2025.01.29Newコラム
歯磨き中の出血は危険信号?歯茎トラブルの原因と予防法
西村歯科心斎橋診療所で勤務しております歯科衛生士の井上です。
今回は歯磨きをした時の出血の原因や対処法についてご紹介させていただきます。
歯磨きをした時に血が出たことはありませんか?おそらく誰もが一度は経験したことがあるのではないでしょうか。血が出ると「歯が悪くなったのかな」「歯茎が傷んでるのかな」と不安になりますよね。
そんな時の対処法と原因についてお話しさせていただきます。
目次
なぜ歯茎から出血してしまうのか
健康な歯茎であれば歯磨きをして出血することはほとんどありません。なので出血するということは歯茎に何らかの問題がある可能性があります。痛みがないからといってそのまま放置せず一度歯医者さんに行くことをオススメします。
出血してしまう原因
歯肉炎
歯肉炎は歯周病の初期段階の状態で名前の通り歯肉(歯茎)に炎症がある状態を表します。原因は主に、不十分なブラッシングによる歯垢(プラーク)の蓄積です。歯垢は細菌が蓄積されてできており、この細菌によって歯茎が炎症を起こすことで、赤く腫れたり出血を引き起こします。
ですが、歯肉炎の状態であれば歯茎にのみ炎症が起きている状態のため腫れや出血の原因となるプラークをしっかりと取り除くことにより症状が改善されることが多いです。
そのため、歯肉炎を引き起こさないためにも日々の適切なセルフケアが大切になってきます。
歯周病
歯周病は歯肉炎が進行した状態です。歯肉炎は歯茎にのみ炎症が起きている状態ですが、歯周病になると歯茎だけでなく骨にまで炎症が進んでしまいます。
歯周病の初期段階であれば歯茎が腫れたり出血する程度ですが、歯周病が進行するにつれて骨が大きく無くなることで歯がグラグラしたり、最悪の場合は歯を失ってしまうこともあります。
初期の段階で歯医者さんへ行って治療をしなければどんどんと進行してしまうため注意が必要です。
ブラッシングの強さ
歯磨きをする時に力を入れすぎてしまっていませんか?ブラッシングが強いことで歯茎を傷つけてしまい出血の原因になってしまうことがあります。「綺麗にしっかりと磨こう」と思ってる人ほど一生懸命になって力が入りすぎてるかもしれません。
強く歯ブラシを当ててゴシゴシと磨くほうが汚れをしっかり落とせるような気がしますが、実は逆で、歯ブラシは細かく優しく磨く方がプラークの除去率は高くなります。
ブラッシングは毎日のケアに欠かせないものですが、力強く磨いてしまうと歯茎にダメージを与えてしまい、傷をつけてしまいます。正しいブラッシング方法を知りたい方は歯医者さんでぜひ歯磨き指導を受けていただくことをおすすめします。
フロスや歯間ブラシを正しく使う
歯磨きだけでは歯垢(プラーク)は取り切れないって知っていましたか?歯と歯の間は歯ブラシが届かないため、歯ブラシだけだと約60%しか汚れは落とせません。
そのため歯間に付着した汚れをそのまま放置していると、歯茎が炎症を起こし出血の原因となります。そのため歯間の歯垢(プラーク)を取るにはフロスが必須です。
ですが、フロスの通し方には注意点があります。
フロスを使用する際に、フロスを歯茎に強く入れすぎたり、パチンと勢いよく押し込んだりしていませんか?強く押し込みすぎることにより、歯茎が傷つき出血することがあるため注意が必要です。歯間ブラシにも使用するポイントがあります。細い隙間に太いサイズを無理矢理入れてしまうと歯茎が傷ついて出血してしまいます。逆に広い隙間に細すぎるサイズの歯間ブラシを入れるのは歯茎は傷つきませんが、歯垢(プラーク)は取りきれません。そのため歯間に合ったサイズの歯間ブラシを選択する必要があります。
正しく使用して磨き残しを減らしましょう!
ホルモンバランスの変化
女性の場合、ホルモンバランスの変化が原因で歯茎から出血しやすくなることがあります。これはエストロゲンやプロゲステロンといった女性ホルモンが歯茎の血流や代謝に影響を与えるからです。女性ホルモンの分泌はライフステージよって大きく変化するためその時々によってのケアが必要です。
女性ホルモンが増え始める思春期!
思春期になると成長のためにホルモンに変化が生じ、エストロゲンやプロゲステロンといった女性ホルモンが増え始めます。このホルモンの増加により、歯茎の血流量が増え代謝が活発になります。その結果、新陳代謝が活発になりプラークなどの刺激物への反応が高くなり歯茎が腫れて出血しやすくなります。
女性ホルモンの変化が大きい妊娠・出産!
・女性ホルモンの増加 妊娠すると女性ホルモンは急激に増加します。女性ホルモンが多いと歯周病菌も増加するため、歯茎が腫れたり出血しやすくなります。
・唾液の分泌量低下 さらに唾液量の分泌が減少するのも特徴です。唾液には汚れを洗い流してくれる自浄作用というものがあります。ですが唾液量が減少することでその自浄作用がうまく作用されず汚れが停滞してしまいます。それにより歯茎が腫れ出血を引き起こすことがあります。
・妊娠中のつわり つわりで気分が悪く歯を磨けなくなってしまうことにより口腔内の環境が悪化してしまい、歯茎の腫れや出血に繋がります。
更年期による女性ホルモンの低下
更年期は閉経に伴い女性ホルモンの分泌量が低下します。女性ホルモンの一種であるエストロゲンは骨密度を防ぐ大切なホルモンです。このエストロゲンの減少により歯を支える歯槽骨という骨が脆くなり歯周病のリスクが高くなります。歯周病になると歯茎や骨に炎症が起きるため歯茎の腫れや出血が引き起こされます。
さらに唾液の分泌量が低下してしまうので、唾液の自浄作用が働かず汚れが溜まりやすくなってしまいます。そのため歯茎に炎症が起こり出血を引き起こします。
このような身体の変化から思春期・妊娠中〜出産・更年期は口腔内の環境が悪化しやすいです。そのためこの時期は特に丁寧なブラッシングを心がけましょう!
生活習慣
不規則な生活習慣で歯茎からの出血が引き起こされることがあります。根本的な原因は免疫力の低下によるものです。免疫力が低下することによって細菌への抵抗力を失い、炎症を引き起こすことで出血へと繋がります。
睡眠不足やストレスなどの生活習慣の乱れは免疫力の低下を引き起こす原因となり、歯茎からの出血を引き起こします。
生活習慣の乱れによる歯茎の出血を防ぐためには規則正しい生活を心がけることが大切です。生活習慣を整え免疫力も高めていきましょう。
全身疾患
高血圧、糖尿病、白血病といった全身疾患が原因で歯茎からの出血がみられる場合もあります。出血が長く続くようであれば検査をお勧めします。
出血した時は歯磨きをしない方がいい?
「血が出たから歯磨きしないほうがいいと思った」「血が出たのが怖くて磨くのを辞めた」という方がいますがそれは逆です。
出血をしている箇所はプラークや歯石が蓄積され歯茎に炎症を引き起こしている可能性が高いので歯磨きをやめてしまうとさらに汚れが蓄積し、炎症を悪化させてしまいます。
そのため歯磨き中の痛みがない出血の場合はプラークの蓄積が原因の可能性が高いため歯磨きを丁寧に行うことで2、3日もすれば出血が治まりま流ことが多いです。
それでも出血が治らなかったり、歯ブラシを当てて痛みがある場合は歯茎が傷ついていたりそれ以外の何らかの原因があるかもしれないので一度歯医者さんで相談してみましょう。
出血がある場合の対処方法
歯をしっかりと磨く
プラークが原因で出血している場合はセルフケアで改善されることがほとんどです。適切なブラッシングとフロスや歯間ブラシによる歯間部のケアをしっかりと行いましょう。
しかし誤ったセルフケアの方法で出血を悪化させてしまう恐れもあるため注意が必要です。
歯医者さんでクリーニングをしてもらう
プラークが原因による出血であればしっかりと磨くことにより出血は落ち着いてきますがプラークが固まって歯石になってしまうとご自身では取ることができないため、炎症は治まりません。
このような場合は歯医者さんへ行き、歯石取りをしてもらわなければなりません。
まとめ
歯茎からの出血の最も割合が高いものは歯肉炎・歯周病です。これらの原因は磨き残し(プラーク=細菌の塊)のため、細菌の塊が歯に残ったままになることで歯茎に炎症が及び歯肉炎や歯周病になってしまい、腫れたり出血してしまいます。
そのため出血するからといって歯磨きをやめてしまうと、歯肉炎が悪化したり、歯周病が進行したりする恐れがあり炎症は一向に治まりません。痛みのない出血の場合はしっかりと歯を磨き炎症を抑えることで出血も治まってきます。
出血の原因によっては治療が必要なケースや出血を放っておくことで炎症を悪化させてしまう場合もあります。ご自身での判断や処置では限界があるため症状が酷くなる前にまずは歯医者さんで正しい診断をしてもらいましょう。