精密根管治療(マイクロエンド)Precise root canal treatments
根管治療
根管治療とは、虫歯が大きく歯の神経に感染が起きている場合に歯髄(歯の神経)をとる根管治療(抜髄処置)や、過去に根管治療をしていたところに細菌が再感染した場合に感染した起炎物質(歯髄の取り残しや古い根管充填材)を取り除く感染根管治療(再根管治療)を言います。外科的に感染した歯根部分を取り除くことを外科的根管治療と言います。
根管治療は歯を長く保存するために必要な大切な治療です。
根管治療をしないとどうなるのか?
感染が骨にまで進み、歯を抜かないと感染を止めることができません。
身体は皮膚や粘膜に覆われ細菌が直接身体に侵入できないようになっています。
内臓は骨によって守られ、骨や血管は皮膚に覆われています。
怪我をして傷口が膿むことがありますが、それは細菌が侵入して感染が起きることから始まります。
歯の場合は虫歯が進行し大きくなることで歯髄に細菌が侵入し感染が進みます。
歯髄に抵抗力があるうちは身体の免疫力で感染と闘いますが、止めどもない細菌の侵入から歯髄は活動を失います。
活動を失った歯髄には血液の供給もなく免疫力も失われます。
免疫細胞の影響を受けない根管の中ではさらなる細菌の侵入と感染が進行します。
その細菌の侵入は歯の周りの組織である骨に侵入していきます。
根管治療はこれらの細菌の侵入を止める非常に重要な治療です。
根管治療のメリット
- 感染を止め痛みを抑えることができます。
- 根管治療をすることで歯を抜かずに保存することができます。
- 再び痛みがなく噛むことができる。
根管治療のデメリット
- 歯髄がある歯と比べて歯根破折が起きやすい。
根管治療のプロセス
① | ② | ③ |
④ | ⑤ | ⑥ |
歯髄がある場合(抜髄処置)
①表面麻酔後に局所麻酔をします。
②虫歯を削り、できるだけ虫歯の部分を取り除きます。
③歯冠部歯髄を取り除きます。
④根管治療測定器やレントゲン撮影で根管の長さを測ります。
⑤適切な作業長を決定し、歯髄の除去と根管内を形成(削る)します。
⑥洗浄、消毒を繰り返し根管内を消毒、殺菌をします。
⑦根管充填(根管内とガッタパーチャポイントなどで封鎖)をします。
⑧支台築造(補綴冠を装着するためのコア)をします。
感染根管治療(再根管治療)の場合
①麻酔をすることがあります。必ず必要ではありません。
②補綴冠が装着されている場合は補綴冠を除去(削り取ります)します。
③虫歯になっている部分があれば取り除きます。
④根管治療測定器やレントゲン撮影で根管の長さを測ります。
⑤適切な作業長を決定し、感染物質を取り除き根管内を形成(削る)します。
⑥洗浄、消毒を繰り返し根管内を消毒、殺菌をします。
⑦根管充填(根管内とガッタパーチャポイントなどで封鎖)をします。
⑧支台築造(補綴冠を装着するためのコア)をします。
外科的根管治療
①表面麻酔後に浸潤麻酔をします。
②外科器具を使用し、歯肉を翻転させ感染した歯根を確認して切断、除去します。
③逆根管形成し、充填します。
④歯肉を縫合します。
根管治療を成功に導くためのポイント
- 根管内に細菌が侵入しないように治療をする。
- 歯髄をキレイに取り除く。
- 根管内を消毒する。
- 再び細菌が増えないように根管内を緊密に封鎖する。
- 根管内を削りすぎない。
- 補綴物(差し歯)は適合(フィット)が良いことが大切。
- 根管治療は根管内(歯の根っこの中)をいかにキレイにできるのかが成功の鍵となります。
しかし根管内は非常に複雑です。
実際の歯の標本(治癒の歯内療法から引用)です。
歯髄が網目状に複雑になっているのがわかります。
根管治療を難しくしている要因として根管の複雑性が挙げられます。
根管の形は歯によって、歯根によって、人によって、年齢によっても違います。
単純な形をしてる根管もあれば複雑に分岐した根管もあります。
再治療の場合は前の歯科医師の治療によりさらに複雑になっていることがあり、根管治療の難易度がさらに高くなります。
当院で行う根管治療成功のための精密根管治療5つのポイント
1、ラバーダム防湿をします。
ラバーダム防湿は治療する歯にゴムのマスクのようなものを装着し、治療中に唾液や口腔内の菌が根管内に侵入するのを防ぐのを目的としています。
メリット
- 治療中に感染を防ぐことができる。
デメリット
- 口呼吸の患者さんは息がしづらいことがある。
2、超弾性ニッケルチタンファイルを使用します。
歯根はまっすぐなものはありません。曲がっていたり、細かったり、円形でもなく楕円形であったり様々な形をしています。形状記憶合金であるニッケルチタンファイルを使って複雑な根管内の感染した神経や汚れを取り除きます。
メリット
- 様々に湾曲した根管を形成できるようになり、歯を大きく削らなくてもいい。(歯根破折のリスクを下げることができる。)
デメリット
- 高価な器具だが、使用回数が多いと根管内で折れることがあり消耗が確認される前に破棄するため消費が多い。
3、CT撮影して診断をいたします。
従来のレントゲン撮影では歯の構造を2次元でした診断することができませんでした。歯科用CBCT(コーンビームCT)を撮影することで歯を3次元的に立体的に診ることができます。3次元的に見えることによって、歯根が曲がっている方向や2つの根管が癒合している状態、一つの根管が2つに分岐いていることが処置前に確認することができます。
メリット
- 処置前に正確に診断することができるので、歯を余分に削らなくてもいい。
デメリット
- X線量がレントゲンより多い。(人体に影響を及ぼすほどではありません)
4、治療回数を少なくできます。
根管治療は非常に複雑な治療です。質の高い治療をしようとするとどうしても時間がかかります。一般的な歯科医院では時間を確保するために治療回数が多くなってしまいます。当院では回数ではなく、一回の治療にかかる時間を十分に確保いたしますので治療回数を少なくできます。
メリット
- 根管治療の回数を少なくすることによって、再び起こる感染を防ぐことができます。
デメリット
- 治療時間が長いのでお口を開いている時間も長い。
5、マイクロスコープ(歯科用顕微鏡)を使用します。
根管の入り口(根管口)は直径0.5mmも満たない場合があります。その小さな入り口の穴を口の中の歯の中で見つけることが困難な場合があります。入り口(根管口)から10mm以上先に0.3mmほどの根尖孔があります。
メリット
- マイクロ根管治療は肉眼では見えない歯の根の中を清掃、消毒できます。
- 狭窄した根管口を見つけることができる。
- 歯根内に残っているものが見えることで、肉眼で処置するより数倍キレイにできる。(例えるなら、部屋の掃除を電気をつけて見える環境で掃除するか、電気を消した状態の手探りで掃除をするのかぐらいの違いがあります。)
根管治療はマイクロスコープと歯科用CT(コーンビームCT)、超弾性ニッケルチタンの登場により飛躍的に成功率が上がりました。
実際の症例
症例①
50代女性 | 左下の歯に違和感がありレントゲン撮影すると病変があり。 1年後には完全に消失。 |
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マイクロ根管治療 | 5万円(消費税別) |
セラミッククラウン | 11万円(消費税別) |
症例②
20代女性 | 左下の歯を治療後に痛みがあると来院。 根管治療後8年経過。 |
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マイクロ根管治療 | 9万円(消費税別) |
セラミッククラウン | 11万円(消費税別) |
症例③
20代女性 | 左上前歯の内側が腫れていると来院。 歯に内部吸収、外部吸収が起きており、歯根に大きな穴が空いている。 マイクロ根管治療を行いMTAセメントで封鎖 治療後5年経過 |
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マイクロ根管治療 | 5万円(消費税別) |
症例④
50代女性 | インプラント治療希望で来院されましたが、隣の歯に根尖病変があり治療。 マイクロ根管治療とMTAセメントとガッタパーチャポイント(オピアンキャリアー法)にて根管充填。 処置後1年経過(真ん中のレントゲン)時には病変が小さくなっているのが確認できます。 11年経過、病変は完全に消失し良好な経過。 |
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マイクロ根管治療 | 10万円(消費税別) |
セラミッククラウン | 26万円(消費税別) |
根管治療後、長期に安定するためには補綴処置(被せ物)の精度も重要なポイントです。
補綴冠の適合性が悪いと口の中の細菌が根管の中に侵入してきます。それをコロナルリーケージ(歯冠側からの漏洩)と言います。根管治療は補綴処置まで精度よく治療することが大切です。
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