2024.04.03コラム
虫歯の削らない治療
虫歯は専門的な言葉で”う蝕”といいます。
そして”う蝕”が進行し、歯に穴があいた状態を”う窩”といいます。
では”う蝕”と”う窩”はどう違うのか、同じ言葉なのか?って思いますよね。
”う窩”は歯に実質欠損があり、穴があいている状態を一般的には「虫歯になっている状態」といいます。
”う蝕”はう窩ができるまでの「虫歯になる過程」のことをいいます。
”う窩”は歯ブラシが当たらないので削って治す。
”う蝕”は”う窩”ができないように、削らず治す。
このコラムでは削らない治療=予防についてお話させていただきます。
目次
虫歯はなぜできるのか?
飲食をすると口内の菌が糖を分解し酸を産出し、口腔内は酸性に傾き歯の表面が溶かされます(脱灰)。
その後、唾液の力により徐々に中和され、脱灰された歯面は溶け出したミネラルを再度補給することで、再石灰化が行われます。
脱灰の時間が長くなると、再石灰化が間に合わず虫歯(う窩=歯に穴が空いた状態)になります。
この”脱灰と再石灰化”が削らない治療において大切な知識となります。
虫歯菌ってあの2つですよね?
少し前までは、虫歯の主な原因はミュータンス菌とラクトバチラス菌の2種類の菌が多いと虫歯になりやすく、少ないと虫歯になりにくいと考えられており、そのため、虫歯は”感染症”と言われていた時期もありました。
もちろん、この2つの菌も糖を分解して酸を産出する虫歯の原因菌ではありますが、他にもたくさんお口の中には酸を産出する菌が存在します。
実際、虫歯が1本もない人の唾液検査をするとこの菌が検出されることもあれば、虫歯が大量に発生している人の唾液検査でこの菌が検出される量が少ないこともあります。
虫歯ができやすい人とできにくい人
身近な人に虫歯の治療で歯医者に行ったことがない人はいませんか?逆にいくら歯医者に通っていても延々と治療に通っている人はいませんか?その違いはなんでしょうか。
例えば、「元々歯が弱いから?」「虫歯菌が大量にいるから?」などが挙げられると思います。
虫歯になりにくい人は、なりやすい人と比べてお口の中が酸性になる時間が短いのです。
では、虫歯になりやすい人はずっと虫歯に悩まされないといけないのか?そうではありません。
虫歯になりやすい人は、なりにくい人になることができます。それが”削らない治療”です。
生態学的プラーク説
少し難しい話になりますが、できるだけ簡単に説明します。
お口の中には常在菌といって、約400から約700種類とも言われている菌が存在しています。
その全ての菌が酸を産出する訳ではありません。
中には酸性な環境を嫌う菌もいれば、好む菌も存在します。
糖を分解し酸を産出する菌は酸性な環境を好む菌です。
つまり頻繁に糖を摂取すると、酸が頻繁に産出されて”酸を産出する虫歯菌”が多く存在することになります。
虫歯菌が多く存在する環境で糖を摂るとどうなるでしょうか?そうですね。
多く酸を産出し歯が溶かされやすくなり、虫歯になりやすくなります!
削らない治療=予防の4つのポイント
1.歯磨き!
なんだ当たり前じゃないかって思いましたか?虫歯になりやすいところ=磨き残しが多い場所です。
磨き残し(プラーク)には細菌が多く生息しています。
細菌がたくさん生息しているところに糖が入るとそれを代謝して酸を産生し虫歯になるということですね。
自分がどれだけ磨き残しがあるかご存じですか?何を隠そう歯医者でもある私ですが、以前にチェックしてもらうと40%近く磨き残しがありました!そのほとんどが歯と歯の間(歯間部)にありました。
歯ブラシ1本では歯間部を綺麗にすることは難しく、デンタルフロス(糸ようじ)や歯間ブラシは必須ですね。
2.フッ素(本来はフッ化物ですが分かりやすくここではフッ素と表現いたします)
フッ素は再石灰化を促進してくれる作用があります。
少しお話を戻しますが、脱灰に対して再石灰化が間に合わなければ虫歯になってしまいます。
そこにフッ素が存在すると脱灰によって溶け出したミネラルを戻りやすくしてくれて、再石灰化を促進してくれます。
歯ブラシをするときはフッ素入り(フッ化物入り)の歯磨き粉を選びましょう。
推奨されるフッ化物濃度は1500ppmF以上と言われていますが、年齢によって違います。
3.糖の摂取をコントロールする
甘いものが好きな方はここが最大の難関ではないでしょうか?しかし、虫歯になりやすい人から虫歯になりにくい人になるためには、ここは避けることはできません。
なぜなら菌が糖を代謝して酸を産生し、歯を溶かすからです。
そして酸性度が高い環境で生き残ることができるのは、酸を産生する菌が多いからです。
4.定期的なメンテナンス
定期的なメンテナンスを受けている人と痛い時にしか歯医者に来ない人では健康な歯を残せる可能性が全く変わってきます。
当院で行う”削らない治療”
当院で行う”削らない治療”には、以下のステップが含まれます:
- 1.お口の中の写真撮影、レントゲン撮影
- 2.問診
- 3.食生活アンケートを書いていただきます。
- 4.歯磨き指導: 効率的な歯磨きの方法やお一人お一人に合った歯ブラシ、歯間ブラシ、必要に応じてセルフケア用品などもご紹介させていただきます。
- 5.食生活指導: 食事の回数や避けた方が良い食べ物をお伝えさせていただきます。
まとめ
現代の虫歯治療はまず”削らない治療”が中心となっています。
小さな虫歯を早期に発見し治療する時代は終了し、できるだけ早い時期に”削らない治療”に参加することが大切です。
しかし、う窩ができた虫歯の部分には歯ブラシが届かないため必ず虫歯は進行してしまいます。
う窩ができてしまった場合は”歯ブラシがしっかり当たるように”、削って修復するしかありません。
自分が削る治療になるのか、削らない治療のままで大丈夫なのか?それにはICDASの分類と言われる国際的なう蝕研究者グループが推奨する基準があります。
私たちはそれを基準に歯科医師、歯科衛生士と治療計画を考えています。
江戸時代では虫歯の発生はまれであったと言われます。
我々人類が砂糖を簡単に摂取できるようになってから、虫歯はよくある疾患になりました。
ご自身や家族の虫歯が気になる場合は、甘い食べ物、甘い飲み物を買うことを減らしてみませんか?手に取ったものから”削らない治療=予防歯科”は始まっています。
予防メンテナンスは西村歯科 心斎橋診療所にお任せください。
お一人お一人に合った予防プログラムを提供させていただきます。
虫歯ができてしまった方も、治療が終了した方も、まだ虫歯ができていない方も、全ての人に当院が提供する予防プログラムをご利用していただければと思います。
全ての方が健康な歯で過ごせますように。