2025.07.07Newコラム
仮歯の重要性について

大阪市中央区心斎橋にある西村歯科、院長の秦です。
歯医者で補綴冠(被せ物)を装着する前に見た目や、噛み合わせを考慮して仮の歯を装着することがあります。
当院でも治療期間中に患者さんがお困りにならないように出来るだけ仮歯を装着することにしています。
仮歯は見た目は最終の被せ物ののように見える事もありますし、しっかり作成すれば審美的にも問題なく、食事も摂ることができます。
しかし、最終的な被せ物と違い長期間使用することはできません。
仮歯の素材は削ったり、盛り上げたり形態を容易に変えることができるような素材(常温重合レジン)で作成されています。
そのため材質は劣化しやすく、割れて”取れる”こともあります。
また、仮歯を患者さんの歯に装着するために使用している接着剤(セメント)は、歯医者さんが治療に際して外せるような”仮の接着剤”で装着されている事も仮歯が”取れる”理由になります。
ではそんな割れたり取れることのある仮歯をなぜ使うのかをこのコラムでご説明したいと思います。
仮歯は歯科専門用語でテンポラリークラウン(temporary crwon )=暫間被覆冠と言います。
言葉の通り暫間的に、しばらくの間使用する被せ物という意味です。
歯科医師になりたての頃はその言葉通り、最終補綴冠が出来るまでのしばらくの間使用するものと考えていました。
つまり5日から2週間程の使用期間であると考えていました。
そのため仮歯はすぐ外せるもので、装着することへの意味をよく理解していませんでした。
目次
1、仮歯の重要性
①最終補綴冠を装着するまで、歯(支台歯)を守る。

この文章を書いたときに学生時代のテストを思い出しました。
テンポラリークラウンとは暫間的に支台歯(被せる歯)を守るものである。◯or✖️か?
歯科治療に対する知識が全くない低学年時のテストだったと思います。
友人が治療中の歯を噛んで折れないようにするから◯だ!と教えてくれました。
答えは◯なのですが、今思えば補綴をする予定の歯が少し噛んだからといって折れてしまうくなら最終的な被せ物を装着しても噛んで痛かったり、早期に折れることが考えられるので”抜歯適応な歯(抜かないといけない歯)”じゃないかと思ってしまします。
支台歯を保護することには間違いないことなのですが、神経がある歯の場合削ったままで仮歯を入れないと痛くて食事ができません。
冷たいものも温かいものも滲みますので痛みが出ますし、場合によってはその刺激で歯の神経が失活(神経が死んでしまうこと)してしまいます。
仮歯は適切に装着すると、しみることなく歯を保護してくれます。
②最終補綴間を装着するまで、歯(支台歯)が動かないように保定してくれます。
歯医者で被せ物の型取り(歯科用語で印象と言います。)をして数日後、被せ物を装着するときに噛み合わせが合わずに、調整が多かったり、被せ物が上手く入らず調整に時間がかかることがあります。
※当院ではあまりそういった事はありません。
なぜ調整に時間がかかるのかと言いますと、支台歯や周辺の歯、噛み合う歯の位置が変わっていることが原因としてあります。
当院ではほとんどの場合、型取りをした後には仮歯を装着します。
そのことで歯の移動(左右、前後、上方向に移動する可能性があります)を防ぎます。
そうすることで調整も少なくなり、患者さんの時間的負担も軽減することができます。
また調整が少ないと予約時間に余裕が出る分、精密な噛み合わせの調整ができ違和感のない被せ物を装着することができます。
当院では被せ物の調整する時間が”0”になることも珍しくはありません。
質の高い歯科医療を提供するためには細部までこだわります。
③歯肉の炎症をコントロールする。
仮歯を装着していないと歯ブラシを適切に当たらず、プラーク(歯垢)が停滞しやすくなります。
支台歯周りの歯肉の形も安定せず、被せ物ができたときにしっかりと接着できないこともあります。
では”仮歯をつけてればいい!”のかと申しますと、仮歯が支台歯に適合し、歯の携帯が良くないと余計にプラークが付きやすくなります。
当院では仮歯ですが、質の高い治療の一部として捉えて治療をいたします。
④審美的(見た目)を補う。

前歯に歯がないと恥ずかしくて人に会えないですよね。
いくら治療中だとしても見た目は非常に重要です。
当院では前歯だけでなく、臼歯でも患者さんが希望されれば、審美性を考え仮歯を装着し治療にあたります。
2、仮歯の耐久期間はどれくらいなのか?
前述しましたが歯科医になりたての頃は2週間くらいと考えていましたが、現在はと言いますと、、、数ヶ月間利用できると考えています。
と言うのは、全顎的な治療をする場合には3ヶ月以上仮歯を使用することがあります。
もちろん噛み合わせなので個人差はありますが、それくらいは割れずに使用できます。
ただ、仮歯は外れたり、割れたりしなければ大丈夫と思われがちなのですが、仮歯の中で自分の歯が虫歯になっておりことが多くあります。
もちろん継続的に治療に来院されている場合はチェックしますので虫歯になっていることはほとんどありませんが仮歯を装着後に未来院になり長期に使用している場合のほとんどが虫歯にいます。
仮歯を適合よく装着したとしても長期に来院されずに支台歯が虫歯になってしまった場合、以前のような治療計画では無理になり、さらに治療にかかる時間と費用が多くなるため、仮歯のまま治療を中断することは絶対してはいけません。
また、長く使用した仮歯は唾液などを吸水し、材料が劣化し修理することは非常に困難です。
酷いのは材料が劣化し、調整するために削ると物凄い悪臭がしますので歯科医師としてはやりたくない処置でもあります。
3、仮歯が取れたらどんなことが起きるのか?
前述のように仮歯には非常に重要な役割がございます。
でも確かに暫間的にしばらく使うだけの場合もあります。
基本的には仮歯が取れたら可能であれば当日か次の日に歯医者に行ってつけてもらうことをお勧めします。
もし、次の予約が1〜2日後であれば問題はありません。
歯科医院に連絡してはずれたことを伝え、主治医の判断を聞いてください。
でも複数の仮歯が取れた場合は違います。
必ず歯科医院に連絡し、早く付け直すことをお勧めします。
噛み合わせが変わってしまって、簡単な処置で済まなくなることになります。
では1本の仮歯が外れてそのままにしていたらどうなるのでしょうか?
一番の問題は歯が動いて作成した”被せ物が入らない。”ことです。
作成した被せ物が入らなければ、再度支台歯の形を整え、型取りをし、模型を作成し、歯科技工士が一から再作成し、やっと新たな被せ物が出来上がります。
患者さんにとっても時間がかかるなどデメリットも多く、歯医者側にも再度型取り、補綴作成費、時間などのコストもかかり、技工士さんの中には再度技工料金の請求することができず、持ち出しになることもございます。
いち歯医者としては、仮歯が取れたらまず主治医の判断を聞くことをお願いいたします。
4、でもすぐ仮歯が取れる!

仮歯は適切に装着すると取れてしまうことはあまりありません。
すぐに取れてしまう理由はいくつかあります。
仮歯がすぐ取れてしまう理由
①仮歯と支台歯がフィット(適合)していない。
仮歯とつけるセメントは硬いものではありませんので、仮歯と歯の適合はマストです。
②支台歯となる自分の歯が短いや小さい。
そもそも対象の歯が小さいと引っ付く面積が小さいので取れやすくなります。
③奥の臼歯がない場合の前歯の仮歯。
奥歯がなくて噛めない場合、前歯に仮歯を入れても対合する歯に突き上げられ取れてしまう、もしくは割れてしまいます。(最終的な被せ物も同様です)
④噛み合わせが良くない。
歯科医師として一番難解なのが噛み合わせです。
多くの患者さんは問題ないのですが、稀に噛む位置が不安定な患者さんがいらっしゃいます。
日中の噛み合わせと夜間の食いしばり、歯軋りの位置が全く違う方は非常に難しく、仮歯が取れやすくなります。
まとめ
仮歯はしばらくの間使用する物から、数ヶ月使用することもありますが、歯の治療に置いて重要な役割があります。
そのため仮歯が取れたどうしよう?と考えている人は躊躇せず、まずは担当歯科医師と相談してください。