2024.10.30コラム
なぜ虫歯になるの?
西村歯科心斎橋診療所で勤務しております歯科衛生士の井上です。
今回は「なぜ虫歯になるのか」についてお話しさせていただきます。
「毎日歯磨きをしてるのになぜ虫歯になるの?」と疑問に思ったことはありませんか?
もちろん虫歯予防に歯磨きはとても大切ですが、歯磨きだけをしっかりとしていても虫歯を予防できるとは限りません。
予防するためには虫歯の原因や虫歯が発生するメカニズムを知り、自分に合った対策をすることが大切です。
虫歯の原因を知り、より効果的な予防方法を一緒に見つけましょう!
目次
1 虫歯の原因
1−1細菌
虫歯の原因の一つは歯の表面についた歯垢(プラーク)です。
プラークにはたくさんの細菌の塊で、
なんとプラーク1mg中に約10億もの細菌たちが住み着いています。
このプラークは舌で触るとザラザラ・ヌメヌメとしていて、歯の表面にベタベタとくっつきます。
そして、細菌たちは食べ物に含まれる糖分を餌に酸を産生し、酸によって歯の表面を溶かしてしまうことで虫歯になります。
初期段階の虫歯であればしっかりと歯磨きをし、プラークが付着しないようにすることで虫歯の進行を止めることができますが、虫歯が大きく進行してしまった場合は歯ブラシが行き届かず、どんどん虫歯が大きくなってしまうため治療が必要となります。
1−2 生活習慣
細菌は食事で摂取した糖を分解して酸を作り出し、その酸によって歯を溶かしていきます。
そのため間食が多かったり、ダラダラと長時間飲食をしていると酸を作り出す時間も長くなってしまいます。
細菌にとって糖はエネルギー源なので糖を多く摂取することで、細菌の働きが高まります。
本来、細菌によって作り出された酸は唾液の作用によって中和されます。
ですが、糖分の摂取頻度が多くなると、お口の中が酸にさらされている時間が長くなってしまうことで虫歯のリスクが高まってしまいます。
1−3 脱灰と再石灰化
私たちのお口の中では歯を溶かす「脱灰」と修復する「再石灰化」が繰り返されています。
脱灰とは、細菌が作り出した酸によって歯の表面のエナメル質からカルシウムやリン酸などのミネラル分が溶け出してしまうことです。
再石灰化とは、脱灰によって溶け出したミネラル分を唾液の力を使って再び歯に取り戻すことを言います。
この脱灰と再石灰化のバランスが保たれていることによって虫歯が発症せずに健康な歯を保つことができます。
2 虫歯予防について
虫歯を予防するためにはいくつかのポイントがあります。
2−1 フッ化物(フッ素)
フッ化物には再石灰化を促進する役割があり虫歯予防には欠かせない成分です。
初期の虫歯であればこの再石灰化を利用して修復することができるかもしれません。
ただフッ化物を使っていれば絶対に虫歯にならないというわけではなく、あくまでも予防の手助けをしてくれるものです。
なので歯磨きでしっかりとプラークを除去する+再石灰化を促進するフッ化物でのケアの両方が大切です。
フッ化物は歯医者で行うものとご自宅で行うものがあり、ジェル状のもの、泡タイプ、歯磨き粉に含まれているもの、洗口液など様々な種類があります。
2−1−1 フッ化物塗布法
フッ化物塗布法はフッ化物を直接歯に塗布するもので、免許を持った歯科医師または歯科衛生士が行う医療行為です。
歯医者で行うフッ化物塗布はセルフケアで使用するよりも高濃度のフッ化物を取り扱うことができます。
2−1−2 フッ化物配合の歯磨き粉
最も手軽に使用できるのが、フッ化物が配合された歯磨き粉ではないでしょうか。
市販されている歯磨き粉にもフッ化物が含まれているものも多くなってきました。
フッ化物入りの歯磨き粉を使った後は少量の水でうがいの回数は1回にすることでフッ化物の効果をしっかりと発揮してくれ、
口腔内にしっかりとフッ化物の成分を留めておくことができます。
市販の歯磨き粉に含まれるフッ化物濃度は500〜1450ppmのものがあり、年齢によって使用量やフッ化物の使用濃度が異なってくるため、使う際は注意が必要です。
わからない場合はいつでもお伺いください。
2−1−3 フッ化物洗口
フッ化物配合歯磨き粉と同様、ご自身で行う方法で
フッ化物配合の洗口液をお口に含み1分間ぶくぶくうがいを行います。
製品によって使用量が異なるため必ず説明書を読んでから使用して下さい。
※フッ化物洗口はブクブクうがいができない方には使用できないため、まずは水で1分間うがいができるか確認してからフッ化物洗口を行いましょう。
2−2 食事の摂り方で虫歯のリスクが変わる?
食事をするたびにお口の中の環境は変化します。
その変化を表したのが「ステファンカーブ」というグラフです。
このグラフは食後に口腔内でどれだけの時間、どの程度酸性の状態が続くかを示しています。
通常であればお口の中は中性の状態ですが、
食事を摂ることによってお口の中は一時的に酸性に傾くことで、脱灰がおこります。
そこから唾液の力により、20〜40分程かけて元の中性の状態に戻ることで再石灰化が行われます。
そして、飲食物の内容ももちろん大切ですが、飲食の回数が多かったり、だらだらと食べ飲みをしていると脱灰の状態が長く続くため
再石灰化が間に合わなくなってしまいます。このように脱灰と再石灰化のバランスが崩れてしまうと虫歯のリスクが上がってしまうので、飲食のとるタイミングはとても大切です。
必ずしも、甘いものが危険なわけではなく、飲食物をとるタイミングに気をつけましょう。
3 虫歯になりやすい食べ物・飲み物
食事をすると虫歯菌により酸が産生されるのですが、特に気をつけた方がいい飲食物についてご紹介します。
3−1 停滞性食品
よく甘いものは虫歯になりやすいと言われますが、それは細菌が糖をエサとして活発に活動し酸を産生するからです。
特に砂糖を含む食べ物だけではなく、歯に付着しやすい「停滞性食品」と言われるキャラメルやチョコレートなどの食べ物は、長時間お口の中に停滞してしまうことで、細菌にエサを与えてしまう状況ができてしまうため注意が必要です。
- 歯にくっつきやすい、詰まりやすいもの(キャラメル、チューイングキャンディ、ドライフルーツ)
- 砂糖がたくさん含まれるもの(アイスクリーム、チョコレート、ビスケット、ケーキ)
- 口の中に長時間残るもの(飴や砂糖入りのガム)
3−2 砂糖が入った飲み物
- スポーツドリンク、乳酸菌飲料、砂糖入りのコーヒー、砂糖入りのジュース、果物ジュースなど
実は、ジュースにはお菓子以上の砂糖が含まれてるものもたくさんあります
飲み物は液体のため歯と歯の間に入り込みやすいですし、何度もちょっとずつ飲むので食べ物に比べて虫歯リスクが高くなります。
スポーツをされている方はスポーツ中にドリンクを飲まれる方も多いと思います。
水分補給はもちろん大事ですが、時間をかけて何度も飲むような飲み物は要注意です!
果物100%ジュースでは、果物は大丈夫と思っている方も多くいらっしゃいますが
実は、果物には果糖という糖分が含まれており100mlあたりスティックシュガー3本分と言われてるぐらいの糖分が含まれています。
3−3 酸性の飲食物
酸性の飲食物を摂ることで一気に口腔内が酸性に傾いてしまい歯が溶けやすくなってしまいます。
- 炭酸飲料
- ワイン
- レモン、オレンジなどの柑橘類
特に酸性で砂糖が入っているものは要注意です。
酸で歯が溶かされる+砂糖を摂取することで細菌が酸を産生してしまうので、2つの「酸」により、より速いスピードで歯が溶けてしまうリスクが高くなってしまいます。
4 虫歯になりにくい・虫歯を予防する食べ物
糖分が少なく、口に中に残りにくい、歯にくっつきにくものは比較的虫歯になりにくいと言えます。
なので、どうしても間食をしたい場合は、そういった飲食物を選ぶといいでしょう。
また噛む必要のある食べ物は唾液の分泌が促されるので口腔内の汚れを洗い流したり、再石灰化を促してくれるので虫歯リスクの軽減へと繋がります。
4−1 カルシウムが含まれるもの
カルシウムは歯を構成する象牙質の主要な成分のため歯にも身体にも必要な成分です
- 魚介類、チーズ・無糖ヨーグルトなどの乳製品、納豆、木綿豆腐、アーモンドなど
※加糖ヨーグルトだと砂糖が含まれているためお気をつけください。
4−2 ビタミンAが含まれるもの
ビタミンAは歯のエナメル質・象牙質の形成に関わります。
さらにミネラルの一種であるカルシウムは単体で摂るよりもビタミンも合わせて摂ることで
カルシウムの吸収を助けてくれる役割があります。
- チーズ、ほうれん草、人参、かぼちゃ、春菊
4−3 フッ素が含まれる食べ物
フッ素は虫歯予防のために歯医者で使われたり、歯磨き粉にも含まれているものが多く、再石灰化を助けてくれる役割があります
実はフッ素は自然の食べ物にも含まれています。
- 緑茶、紅茶、牛肉、
5 まとめ
虫歯の原因は一つではないため、それぞれの口腔内にあった予防方法をを見つける必要があります。
ただ歯磨きをしていれば虫歯にならないというわけではなく、生活習慣も虫歯のリスクに大きく関係しています。
そのため、西村歯科心斎橋診療所ではそれぞれ生活習慣や虫歯のリスクも異なるため、その人に合った生活習慣のアドバイスもさせていただいております。
それぞれに合った予防法を見つけ、しっかりと予防をし、虫歯にならない口腔内を一緒に目指しましょう。