2024.12.25Newコラム
歯の寿命を延ばす秘訣!予防メンテナンスの効果と重要性について
西村歯科心斎橋診療所で勤務しております歯科衛生士の井上です。今回は予防についてのお話をさせていただきます。
歯が痛くなったり、歯茎から出血していたり、歯がグラグラしていたり歯医者に行く理由は人それぞれ違うと思います。
ただこれらに共通することは「何か症状が出てから通う」ということです。虫歯や歯周病はそのまま放置していても自然に治ることはありません。
むしろ放置しておくことでどんどん病状が進行・悪化し、手遅れになってしまうこともあります。たとえしっかりと治療をしたとしても、治療前の元の健康な歯に戻るということもありません。
一度削ってしまうと歯の寿命は縮まってしまうと言っても過言ではありません。
また、穴が開く前の初期段階の虫歯であれば、そこまでに至った原因解決し、お口の中の環境を整えることで虫歯の進行を止めることができるかもしれません。
今ある自分の歯を健康な状態で保つためには「予防」がとても大切です。お口の健康を守るためにも一緒に「予防」始めませんか?
目次
1 当院では
当院では従来の歯科治療とは異なり、虫歯を見つけたらまず削って詰めるのではなく、根本的な原因を見つけ、治療を行うMTM(メディカル・トリートメント・モデル)を採用しています。
このシステムは現在のお口の中の状況から虫歯や歯周病などの原因やご自身のリスクを知り一人一人に合わせた予防プログラムを立てるところから始まります。
そしてリスクを下げるための治療を行なった後、定期的なメンテナンスを行い、生涯ご自身の歯でお過ごしいただけるようにサポートさせていただきます。
2 MTMとは
MTMとはメディカル・トリートメント・モデルの略称で
医科の観点を取り入れ、虫歯や歯周病があったらすぐ治療するのではなく、まず原因を知り、各個人の抱えている虫歯や歯周病のリスクを評価することで、一人一人のお口の中の状態に合わせた予防プログラムを立案します。
虫歯や歯周病はただ歯磨きをしていれば防げる病気ではなく、考えられる原因はたくさんあり、一人一人異なるため誰かと同じようにケアしていても予防はできません。
それぞれの抱えているリスクを知ることで一人一人に合った予防プログラムを立てることができます。
日本人が歯を失っている原因の約7割は「虫歯」と「歯周病」です。
一度失った歯は元に戻すことができません。
この歯を失う原因は、虫歯や歯周病のリスクコントロールができると未然に防ぐことができます。
そして、この予防メンテナンスが将来のお口の中の健康に大きく関係します。
痛みなど何か症状が出てから治療するのではなく、虫歯や歯周病にならないようにお口の環境を整え、今ある自分の歯を長く持たせれるようにするためにも「予防」がとても大切です。
3 従来の歯科治療
従来の歯科治療では治療が中心で、痛みや何か症状や問題がある箇所のみを治療、もしくは応急処置を行う→一旦症状は落ち着くのでまた悪くなるまで放置→再度問題が発生すれば再度治療する
という流れになっており治療の繰り返しになっていました。
この流れだと、患者さんの自覚症状が出現したり、病状が悪化してからの治療となってしまうため、負の連鎖が起きてしまいます。
悪化してしまった歯は治療の選択肢も限られてしまいますし、大切な歯を失う確率も高くなってしまいます。
このように症状がある箇所だけを治療するような「その場しのぎの治療」だと一旦は応急処置や治療で症状は治りますが、根本的な原因が解決されていないため症状が再発してしまう可能性があります。
この絵を見てどこかおかしな点に気づきませんか?
水道の蛇口からお水が出たままなのに床を一生懸命拭いている人がいます。どれだけ床を拭いていても蛇口から出るお水を止めない限り、永遠に床を拭き続けないといけません。
この状態をお口の中に置き換えて考えてみてください。
・蛇口から出る→虫歯や歯周病の原因となる細菌、磨き残し、食生活、不適合な被せ物
・床に溢れているお水→治療
一生懸命治療をしていても(床の水を拭いていても)、根本的な原因が改善されていない(蛇口の水を止めない)ため、また虫歯ができて(床は水浸しのまま)治療をして…と治療の繰り返しになってしまいます。
MTMは虫歯や歯周病の原因をできる限り取り除き、治療の繰り返しにならないことを目的としています。
4 本来あるべき歯科治療の流れ
本来あるべき歯科治療の流れは「予防を中心」とした治療です。
何も問題がなくても定期的に定期検診を受けていれば健康なお口の中の環境を保つことができますし、問題が見つかったとしても早期発見・早期治療に繋がります。
この予防を中心とした流れだと健康な自分の歯をずっと使い続けることができ、今ある歯を長持ちさせることができます。
5 当院の初診時の流れ
①初診、カウンセリング
パノラマ、口腔内写真5枚法を撮影し、資料をもとに患者さんの主訴などをしっかりとお話をお伺いします。症状が強く応急処置が必要な場合は応急処置を行いますが、まずは口腔内の環境を整えるところから始めることをご説明しMTMの流れに沿って進めていきます。
②資料採得
(デンタル12枚法・口腔内写真・姿勢写真・顔貌写真)歯周検査・クリーニング・生活習慣の問診など)
まずお口の状態を把握するために細かな検査をします。
初診時に撮影したパノラマエックス線写真では大まかな情報しか得ることができないためもう少し細かい情報を知るためにも細かな検査・資料採得をしていきます。
撮らせていただいた資料をもとに今後の治療や予防の計画を先生と歯科衛生士で考えます。
問診では普段の食生活やブラッシングの状況なども細かく伺います。
食生活は事前に食生活アンケートというものを患者さんにお渡しし、普段どのような食生活を送っているのを書いていただきます。
食事の内容・摂り方も予防をしていくためにはとても重要な項目となるため、書いていただいたアンケートをもとに注意点や改善点があればご提案します。
食生活の他にも歯磨きの状況(歯磨きの回数、使用している歯磨き粉、歯ブラシ以外に使ってるものなど)についても問診をとっていきます。
虫歯や歯周病を防ぐために、より効果的な歯磨きの仕方をお伝えします。
③リスク説明
資料採得でとった資料や検査の結果を患者さんに見てもらいながら現状の説明をします。まずは患者さんがご自身の口腔内の状態について知っていただくところから始めます。
自分のお口の中の状況って意外と知らない人が多いです。
「今あなたのお口の中には何本歯が生えていますか?」
「何本治療してる歯はありますか?」と聞かれてすぐに答えることはできますか?しっかりと予防をして行くためにもまずは今の自分のお口の中の状態を理解し把握する必要があります。
④初期治療
治療やメンテナンスに入る前にまずは口腔内の環境を整える必要があるため初期治療を行います。
初期治療とは虫歯や歯周病の原因である細菌の数を減少させることです。
磨き残しや歯石がたくさん付着している、歯茎が腫れている、出血が多いような細菌数の多い口腔内の状態だと環境が良くないため精密な治療をすることができません。
そのためまずは初期治療を行い口腔内の環境を整え、精度の高い治療ができるような土台作りをしていきます。
口腔内に多くの細菌がいる状態を改善せずに治療を行うということは、例え精密な良い治療をしても数年後には再発し再治療の繰り返しになってしまいます。
治療の繰り返しを防ぐためにも今現在、歯に痛みがあるなどの緊急性でない限り、歯を削る治療は原因が改善されてから行います。
「なぜ虫歯になるのか」「なぜ歯周病になるのか」しっかりと原因を突き止めることが重要です
⑤治療開始
しっかりとお口の環境が整ったら先生と歯科衛生士で立てた計画と今後の流れを説明・ご提案し、患者さんの同意があればその流れに基づいて進めていきます。
治療は必要最小限に行い、まだ削らなくても大丈夫な初期段階の虫歯に関してはそのまま経過観察とします。ただ削らなくても大丈夫というのはしっかりと「予防」ができていることが前提の上での話なので
そのまま放置しているともちろん虫歯は進行してしまいます。
初期治療で口腔内の環境が整ってもこの治療期間の間に再び環境が悪化する可能性があるためこの期間でのモチベーションの低下に注意が必要です。
⑥再評価・説明
全ての治療が終了後再評価を行います。
口腔内の状態をチェックし環境が良い状態をキープできているかを確認します。問題なければ定期的なメンテナンスへ移行します。
口腔内の環境が整ってようやく真の健康を作るスタートラインに立ちます。健康を維持するにはご自身でのセルフケアはもちろん、プロによる定期的なプロフェッショナルケアの両方が大切です。
どうして虫歯や歯周病になってしまうのかを知りそれぞれのリスクを理解した上で継続的なケアをすることが将来の健康につながります。
5 まとめ
今は「歯を治療するために歯医者に行く」から「歯を予防するために歯医者に行く」という時代に変わりつつあります。
悪くなった歯を治療することはもちろん大切です。
ですが一度治療で削ってしまった歯は元には戻りませんし、虫歯や歯周病の根本的な原因がわからないと永遠に治療の繰り返しになってしまいます。
この削って、詰めての繰り返しの「負のループ」だと健康な歯がどんどん少なくなってしまいます。
人それぞれ抱えているリスクは違うため、これからは健康な歯を失わないようにご自身のリスクを知り、未来の健康を一緒に築きましょう!