医療法人 西村歯科心斎橋診療所

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2025.05.07Newコラム

【衝撃】子どものお口ポカンは呼吸困難のサイン!?放置すると〇〇に影響も….

子どもの呼吸とお口の関係

西村歯科心斎橋診療所で勤務しております歯科衛生士の井上です。

今回は呼吸とお口の関係性についてお話しさせていただきます。

皆さん、呼吸とお口には深い関係があることをご存知でしょうか。

お子さんの検診で歯医者へ行き、お口の中を見て口呼吸だと指摘を受けたことがあるという方もいらっしゃるかもしれません。

人の呼吸は鼻から息を吸って、口から吐き出すのが本来の形ですが、鼻よりも口を中心とした「口呼吸」をする人が増えています。

口呼吸が原因で身体や口腔内にさまざまな悪影響をもたらす場合もあるため子供のうちに正しい呼吸に!

はじめに

口呼吸で起こりうる問題

口呼吸は外気が直接咽頭に入るため全身の健康に悪影響を及ぼすのはもちろん乾燥による口腔内環境の悪化、または口腔周囲筋群、顎顔面の骨格・歯列の成長・発育にも悪影響を及ぼすため、歯科医師、歯科衛生士にとっては高い関心事項の一つです。

口呼吸を改善するために指導を行ってみても、すぐに効果を実感できるケースもあれば一向に変化がないケースもあります。

それは口呼吸が歯科だけで担える問題ではないからです。

それを理解した上で、歯科でアプローチが可能な対処法を提示し改善できるように手助けをするのが私たち歯科衛生士の役割です。

口呼吸の原因

日本歯科医学会発行の「小児の口腔機能発達評価マニュアル」では正常でない呼吸様式として

①鼻性口呼吸
②歯性口呼吸
③習慣性口呼吸

の3つがあげられており、それぞれの種類、原因は下図のように考えられ、複数の因子が重なっていることもあります。

正常ではない呼吸方式

口呼吸の子供が増えている

口唇閉鎖不全のグラフ

口腔器官に異常や障害がないのに、食べる・話すなどの口腔機能の発達が不十分、もしくは正常な口腔機能が発達していない状態を「口腔機能発達不全症」と言います。

口腔機能発達不全症の原因として近年大きな関心が寄せられているのが、口呼吸と口唇閉鎖不全です。

これらは虫歯、歯周病、歯並びといった口腔内への悪影響だけではなく、アレルギー疾患や学力の低下など小児の身体的・精神的な成長・発達の妨げになることが指摘されてきました。

日本国内の子供の30.7%に口唇閉鎖不全が見れれることが研究結果でわかりました。

人口に換算すると日本国内の約400万人の小児が口唇閉鎖不全であるとうことになります。

また年齢とともに口唇閉鎖不全を有する小児の割合が増加するということは口唇閉鎖不全は自然治癒が期待しにくいと考えられます。

鼻呼吸の役割と口呼吸の違い

鼻呼吸と口呼吸の違い

注意すべき口呼吸というのは「安静時に口で呼吸している状態」です。

運動などで酸素を必要とする場合はもちろん口呼吸になってしまいますが、それ以外の安静時は口を閉じて鼻呼吸をするのが正しい呼吸の方法です。

鼻呼吸を行なっていると、鼻腔を通った空気が温かく湿った状態で肺に入ります。

その時に空気中の異物や病原菌などを吸い込んだとしても、鼻粘膜の表面や扁桃の組織がそれらを捉えてくれます。

ところが、口呼吸の場合は暖まっていない乾燥した空気をいきなり吸い込むことになり、

ウイルスなどの病原体が体内に侵入しやすく喉がダメージを受けやすくなります。

さらに口腔内が乾燥するというデメリットもあります。

このように鼻呼吸は口腔やその周辺の器官の快適な温度と湿度を保ち、空気を清浄するという大切な役割を果たしています。

鼻呼吸を行うためには、安静時に「上下の口唇が閉じている」「舌先が口蓋に触れている」の二つの条件が必要です。

安静時の口唇閉鎖不全が上下の口唇がうっすらと開いているだけのような軽めの状態であっても、

「普段から口呼吸をしている」「口呼吸予備軍」の可能性があると判断した方がいいでしょう。

口呼吸・口唇閉鎖不全があるとどんな問題が起きるのか?

口呼吸・口唇閉鎖不全で起こりうる問題

食べ方(捕食・咀嚼)への影響

口唇閉鎖をせずに食べると、噛み切ったり粉砕することはできますが、臼磨運動(モグモグと口を左右に動かして食べ物をすりつぶす)ができません。

口呼吸をしてると、呼吸と咀嚼嚥下(噛んで飲み込む)を同時にしないといけないため、息苦しくなり口位を開けたままクチャクチャと噛んですぐに飲み込むような食べ方になります。

また、口呼吸や口唇閉鎖不全があると上手く噛めず咀嚼の回数も減るので早食いになってしまったり、軟らかいものを好んだり偏食の原因にも繋がります。

(厚生労働省は国民の健康増進を図るため、一口あたり30回以上噛んで食べることを推奨しています)

よく噛んで飲み込むためには口唇閉鎖がきちんとできる必要があるのです。

<セルフチェック✅>

鼻をつまんだ状態でしっかりと噛めますか?

(洗濯バサミでも指でも可)

鼻・喉の問題

鼻閉(鼻詰まり)が原因となり口呼吸(耳鼻咽喉科では鼻呼吸障害と言います)が起こる場合があります。

また、反対に習慣的な口呼吸や口唇閉鎖不全により免疫システムが障害され、アレルギー性鼻炎や喘息など、鼻や喉に異常をきたす疾患を引き起こす場合もあります。

5−3 歯・歯肉の問題(不正咬合や齲蝕、歯周炎、着色)

口呼吸により口腔内が乾燥することで唾液の分泌量の減少と緩衝能(虫歯予防に必要な唾液の力)の低下が起こります。唾液には齲蝕予防の効果があるため分泌量や緩衝能が低下すると齲蝕のリスクも上がってしまいます。

口腔内が乾燥することによって磨き残しがなくても歯肉炎になってしまうこともあり、

特に前歯部の歯肉の炎症が他の部位に比べて顕著に見られます。

また口呼吸の人は鼻呼吸の人に比べて歯面が乾燥しやすいので歯面の着色(特に前歯)が起こりやすくなります。

歯並びへの影響

口呼吸が日常化すると、本来上顎の口蓋に接触しているはずの舌背の位置が下がり、低位舌となります。舌圧がかからないため、口蓋が狭く高くなり、歯列の狭窄(歯の並ぶスペースが狭くなる)や下顎の後退が

起こった結果、上顎前突の傾向が強くなると考えられています。

あるいは、口をポカンと開けていたため舌突出癖(舌を上の歯と下の歯の間から出す癖)がつき、開咬になる場合もあります。

全身的弊害

口呼吸や口唇閉鎖不全があるとほこりやウイルスを含む乾燥した空気が扁桃リンパ組織を直撃するため、外敵から身体を守る免疫系に異常を引き起こすと考えられています。

小児に関しては、口呼吸になると呼吸数、血中酸素、歩行距離が低下するという報告もあります。

口呼吸と姿勢

鼻呼吸障害のサインの一つとして「首が後方に屈曲した姿勢」というものがあります。

これは鼻呼吸障害のために狭くなった呼吸路を軌道確保の際と同じ頭位で代償しているためと考えられています。

「猫背や巻き型などの不良姿勢」も口呼吸と関係があると言われています。

口呼吸・口唇閉鎖不全の特徴

年齢別・原因別の口呼吸への対応ポイント

近年、小児のアレルギー性鼻炎の増加・花粉症発症の低年齢化が増加しています。

口呼吸になるいくつかの要因が影響しあい経過が長くなればなるほど伴う症状も増え、単一の指導・治療にみでは改善が難しくなります。

また、年齢によって指導の主体者が保護者なのか本人なのかも異なります。

< 0〜3歳頃>

①鼻性口呼吸への対応

この時期は小児期に多いアレルギー性鼻炎の有病率は低いと考えられます。

アデノイド(咽頭扁桃)は2歳ごろから6〜7歳をピークとする生理的肥大を認め、口蓋扁桃も2〜3歳ごろから7〜8歳ごろをピークとする生理的肥大を認めます。

②歯性呼吸、習慣性口呼吸への対応

(歯性口呼吸=歯並びや噛み合わせの異常によって口が閉じにくくなり口呼吸になってしまうこと)

顎顔面口腔咽頭領域の成長・発育が顕著なこの時期に行いたいのは一時予防として健全な成長・発育を支援し歯性呼吸・習慣性口呼吸に至らないような「口腔づくり」をすることです。

口がいつも開いててヨダレがダラダラと垂れているのも口呼吸のサインかもしれません。

口腔作りの例)

・歯の生え方、口の動きに合わせた離乳食を紹介するなど摂食・嚥下機能の正常な発達支援
・口を使った遊び、口への刺激を与えたりする筋刺激訓練

筋刺激訓練

<3〜6歳ごろ>

①鼻性呼吸への対応

この頃からアレルギー性鼻炎の有病率が高くなることアデノイド・口蓋扁桃の生理的な肥大がピーク

に近づくため鼻性口呼吸の増加が考えられます。

子供の鼻詰まりは仕方ない・治らないと諦めて治療をやめてしまう保護者の方も多いと思います。

幼児期は口唇閉鎖力発達が盛んな時期です。

鼻性呼吸障害があれば口唇閉鎖力の発達へも支障をきたし、顎顔面口腔領域の成長・発達全体に支障が生じます。鼻呼吸障害が歯並びを悪くする原因の一つであることを保護者に伝え、今のうちに治療をすることの必要性を理解してもらいます。

より良い治療効果が得られるように歯科と耳鼻科とで医療連携を図ることが重要です。

鼻呼吸障害の悪化

②歯性口呼吸、習慣性口呼吸への対応

耳鼻咽喉科疾患が増加するこの時期に気をつけたいのが治療により治った後の習慣性口呼吸や鼻呼吸障害です。これらが軽度でも楽な呼吸様式として口呼吸を選択しているうちに習慣性口呼吸として定着してしまうことがあります。

<学童期以降>

①鼻呼吸への対応

学童期はアレルギー疾患の特徴の一つでもあるアレルギーマーチに則って増齢に伴ってアレルギー性鼻炎が増加します。

※アレルギーマーチ:乳児期にアトピー性皮膚炎として発症したアレルギー疾患が小児に経時的に食物アレルギー・気管支喘息・アレルギー性鼻炎・結膜炎など別のアレルギー疾患に変わっていくこと

②歯性呼吸、習慣性口呼吸への対応

不正咬合や口腔周囲筋群の不調和が軽度で鼻閉も問題にならない程度であれば舌機能、口唇閉鎖と鼻呼吸を促す訓練を検討します。学童期前半までは顕著な効果が認められ、あ口唇閉鎖と鼻呼吸習慣の獲得につながることがあります。

しかし学童期以降は口唇閉鎖力の増減がなくなるため、学童期以降も残存する口腔筋機能障害は自然治癒が難しいことのからチェアーサイドで行える訓練だけでは改善は期待できない可能性があります。

<まとめ>

口腔機能発達不全症を早期発見するためには

口呼吸や口唇閉鎖不全は口腔機能の発達を早期から阻害する重大な要因です。これらを早期に発見し改善することは将来起こり得る歯科的・全進的弊害を未然に防ぎ、正常な口腔機能の発達を促す有効な手段となります。

小児期に見られる「口腔機能発達不全症」の症状は、改善されないまま育ってしまった成人でも見られます。

小児期に十分な口腔機能を獲得することが成人期における機能の安定・維持をもたらします。

このような観点から私たち歯科医療従事者はこれまで以上に歯科医療の重要性を国民啓発し、「鼻で呼吸し上手く噛める」ための臨床を提供しなければなりません。

鼻性口呼吸に対しては医療連携をしサポートすること、歯性・習慣的口呼吸に対しては発症予防・重症化予防が最善策です。

予防の効果を実感するには時間を要しますが予防的対応は無駄ではありません。

耳鼻咽頭科疾患の有病率が低い3歳時点での口唇閉鎖不全の割合が19%というのは歯科的要因が占める割合が大きいと推測され、歯科からの予防の必要性を感じます。

「もしかしてこの子も?」と思ったら口呼吸のサインを確認・問診し実際の呼吸を目で見て原因別の対応に当たることが大切です。


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