2024.12.04コラム
ブリッジがいいのかインプラントがいいのか?
目次
インプラントとブリッジはどっちがいいのか?
インプラント治療(骨結合インプラント)が存在しない頃は歯を抜いた後の固定性の治療はブリッジでの治療一択だった時代が長く存在しました。
現在でもインプラント治療を取り入れていない歯科医院で治療する場合はブリッジの選択になります。
そのような時代では白いセラミックのブリッジにするか金属のブリッジにするかの選択肢を選ぶだけでありました。
どちらにしても隣接する歯を削るのには変わりませんでしたが、現在はインプラント治療の選択肢も選ぶことができます。
ではブリッジとインプラントではどちらが治療の選択として正しいのでしょうか?
歯医者さんに説明を受けてもよくわからないことがありますよね。
このコラムではブリッジとインプラントをどちらを選択するかのヒントになるように、実際あったケースを元にご説明したいと思います。
上顎中切歯(上の真ん中の歯)1本がない場合 編
インプラントvsブリッジは50対50!
えっ?答えになってないですね。
これからご説明いたします。
上顎中切歯は多くの場合、機能(噛める)より審美(見た目)が優先されます。
審美的に治療ができるのはどっちかが選ぶ基準になります。
ケース1 両隣りの歯が全く治療がされていない歯で形と色に問題がない。
インプラントの選択がいいと思います。
注意点
インプラントを審美的に治療するためには、骨が十分にあるのか、隣の歯との歯肉のバランスが審美的に成功するかの大きな要因になります。
隣りの歯の形態によっては歯間乳頭に隙間が生じることがあります。
歯間乳頭に隙間が出る場合は隣りの歯をレジンやセラミックで形態を修正することが必要になる可能性があります。
1本の中切歯を審美的に治療することは非常に高い技術が必要です。
治療が成功するかは術前の診断で診断することができます。
ケース2 両隣りの歯が全く治療がされていない歯で形や色に問題がある。
ブリッジの選択がいい場合があります。
失われた歯だけを治療しても両隣りの歯や見える範囲の歯並び、色から見ると治療した歯だけがキレイに見えることになります。
前歯のブリッジと1本インプラントの10年経過に差はないといった文献もあります。
であれば両方の歯を削るリスクはありますが、全体的な審美的バランスを考えてブリッジを選択することも十分にあり得ます。
注意が必要なのはブリッジの支持にしようとしている歯の位置が悪ければ歯を多く削ることになり歯の神経を取らないといけないなどの処置が必要になります。
そのような場合には部分的な矯正で歯の位置を改善した後に治療することをおすすめします。
部分的な矯正で対応できない場合は全体的な矯正も必要になります。
矯正治療をしないとなるとインプラント治療の方がいいと思いますが、インプラントは矯正治療で位置を動かすことができないので、慎重に考えないといけません。
もちろんブリッジで治療することに抵抗がある方はインプラント治療を選択することも可能です。
ケース3 両隣りの歯がすでに治療がされていて歯の神経の処置(根管治療)がされていない。
小さな虫歯の治療歴だけで根管治療(歯の神経の治療)がされていない場合はインプラントを選択することが多くあります。
前述のケース3と同じようにお考えになり、治療を選択していただければと思います。
前歯インプラントの難易度は笑った時に歯肉がどれくらいみえるのか?も評価の基準になります。
笑った時に上唇が挙がり歯肉が見えるタイプをハイリップ、見えないタイプをローリップと言います。
ハイリップの方は歯肉の連続性が左右対称であるのかが見えやすいですので歯科治療では難易度の高い症例を言えますし、ローリップの方は普段の生活では見えないので歯肉の連続性は審美的に問題になることはなく、形態、色がマッチすると他人からは審美的に見えます。
ケース4 両隣りの歯がすでに治療がされていて歯の神経の処置(根管治療)がされている。
80%以上ブリッジを選択します。
理由は隣の歯が折れて抜歯になった場合を想定します。
神経がない歯は、神経がある歯と比べて歯根破折(歯の根っこが折れる)が起きるリスクが高くなります。
歯根破折が起きた場合、発見が遅れると歯の周りの骨(歯槽骨)を多く失います。
その影響は隣りにあるインプラントにも影響を与えることがあります。
インプラント周りの骨がなくなると審美的に許容できない状態になることが予想されますので、前歯の場合、既に根管治療がされている歯の間にインプラントを入れるのは慎重に考えないといけません。
現在の歯の状態ではブリッジで治療し、数年後ブリッジの歯に問題が出た時にインプラントをするという計画をすることがあります。
実際の症例
右上の前歯が歯根破折
隣の歯の状態を診断し、将来的に歯根破折が起きる可能性が高いので患者さんと相談し、保険診療内で治療することとしました。
抜歯して仮歯で様子を見ます。
将来的にインプラントが必要になることを予想し、抜歯したところに人工骨を入れています。
ブリッジ装着後3年で歯根破折が起きています。
現在はインプラント治療のため抜歯、骨造成を施術中。
西村歯科 心斎橋診療所では抜歯になる歯の状態、原因を知ることで他の歯がどうなるのかを推測し、5年後、10年後を考え治療計画を提案いたします。
インプラント治療に長く関わって来たからこそ出来る提案がございます。
ケース5 片方の歯だけすでに治療がされている。
実際のケースにてご説明します。
左上の補綴冠(差し歯)がぐらぐらしていると来院されました。
歯根が破折しているのが確認できます。
このケースでインプラン治療を選択した理由は前歯の擦り減っている形が前歯で歯軋りをしているからであると想像できたからです。
自分の歯(天然歯、治療をしていない歯)は歯軋りをしていてもバランス良く擦り減ってくれます。
でも作った歯(差し歯などの補綴冠)はそうではありません。
そのようなケースでブリッジを選択した場合、補綴冠のセラミックが欠けてしまうことがよく起きます。
審美的にも機能的(咀嚼、歯軋り)にも正解の形を見つけることができず治療期間が長くなったり、満足な結果が出ないこともあります。
であれば現在残っている歯の形を生かして1本の治療で済ますことが様々なリスクを回避できると考えました。
仮に隣の根管治療をされている歯が破折してきたとしても、十分な骨幅と歯肉の厚み、インプラントとの距離を確保できることを確認していますので、インプラント治療を選択した理由でもあります。
インプラント治療を選択するのかどうかでもっと重要なことがあります。
それは”年齢”です。
インプラント治療には年齢の上限はないと言われております。
実際、私が担当させていただきました患者さんで最高齢は89歳の女性です。
インプラントはしっかりと骨結合し、問題なく使用していただいております。
問題は若い人です。
インプラントは骨と結合するので骨が成長段階である成長期ではインプラントを使用するとはいたしません。
基本的には成人後にインプラント埋入手術をすることとしています。
しかしlifelong caraniofacial growth(成人後の起こる頭蓋顔面の成長)と言われる成人後でも顎の成長が起きる人がいらっしゃいます。
もし早い年齢でインプラント治療をした場合、自分の歯とインプラントに不調和が起きます。
自分の歯は成長と共に移動しますが、インプラントは移動しないため歯並びに段差が生じます。
現在”何歳からなら大丈夫”といった文献は存じ上げませんができれば当院では25歳以降を基準としています。
それまでの間は歯を削らない接着性ブリッジ(メリーランドブリッジ)で対応することをいたしております。
インプラント治療は適切に行えば長期に使用できる治療法です。
でも必ずしもインプラント治療が正解であることはありません。
西村歯科心斎橋診療所 Liccaインプラントセンターでは現在の状態を把握し、将来的に起こることを予測し、10年後20年後を考えた治療をご提供しております。
治療希望の方、治療相談をご希望される方はお電話やweb予約にてご予約をお願いいたしております。
今後はコラム”奥歯を失った場合”編も予定しております。