします。そのため、歯周病はほとんど痛みなどの自覚症状がないまま進行し、気づいた時には重度歯周病に進行してしまっていることがあります。
この歯石は、お家でのセルフケアだけでは取ることができないため、歯科医院での定期的なメインテナンスで取り除く必要があります。

歯周病を進行させる危険因子(リスクファクター)

歯周病を進行させる危険因子(リスクファクター) ・糖尿病
・喫煙
・お薬の長期服用
・遺伝的要因
・歯ぎしりや食いしばり

などが、あげられます。
このような項目に当てはまる方は、歯周病になりやすい、もしくは歯周病の進行が早い可能性があるため、かかりつけ歯科医に相談することをお勧めします。

歯周病で血糖値が高くなる?

歯周病と糖尿病の関係

それでは、歯ぐき(歯肉)の炎症である歯周病が糖尿病と関連するのでしょうか。
歯周病に患っている歯は、出血などを伴う炎症が常にお口の中で起きている状態です。この歯周ポケットからは炎症性サイトカインという化学物質が発生し、歯ぐき(歯肉)の毛細血管を経由して身体の中に放出されてしまいます。
歯周ポケットから全身に巡った炎症性サイトカインは、身体の中で唯一血糖値を下げる役割をしているインスリンを効きにくくします。これをインスリン抵抗性と言います。
この血糖値を下げる役割のあるインスリンが効きにくくなると、食事をすると血糖値が上がりインスリンによって血糖値が正常な状態に維持されるのですが、血糖値が下がらず高いままの状態(高血糖)になってしまいます。
そのため、糖尿病が発症しやすく、進行も早くなってしまいます。
この炎症性サイトカインは、インスリンを効きにくくするだけでなく、認知症や様々な全身疾患と関連していると言われており、お口の中の健康を守ることはもちろん、全身の健康を守ることにも直結してきます。

歯周病治療をすると血糖値が下がる?

歯周病治療をすると血糖値が下がるか

先ほど、歯周病があるとインスリン抵抗性を引き起こし、食後、血糖値が高いまま(高血糖)になってしまうお話しをしましたが、逆に歯周病治療を適切に行うと血糖コントロールが改善するという研究結果も数多く報告されています。
この歯周病治療とは、お家でのセルフケアだけではなく、炎症の原因となっているプラークや硬くなった歯石などを取り除くスケーリングやデブライドメントといったプロフェッショナルケアが必要になってきます。
歯ぐきから上についたプラークはお家でのセルフケアで除去し、歯ぐきから下についたプラークやブラッシングでは除去できない歯石は歯科医院でのプロフェッショナルケアを行うことで歯肉の炎症をコントロールすることができます。
この歯肉の炎症がコントロールできるとインスリン抵抗性が改善し、血糖コントロールも良くなることが、日本での研究を含め多くの臨床研究で報告されています。

医科歯科連携について

手を合わせている医療従事者

定期的な歯科検診を受けることで、歯周病は防ぐことのできる病気です。
歯周病になってしまった方も、そうでない方も歯周病をコントロールするためには、歯科医院でまずはご自身が歯周病になっていないか、歯周病のなりやすさはどうなのかを調べたうえで、最適なメインテナンスを受診されることをお勧めします。
そして、糖尿病と歯周病は深い関係がある病気です。
もともと歯周病のある方は治療が必要になった場合、血糖コントロールが悪ければ治療の効果が出ずらかったり、治療をすぐに行えない場合があります。
そのような場合には、糖尿病の主治医に確認をとりながら治療を行う必要があります。
そして、糖尿病を患われている方はお口の中のトラブルがある場合も、ない場合も歯科医院へ受診することをお勧めします。治療が必要な場合は、早期発見・早期治療が重症化させないための重要なポイントです。
このように医科歯科での連携を必要に応じて行うことで、糖尿病に伴う合併症を未然に防ぐことができる可能性があります。
お口の健康は全身の健康の入り口です。
一人一人に合った最適なお口のメインテナンスが、歯周病と糖尿病の管理だけでなく、将来の全身の健康と快適な生活につながるように、私たち歯科医療従事者は日々の技術と知識の研鑽を積んでまいります。


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