医療法人 西村歯科心斎橋診療所

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2024.06.21コラム

インプラントがぐらぐらする、カタつく場合

インプラントの構造図

インプラント治療は良い治療ではありますが、何も問題なく20年以上使用している方もいらっしゃれば、数年でトラブルが起きる方もいらっしゃいます。
インプラントがぐらぐらする時に、何が起きているのでしょうか。また、インプラントの歯がカタつく時には何が起きているのでしょうか。
このコラムではこのようなトラブルが起きたときに何が起きていて、どう対応するのがいいのかを記したいと思います。

1、インプラントがぐらぐらする。

①インプラント周囲炎
②過剰な力がかかって骨結合を失う。
③何らかの理由で骨結合していなかった。

2、インプラントがカタつく。

①インプラント体の破折
②アバットメントスクリューの破折
③補綴スクリューの破折

1、インプラントがぐらぐらする。

近代インプラントは顎の骨と直接結合(osseointegration)している状態です。ので”ぐらぐら”することは異常が起きている状態です。

顎の骨と直接結合しているインプラント

簡単に申し上げますと、”ぐらぐら”しているのは骨との結合が失われてしまった状態です。そのような状態になった時には、早期に対応しないとさらに多くの骨を失ってしまいます。
つまりインプラント体を除去する必要があります。ではなぜそうなっていますのでしょうか?

①インプラント周囲炎

インプラントはチタン、金属なので虫歯にはなりませんが、歯周病にはなります。インプラント周囲炎とはインプラントの周りの骨が吸収(溶けて無くなっているような)してしまう疾患です。
インプラント周囲の骨がある程度無くなってしまうと、インプラントを支えることができず、”ぐらぐら”として、最終的には自然と取れてしまいます。そこまで進行してしまいますと、多くの骨を失ってしまいます。
失った骨はGBR法(コラムの”インプラント治療をしたいけど骨がない場合”を参考にしてください。)などで再生することもでき、再びインプラント治療を選択することもできます。

②過剰な力がかかって骨結合を失う。

これは個人的な見解ですが、インプラントも過剰な力(咬む力、歯軋り、食いしばりなど)がかかると骨との結合を失われることがあると思います。
先ほどのインプラント周囲炎は細菌による炎症ですのでインプラント周囲の骨が多く失われますが、過剰な力で骨結合を失った場合はインプラント体の一回り分の骨しか無くなりません。
私はそれを”骨結合が剥がれた”と患者さんにご説明することがあります。なので失ったインプラントより一つ太い外径のインプラントを入れることができれば、再び咬むことができるようになります。

③何らかの理由で骨結合していなかった。

インプラント手術後、最も失敗(インプラントの脱落)が多い時期が1年以内であると以前からよく言われています。私も今まで2例経験しました。(その内1例は親族、、、)
現在のインプラントのほとんどは骨と結合します。その確率は初期のインプラントより高い確率で、理由はインプラント体の改良にあります。
つまり、骨結合が得やすくなりました。骨結合がしやすくなったとしても、咬む力に耐えることができるくらい骨結合していなければ、早期に脱落することがあります。
それが1年以内に起こる可能性が高いのです。早期にインプラントが脱落した場合も骨の吸収は少なく、少し幅の大きいインプラントを使用すれば、対応することができます。

2、インプラントがカタつく。

インプラントの基本的な構造

インプラントの基本的な構造は骨と結合するインプラント体(以前はフィクスチャーと呼ばれていました。)、歯冠になる上部構造、インプラント体と上部構造との間のアバットメントの3つに分けることができます。
また、アバットメントとインプラント体をネジで止めるアバットメントスクリュー(ネジ)、アバットメントと上部構造をつなげる補綴スクリュー(ネジ)を合わせると5つのコンポーネント(部品)で構成されています。それぞれのコンポーネントでトラブルが起きていると”インプラントがカタつく”ことになります。

①インプラント体の破折

骨と結合する純チタンは決して硬い金属ではありません。非常に稀なことですが、インプラント体自体が折れる(破折)することがあります。
インプラント体が破損している写真

インプラント体が破損している写真

上部冠に強大な力がかかることで起きます。初期のインプラントは純チタンであったため折れることがありましたので、現在使用されているインプラントはジルコニウムなどを含ませて、強度を上げるため一部合金としてインプラント体は製造されています。
そのため20年以上前のようにインプラント体の破折は非常に稀になりました。インプラント体が破折すると撤去する必要があります。インプラント除去専用の器具がありますが、その器具で除去できない場合は周りの骨を一掃削り除去することがあります。
インプラント除去の様子 インプラント除去の様子

当院では他に非常に薄い器具を使用するピエゾーサージェリーとマイクロスコープ(手術用顕微鏡)を使用して除去するため、安全に施術できます。

②アバットメントスクリューの破折

インプラントのイメージ図

インプラント体とアバットメントを繋げているスクリュー(ネジ)が折れてしまうことです。アバットメントスクリューが緩んでいることに気づかず使用していると破折したり、連結された上部冠に”しなり”のような強い力がかかるとスクリューが破断します。
折れたスクリューはインプラント体の中に入っていることが多いので、細い器具で破断面に引っ掛けて逆回転させて取り出します。無事取り出すことができれば、新しいアバットメントスクリューを使って再び上部冠をインプラントと締結させて使用できます。
しかしここで注意事項があります。アバットメントスクリューが再び緩んできたり、破折する場合はインプラント体が折れたり骨吸収する可能性が高くなるため、上部冠の再製作も視野に入れてメンテナンスしていきます。

③補綴スクリューの破折

アバットメントと上部冠を繋げているスクリュー(ネジ)が折れてしまうことです。アバットメントスクリューが折れる原因とよく似た理由で起きます。
折れたネジを取り出して補綴スクリューを新しいものにして対応することもありますが、取り出せない場合はアバットメントを新しいものに変更して対応することもあります。
ここで疑問が起きます。インプラントを5つのコンポーネントに分けているから、それぞれでトラブルが起きるのではないか?と。
実はこれは骨に埋まったインプラント体を保護するためのセイフティー機構としてブローネマルク先生が考えられたことです。
インプラント体自体に問題が起きると患者さんが再手術をしないといけなくて負担がかかる、インプラント治療は人間が人間(生体)にする処置であるため全てが完璧になることは無い、インプラントは成功すれば長くお口の中で機能できるため長期を見据えて対応可能にするべきだと言う考えから5つのコンポーネントに分かれていると聞いたことがあります。
私は20年以上インプラント治療に携わってきました。医療法人西村歯科歯科としては30年以上になります。
その歴史と同じ期間インプラントを使用されている患者さんもいらっしゃいます。当院ではインプラントの長期経過した患者さんが多くいらっしゃいます。医療用語で申しますと、長期経過症例がたくさんございます。
興味深いのは、治療した当時と変わらず姿勢が良い方にはあまり問題が起きないことです。考えることは複雑ではありますが、姿勢が変わると頭の位置が変化します。頭の位置が変化すると、首の筋肉も変化します。
頭蓋骨と下顎には首や肩からの筋肉と多くつながっていますので、姿勢が変化すると噛み合わせにも変化が起きます。全ての歯が自分の歯(天然歯)であればその変化についていくことができますが、人工的な歯はそうもいきません。
そんな理由もあり、インプラントの構造には様々なセイフティー機構が備わっており、当院の歯科医師、歯科衛生士はメンテナンスの中で変化を読み取り対応しております。

まとめ

前述しましたトラブルは定期的に健診をしていると発見できる可能性が高いです。
当院ではインプラント治療をされた方も全ての歯がある方も、予防メンテナンスを受けていただくことで健康を長く維持できるように心がけております。


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